特集I:東日本大震災と警察活動

5 警察の情報通信の役割

東日本大震災では、電気通信事業者の回線が不通になったり、携帯電話が通話困難になったりする中、警察が独自に整備・維持管理している無線多重回線、車載通信系を始めとした各種の警察無線等が、被災状況の把握、被災者の救出救助や避難誘導、行方不明者の捜索等を行う上で重要かつ不可欠な情報の収集・伝達手段となった。警察では、地震発生当初から、通信対策を行い、警察活動に必要な情報通信を維持・確保した。

(1)警察の情報通信の維持

<1> 警察通信施設の機能の維持

地震により東北地方を中心に多くの警察通信施設が被災したが、警察では、無線中継所に代替用のアンテナを臨時に設置するとともに、データ通信の輻輳(そう)に対応するため、通信回線のデータ通信容量を増加させる応急処置を講じるなどして、警察活動に必要な情報通信を維持した。

捜索活動における警察無線機の利用

捜索活動における警察無線機の利用

<2> 警察通信施設への給電対策

地震発生当初、東北地方では、多くの警察通信施設が停電となった。その後も被災地を中心に電力の供給が不安定な中、警察では、非常用発電機により無線中継所の電源を確保するとともに、山頂付近の無線中継所まで、徒歩で非常用発電機の燃料を搬送し補給することなどにより、警察通信施設の機能を維持した。

無線中継所への燃料の搬送

無線中継所への燃料の搬送

(2)機動警察通信隊の活動

警察では、被災地において、迅速かつ的確な救出救助活動を行うため、ヘリコプターテレビシステムや衛星通信システム等を運用し、被災状況の把握、住民の避難誘導活動等に必要な映像を、警察庁、首相官邸、現地警備本部等にリアルタイムで伝送した。

また、各所に設置した現地警備本部、被災した警察署の代替施設等における通信手段を確保するため、臨時の無線中継所の構築、各種通信機器の設置・設定等を行った。さらに、各都道府県に設置されている情報通信部から通信資機材、非常用発電機を被災地に集めるとともに、応援派遣された機動警察通信隊がそれら資機材を運用するなどして、広域緊急援助隊等の活動を行う上で必要な通信を確保した。

被災現場の映像を伝送する機動警察通信隊員

被災現場の映像を伝送する機動警察通信隊員

事例

平成23年3月11日、福島第一原子力発電所で発生した事故に関し、周辺住民に対して避難指示等が発令された。防災行政無線による自治体への避難指示等の到達が未確認であったことから、確実を期すために、警察無線を活用して警察官が自治体に避難指示等の伝達を行った(福島)。


第2節 主な警察の活動

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