平成23年警察白書概要

平成23年警察白書概要

特集I:東日本大震災と警察活動

第1節 被害状況及び警察の体制

平成23年3月11日、三陸沖を震源とする国内観測史上最大規模の地震が発生し、この地震に伴って生じた高い津波は、東北地方の太平洋沿岸部を始めとする各地を襲うとともに、原子力発電所における事故等を引き起こした。

警察では、岩手県警察、宮城県警察及び福島県警察に対して、全国から広域緊急援助隊員等を派遣し、自衛隊、地方自治体、消防等と連携を図りながら、災害警備活動に従事した。

第2節 主な警察の活動

被災地の各県警察では、地震発生直後から、津波による被害が発生する危険性の高い地域の住民等を高台へ避難させるなど、迅速な避難誘導を実施した。また、全国から派遣された広域緊急援助隊等が、被災地の県警察と一体となって被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、遺体の検視及び身元確認、緊急交通路の確保、被災地における安全・安心を確保するための諸活動等に当たった。

さらに、警察では、原子力発電所の事故に伴い、高圧放水車による使用済み核燃料貯蔵プールに向けた放水を実施したほか、避難等の指示や警戒区域等の設定が発令されたことを受け、放射線測定の専門部隊と連携し、自力避難が困難な入院患者等の搬送を行うとともに、主要道路上における検問や各区域内における警戒・警ら活動、捜索活動等に当たった。

特集II:安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指して

第1節 サイバー犯罪の現状

サイバー犯罪は増加の一途をたどり、サイバー空間における違法情報・有害情報の氾濫も深刻さを増しているが、サイバー空間の匿名性等により捜査環境は厳しい状況にある。また、意識調査の結果、国民も、サイバー空間におけるインターネット利用者のモラルやマナーの悪さを実感するとともに、サイバー犯罪の被害に遭う危機感を募らせていることが明らかとなった。

第2節 サイバー犯罪に対する取組

警察では深刻化するサイバー犯罪に対応するため、インターネット・ホットラインセンターの効果的な運用に加え、全国協働捜査方式の本格実施により取締体制を強化するとともに、サイバー犯罪捜査における技術的指導や支援を行う体制を整備している。また、不正アクセス禁止法違反の早期把握や事業者による防御措置の強化に向けた働き掛け、インターネットを利用した各種事犯に対する取締りの徹底により、被害の拡大防止等に努めている。さらに、外国捜査機関との捜査協力や技術協力体制の構築により、国境を越えて行われるサイバー犯罪に対処しているほか、事業者等による自主的かつ主体的な取組を促進し、社会一体となった総合的な対策を推進している。

第3節 サイバー犯罪対策の抜本的強化に向けて

サイバー空間における安全・安心の確保を強力に推進するためには、これまでの取組の実施に加えて、サイバー犯罪を取り巻く環境の変化に伴う新たな課題に対して早急に対処策を講じなければならない。すなわち、不正アクセス行為の取締り強化に向けた検討やアクセス管理者による防御措置の向上方策といった不正アクセス対策の強化、インターネットカフェ利用者の匿名性排除や無線LAN、データ通信カードの悪用防止といったサイバー犯罪捜査の環境整備、サイバー防犯ボランティア活動の促進といった官民連携によるサイバー空間の安全・安心を確保するための施策をそれぞれ強力に推進していく必要がある。

そして、警察におけるサイバー犯罪対策を抜本的に強化するとともに、インターネットを利用する組織や個人と警察とが連携を強化し、社会を挙げて対策を推進することにより、安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指していく必要がある。

第1章:生活安全の確保と犯罪捜査活動

平成22年中の刑法犯認知件数は前年より減少したが、依然高い水準にあり、治安情勢は依然として厳しい。

警察では、街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策の推進、振り込め詐欺、悪質商法等の取締りの強化、被害防止に向けた広報啓発活動等の取組を推進している。

また、犯罪の検挙と抑止のための基盤整備として、捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会や死因究明制度の在り方に関する研究会での調査・研究、緻密かつ適正な捜査の徹底と司法制度改革への対応、捜査における科学技術の活用、事件・事故への即応等の取組を推進している。

さらに、安全で安心な暮らしを守る施策として、児童ポルノ対策等子どもの安全対策、配偶者からの暴力事案への対応等女性を守る施策、犯罪の起きにくい社会づくり等官民一体となった犯罪抑止対策、風俗関係事犯の取締りや銃砲刀剣類の適正管理等良好な生活環境を保持するための取組を推進しているほか、少年の非行防止と健全育成にも取り組んでいる。

第2章:組織犯罪対策の推進

暴力団による犯罪、犯罪組織の関与がうかがわれる薬物・銃器に関する犯罪、来日外国人犯罪組織による犯罪等の情勢は依然として厳しい。

警察では、資金獲得犯罪を始めとする暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用、暴力団排除活動の推進等により暴力団の壊滅を目指すとともに、薬物の供給の遮断及び需要の根絶に向けた対策、犯罪組織の武器庫や密輸・密売事件の摘発に重点を置いた銃器の取締りを推進しているほか、「犯罪のグローバル化」に対処するため、警察組織の総合力を発揮した効率的な国際組織犯罪対策やあらゆる犯罪の分野で構築され治安の脅威となっている「犯罪インフラ」への取組等を推進している。

また、犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止し、これを確実に剝奪することが重要であることから、犯罪収益移転防止法に基づく関係機関等と連携した取組、組織的犯罪処罰法の積極的な活用等により、犯罪収益対策を推進している。

第3章:安全かつ快適な交通の確保

平成22年中の交通事故による死者数は4,863人と、昭和27年以来57年ぶりに4千人台となった前年を更に下回った。また、発生件数及び負傷者数も6年連続で減少し、負傷者数は16年ぶりに90万人以下となった。しかしながら、いまだ70万件以上の交通事故が発生するなど、依然として憂慮すべき情勢にある。

警察では、交通安全教育や運転者教育、悪質性・危険性・迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りや緻密な交通事故事件捜査等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に推進している。

また、交通安全施設等整備事業、道路交通のIT 化、総合的な駐車対策等、安全かつ快適な交通の確保のための諸対策を推進している。

第4章:公安の維持と災害対策

我が国に対するテロの脅威が依然として高い状況にある中、警察では、情報収集・分析、重要施設の警戒警備等テロの未然防止に向けた諸対策を推進するとともに、テロが万一発生した場合に備え、特殊部隊(SAT)等が実戦的訓練を実施して、対処能力の向上を図っている。このほか、北朝鮮による拉致容疑事案等に対する徹底した捜査、調査を進めるとともに、対日有害活動やオウム真理教、極左暴力集団、右翼等に関する情報収集、取締り等を推進し、国民の安全・安心と要人の身辺の安全を確保している。

APEC 警備では、全国警察の総力を挙げた取組を実施するとともに、官民一体の「日本型テロ対策」を推進した結果、テロや暴動等の発生を未然に防止し、開催国としての治安責任を果たした。また、災害が発生した際には、広域緊急援助隊等を出動させるなどして、被災者の救出救助等の活動に従事している。

第5章:公安委員会制度と警察活動の支え

警察では、公安委員会による管理の下、適正な警察活動を確保するための取組を推進するとともに、組織及び人員の効率的運用、教育訓練の充実強化、装備品・情報通信システムの開発改善、情報管理の徹底等、警察活動の基盤を整備している。

このほか、犯罪被害者等に対する支援の充実、適正な留置業務の運営の徹底、警察署協議会の活用、警察政策研究センターや科学警察研究所における調査研究等にも取り組んでいる。


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