特集II:安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指して

4 官民の連携によるサイバー空間の秩序維持

(1)サイバー防犯ボランティア活動の促進

「自分たちの町は自分たちで守る」という理念の下、安全で安心して暮らせる地域社会の実現を目指して結成された、現実空間における自主防犯ボランティアの青色パトロールを始めとするパトロール活動等は、街頭犯罪等の抑止や規範意識の向上に一定の成果を上げてきた。第1節でみたサイバー空間における現状に鑑みると、サイバー空間においても、一般のインターネット利用者の規範意識を向上させ、サイバー空間の安全・安心を確保するため、犯罪被害防止についての国民に対する広報啓発、悪質な利用者への指導・注意といった活動を行う、インターネット利用者によるサイバー防犯ボランティア活動を促進する必要がある。

現在、このような活動に取り組んでいる団体として、公益社団法人全国少年警察ボランティア協会、日本ガーディアン・エンジェルス等がある。このような団体の先進的取組を参考にしながら、警察では、今後、サイバー防犯ボランティア活動ガイドラインの作成等によりサイバー防犯ボランティア活動を行いやすい基盤を整備するとともに、サイバー防犯ボランティアの活動の重要性を国民に訴え、その結成を促進し、官民連携によりサイバー防犯ボランティアを育成していくこととしている。

(2)児童ポルノのブロッキングに係る支援

児童ポルノ流通防止協議会(特集II 2節5項参照)における、ブロッキングの実施に向けた法的・技術的課題の整理、アドレスリスト利用事業者に対してアドレスリストを提供する、児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体(以下「作成管理団体」という。)の設置に向けた検討や、平成22年7月に政府の犯罪対策閣僚会議において決定された、22年度中を目途に関係事業者がブロッキングを自主的に実施できるよう環境整備の推進を内容とする「児童ポルノ排除総合対策」を受け、同年12月、作成管理団体を選定・監督する児童ポルノ流通防止対策専門委員会が発足した。

警察庁では、作成管理団体について試験的運用を実施し、ブロッキングの円滑な実施に向けた検証を行い、作成管理団体の基本的な業務に係る運用の流れや技術を構築した。これを受けて、23年3月に、プロバイダ等が中心となって発足した一般社団法人インターネットコンテンツセーフティ協会が作成管理団体として選定され、同年4月から運用を開始しているところである。今後は、情報提供元となる警察庁等を含め作成管理団体とプロバイダ等のアドレスリスト利用事業者が一体となって児童ポルノ排除に向けた取組を一層推進していく必要がある。

図―47 「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体」の運用イメージ

(3)コミュニティサイトにおける児童の犯罪被害防止対策

平成23年2月、「コミュニティサイトの利用に起因する犯罪から子どもを守るための緊急対策」が取りまとめられ、コミュニティサイトの利用に起因する児童被害の更なる増加を防ぐ取組がなされているところである(特集II 2節5項(2)参照)。今後とも、コミュニティサイトの利用に起因する犯罪の取締りの徹底を基本としつつ、関係省庁と連携して、携帯電話事業者の保有する利用者年齢情報を活用した実効性のあるゾーニングの自主的導入の支援等、同対策に基づく取組を緊急に推進していく。

また、警察庁では、23年2月、サイトの審査監視機関(一般社団法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)(注))に対しての情報提供を合意締結するなど、児童の犯罪被害の抑止に向けた官民連携した取組を推進している。

注:平成20年4月に設立された携帯等のフィルタリングで一律にアクセスが制限されてしまうコミュニティサイトなどについて、青少年を違法情報・有害情報から保護する観点から、青少年にとって有害でないサイトを認定・監視するための有識者からなる第三者機関。


第3節 サイバー犯罪対策の抜本的強化に向けて

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