トピックスIV 高齢者の交通安全に向けた警察の取組み
警察では、関係機関・団体等と連携し、高齢者の特性を踏まえたきめ細かな交通安全対策を推進しています。
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平成21年中の交通事故死者数の約半数を65歳以上の高齢者が占めており、高齢者の事故防止は重要な課題となっています。 歩行中・自転車乗用中に死亡した高齢者のうち、8割以上が運転免許を受けていない者であることを踏まえ、警察では、高齢者に対する交通安全教育等においてきめ細かな対策を実施しています。また、自動車乗車中の死者のうち、高齢者が4割近くを占めている一方、自動車が日常生活に欠かせない移動手段となっている高齢者も少なくないことから、高齢運転者が安全な運転を継続できるための支援策の充実を図っています。
(1)高齢歩行者・自転車乗用者の事故防止対策
警察では、高齢者に身体機能の変化が交通行動に及ぼす影響を理解してもらうとともに、安全な道路の通行方法を習得してもらうことを目的として、各種教育用機材を活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を実施しています。特に、運転免許を保有していないなどの理由から、交通安全教育を受ける機会のなかった高齢者に対しては、関係機関・団体と連携し、家庭訪問による個別指導、高齢者と日常的に接する機会を利用した助言等が地域を挙げて行われるよう努めています。
また、夜間の交通事故防止に効果が高い反射材の活用について、関係機関・団体と連携し、反射材の視認効果の実験等による交通安全教育を実施するなど、その活用促進に取り組んでいます。
教育用機材を活用した交通安全教室
(2)高齢者講習と講習予備検査(認知機能検査)
〔1〕 高齢者講習の実施
高齢者講習は、更新期間が満了する日における年齢が70歳以上の高齢者の運転免許証の更新時に義務付けられており、安全運転に必要な知識等に関する講義のほか、自動車等の運転、動体視力等の検査を通じ、受講者に自らの身体機能の変化を自覚してもらった上で、その結果に基づく助言・指導を行うことを内容としています。平成21年中は183万3,885人が受講しました。
高齢者講習
〔2〕 講習予備検査(認知機能検査)の導入
21年6月から、更新期間が満了する日における年齢が75歳以上の高齢者は、運転免許証の更新期間が満了する日前6月以内に、講習予備検査(認知機能検査)を受けることとされました。この検査の導入の目的は、高齢運転者に対して、自己の記憶力・判断力の状況を自覚してもらい、引き続き安全運転を継続することができるように支援することです。
この検査は、時間の見当識(注1)、手がかり再生(注2)及び時計描画(注3)という3つの検査項目について、30分程度で実施され、記憶力・判断力の状況等の結果が検査を受けた高齢運転者に通知されます。検査の結果は、第1分類(記憶力・判断力が低くなっている)、第2分類(記憶力・判断力が少し低くなっている)及び第3分類(記憶力・判断力に心配ない)の3つに分類され、各分類に応じた高齢者講習が実施されます。
図IV-1 高齢運転者の運転免許証更新等の流れ
なお、検査の結果、記憶力・判断力が低くなっていると認められ、かつ、運転免許証の更新期間満了日の1年前の日以後に信号無視等の特定の違反行為がある場合には、臨時適性検査として認知症の専門医の診断を受けなければならず、認知症と診断されると、運転免許の取消し又は停止処分がなされます。
(3) 高齢運転者等専用駐車区間制度
身体機能の変化が運転に影響を与えるおそれのある高齢運転者等による駐車を支援するため、道路交通法が改正され、平成22年4月に高齢運転者等専用駐車区間制度が新設されました。
この制度は、道路標識により指定されている場所では、高齢者等が運転し、都道府県公安委員会が交付した専用場所駐車標章を掲示した普通自動車(注4)に限り、駐車又は停車をすることができることとし、高齢者等が安全かつ快適に運転することができる道路交通環境を作ろうとするものです。
図IV-2 高齢運転者等専用駐車区間を表示する道路標識