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トピックスI 警察による国際緊急援助活動

 警察では、外国で大規模な災害が発生した際に、被災地に国際警察緊急援助隊を派遣して国際緊急援助活動を行っています。

 警察における国際協力の一つに、国際緊急援助活動があります。海外における大規模な災害発生の際に行う国際緊急援助活動は、国際社会への貢献となるだけでなく、様々な状況下での活動の経験を通じて、我が国の警察の災害対処能力の向上にも資するものです。

(1)国際緊急援助隊の編成
 我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、国際緊急援助隊の派遣に関する法律に基づき、国際緊急援助隊を派遣しています。
 国際緊急援助隊には救助チーム、医療チーム、専門家チーム等がありますが、このうち救助チームは、通常、外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁、独立行政法人国際協力機構(JICA)等の職員によって編成され、捜索・救助活動等を行っています。
 警察庁からは、警察官を派遣して救助チームの副団長としての任に当たらせるとともに、我が国の警察が外国で活動する場合に必要となる通信を確保するため、警察通信職員の中から国際機動警察通信要員を派遣し、現地と日本の間及び現地部隊間の通信回線を設定するなどの通信対策を行わせています。警察では、これらの職員に、あらかじめ指名されていた都道府県警察からの警察官を加えて国際警察緊急援助隊を編成し、国際緊急援助隊救助チームの一部として派遣しています。
 
インドネシアに派遣された国際緊急援助隊
インドネシアに派遣された国際緊急援助隊

(2)国際緊急援助隊救助チームに対するIEC検定での「重」評価
 平成22年3月、我が国の国際緊急援助隊救助チームは、各国の救助チームの能力を評価するIEC(INSARAG(注)External Classification)検定を受検し、三段階の評価のうち最高分類である「重」の評価を受けました。この評価は、建造物倒壊現場における高い救助能力、2つの異なる現場において24時間の救助活動を10日間継続する能力・体制等が認められるチームに対して与えられるものです。IEC検定が2005年(17年)に導入されて以降、我が国は、12か国(13チーム)目に「重」の評価を受けました。我が国の救助チームが「重」の評価を受けたことにより、同チームの一層の活躍が期待されます。

注:International Search And Rescue Advisory Group(国際捜索・救助諮問グループ)の略称。国連人道問題調整事務所に事務局を置く国際機関。


(3)これまでの活動実績
 警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年9月から平成22年1月までの間に、合計12回にわたり、194人の隊員を地震、ビル倒壊又は津波が発生した12の国・地域に派遣し、国際緊急援助活動として被災者の捜索・救助等を行ってきました。このうち、15年のアルジェリアにおける地震に際して救助チームを派遣した際には、生存者1人を救助しています。
 このほか、17年には、DNA型鑑定等の専門家チーム5人をタイの津波被災地に派遣し、被災者の身元確認作業に当たらせました。

(4)近年の活動状況

〔1〕 中国四川省における地震被災地への派遣
 平成20年5月12日午後3時28分(現地時間同日午後2時28分)、中国四川省においてマグニチュード7.9の地震が発生し、同月15日、中国政府から支援の要請がなされたことから、我が国政府は、同日から同月21日にかけての7日間、警察職員20人及び警備犬3頭を含む国際緊急援助隊救助チーム(合計61人)を現地に派遣しました。
 同チームは、崩壊した中学校や病院等での捜索を行い、生存者の発見には至らなかったものの、16人の遺体を発見、収容しました。
 この活動については、同年7月に中国の胡錦濤(コキントウ)国家主席から国際緊急援助隊員に対し、直接感謝の意が示されました。
 
中国において救助用画像探索機を準備する国際緊急援助隊
中国において救助用画像探索機を準備する国際緊急援助隊

〔2〕 インドネシア西スマトラ州パダン沖地震被災地への派遣
 21年9月30日午後7時16分(現地時間同日午後5時16分)、インドネシア西スマトラ州パダン沖においてマグニチュード7.5の地震が発生し、同年10月1日、インドネシア政府から支援の要請がなされたことから、我が国政府は、同日から同月8日までの8日間、警察職員21人及び警備犬3頭を含む国際緊急援助隊救助チーム(合計65人)を現地に派遣しました。現地では、建物が倒壊して死傷者が多数出たほか、瓦礫(がれき)の下敷きになった住民も相当数いることが見込まれました。
 同チームは、他国に先駆けて被災地入りし、マーケットやホテル等の建物が崩壊している中、捜索活動を実施しました。生存者の発見には至らなかったものの、西スマトラ州知事から「日夜真剣に救助に当たる姿に心打たれた」との謝意表明がなされるなど、地元住民や現地政府から高い評価を得ました。
 
インドネシアにおいて捜索活動を実施する国際緊急援助隊
インドネシアにおいて捜索活動を実施する国際緊急援助隊

コラム1 中国及びインドネシアにおける救助活動
(前 警察庁長官官房国際課(現 警視庁地域部地域指導課) 高瀬初雄(たかせはつお)警視)

 平成20年の中国四川省における地震、21年のインドネシア西スマトラ州パダン沖地震の際、私は、国際緊急援助隊救助チームの副団長として、捜索・救助活動に従事しました。大きな余震の続発により隊員自らが被災するおそれがある中、中国では遺体を隣にし、インドネシアでは熱中症になりそうになりながらも、各隊員はその能力を最大限に発揮してくれました
 特に、中国では、山岳地帯の落石が散乱した道や崩落しつつある崖(がけ)沿いの道を進んだ際に、生きて帰ることができるのかと思いつつ、覚悟を決めて前へ進んだことが思い出されます。
 双方の被災地で成果を収め、隊員一同、我が国が実施した国際協力の一翼を担ったという充実感を覚えるとともに、責任の重さを再認識し、更なる自己研鑽(さん)に努めていく決意を新たにしました。
 
中国で隊員に指示をする筆者
中国で隊員に指示をする筆者

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