第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

3 振り込め詐欺

(1)振り込め詐欺の現状

振り込め詐欺とは、オレオレ詐欺(注1)、架空請求詐欺(注2)、融資保証金詐欺(注3)及び還付金等詐欺(注4)の総称であり、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等を利用し、不特定多数の者から現金をだまし取る犯罪(現金を脅し取る恐喝も含む。)である。

平成22年中の振り込め詐欺の認知件数は6,637件、被害総額は約82億円と、いずれも前年より減少した。しかしながら、類型別にみると、22年中のオレオレ詐欺の認知件数は4,418件と、前年より1,361件(44.5%)増加した。また、警察官等を装ってキャッシュカードを直接受け取る手口のオレオレ詐欺に係るATM からの引出(窃取)額は約19億円であり、これを加えた振り込め詐欺の実質的な被害総額は100億円を超えている。

また、22年中の検挙件数は5,189件、検挙人員は686人と、いずれも前年より減少した。

図1―19 振り込め詐欺の認知件数・被害総額の推移(平成16~22年)

図1―20 振り込め詐欺の検挙状況の推移(平成16~22年)

注1:親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補塡金等の様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注2:架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注3:融資を受けるための保証金の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注4:市区町村の職員等を装い、医療費の還付等に必要な手続を装って現金自動預払機(ATM)を操作させて口座間送金により振り込ませる手口による電子計算機使用詐欺(平成18年6月に初めて認知された。)

(2)振り込め詐欺を撲滅するための取組

振り込め詐欺の被害は、平成21年に大幅に減少し、22年も全体的には減少しているが、オレオレ詐欺の認知件数が増加に転じるなど、依然として厳しい状況にあることから、振り込め詐欺を撲滅するため、引き続き諸対策を推進している。

<1> 警察の総力を挙げた取締活動の推進

都道府県警察では、現に犯行を繰り返すオレオレ詐欺グループに重点を指向し、部門横断的な集中取締体制の構築等により、検挙の徹底を図っている。また、警察庁では、集約した情報を都道府県警察に還元し、戦略的な取締活動を推進するとともに、都道府県警察間の合同・共同捜査を積極的に推進している。

また、架空・他人名義の携帯電話や預貯金口座等が振り込め詐欺に利用されていることから、これらの流通を遮断し、犯行グループの手に渡らないようにするため、預貯金口座を売買するなどの振り込め詐欺を助長する行為についても、関係法令を駆使して取締りに当たっている。

<2> 外国治安機関との連携の強化

オレオレ詐欺については、外国に渡航した日本人が同国内の犯行拠点から日本国内の被害者に電話をかけているケースがあることから、外国治安機関と緊密な連携を図っている。

<3> 国民から寄せられた情報による先制的抑止措置の推進

警察では、110番通報のほか、警察相談専用電話(全国統一電話番号「♯(シャープ)9110」)及び専用メールアドレス等様々な窓口を通じて、振り込め詐欺に関する相談や情報を幅広く受け付けている。また、国民から寄せられた情報を活用し、警察官による警告電話の実施、事業者に対する犯行に利用された携帯電話の契約者確認の求め、金融機関に対する振込先指定口座の凍結依頼等による犯行ツールの無力化等を実施するほか、「だまされた振り作戦(注1)」による犯人の検挙を推進している。

注1:振り込め詐欺の電話等を受け、振り込め詐欺であると見破った場合に、だまされた振りをしつつ、犯人が利用する携帯電話や預貯金口座等に関する情報を聞き出すことにより、契約者確認の求めや口座凍結依頼を活用して犯行ツールの無力化を図るほか、犯人に現金等を手渡しする約束をした上で警察へ通報してもらい、被害者宅等の約束した場所に現れた犯人を検挙するものであり、国民の積極的かつ自発的な協力に基づく取組である。

<4> 官民一体となった予防活動の推進

ア 広報啓発活動の推進

振り込め詐欺の被害を防止するためには、国民の犯罪に対する「抵抗力(注2)」を高めていくことが重要である。このため、警察では、防犯教室や巡回連絡等の機会や、テレビ等マスコミを通じて、その手口や被害に遭わないための注意点等の情報を積極的に国民に対して提供しているほか、緊急雇用創出事業の活用や防犯ボランティア団体の協力により、高齢者宅へ電話をかけたり、戸別訪問をしたりして注意喚起するなど、高齢者等に対する直接的・個別的な働き掛けを推進している。

広報啓発ポスター

広報啓発ポスター

注2:国民の犯罪に対する認識度や被害に遭わないための注意力にとどまらず、国民自らが、被害防止に向けた取組に積極的に参画するなどにより、犯罪を社会から排除していく力のこと

イ 関係機関・団体等との連携

振り込め詐欺の被害金の多くがATM や金融機関窓口を利用して送金されていることから、金融機関の職員等による利用者への声掛けは、被害防止のために極めて重要である。このため、警察は、金融機関、コンビニエンスストア等に対し、振り込め詐欺が疑われる場合の利用者への声掛けや警察への通報を積極的に行うよう求めている。このように、振り込め詐欺の被害を抑止するためには、関係機関・団体等との連携が必要不可欠であることから、「振り込め詐欺の撲滅に向けた全国官民連絡会議」を開催するなどして、官民一体となった予防活動を推進している。

コラム〔1〕 コールセンターを利用した振り込め詐欺被害防止対策

警察では、振り込め詐欺の主な被害者層である高齢者に対する被害防止対策の一環として、コールセンターを設置し、高齢者宅に電話をかけるなどして注意喚起を図っている。

神奈川県警察においては、電話を数回かけても通話中であった高齢者宅に急行したところ、キャッシュカードをだまし取るため訪問していた被疑者を発見し、検挙した。

高齢者宅に電話をかけている状況

高齢者宅に電話をかけている状況


第1節 犯罪情勢とその対策

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