平成22年警察白書概要 

平成22年警察白書概要

特集:犯罪のグローバル化と警察の取組み

第1節 犯罪のグローバル化の脅威
 今日の我が国における来日外国人犯罪を取り巻く状況は、世界的規模で活動する犯罪組織の我が国への浸透、構成員の多国籍化、犯罪行為の世界的展開といった、「犯罪のグローバル化」というべき状況がみられ、治安に対する重大な脅威となっている。
 この背景には、外国人犯罪を助長する犯罪インフラが構築されるなどといった実態があり、特定の犯罪に限らず、各種犯罪がグローバル化している。

第2節 犯罪のグローバル化に対応するための戦略
 警察では、犯罪のグローバル化に対応するため、「犯罪のグローバル化に対応するための戦略プラン」を策定し、体制の構築、情報の収集・共有・分析能力の強化、捜査連携の強化、国内関係機関との連携の強化、グローバルな国際協力体制の構築といった警察組織の総合力を発揮した効率的な対策を推進している。

第3節 今後の展望
 警察では、今後、犯罪のグローバル化に対抗するための手段の構築といった取組みに加えて、関係機関・団体等との緊密な連携、グローバルな国際協力体制の構築等を一層推進するなど、総力を挙げて諸対策を推進していく。

トピックスI: 警察による国際緊急援助活動
 外国で大規模な災害が発生し、被災国政府の要請等があった場合、我が国は国際緊急援助隊を派遣している。警察では、同隊救助チームの一部となる部隊を編成し、これまで合計12回にわたり、194人の隊員を地震等が発生した国・地域に派遣してきた。最近では、中国、インドネシア等の被災地に派遣し、その活動に対して、地元住民や現地政府から謝意表明をされるなど、高い評価を得ている。

トピックスII: 事件・事故に対応する初動警察活動
 警察では、事件・事故による被害拡大の防止や犯人の逮捕等のため、その発生直後における迅速・的確な初動警察活動の強化に取り組んでいる。その基本方針として、平成20年12月に「初動警察刷新強化のための指針」を策定し、これに沿って通信指令の機能強化、通信指令システムの整備・強化、通信指令を担う人材の育成強化、事案対応能力の強化等の施策を推進している。

トピックスIII: 児童ポルノの根絶に向けて
 児童ポルノ等の児童の性的搾取は、児童の人権を著しく踏みにじる行為であり、自分の力で自分の権利を守れない弱い立場にある児童に対する人権侵害である。警察では、インターネット上に氾濫する児童ポルノを根絶し、深刻な人権侵害を受け、将来にわたり苦しむ被害児童を無くすため、平成21年6月に「児童ポルノの根絶に向けた重点プログラム」を策定し、総合的な対策を推進している。

トピックスIV: 高齢者の交通安全に向けた警察の取組み
 平成21年中の交通事故死者数の約半数を65歳以上の高齢者が占めており、高齢者の事故防止は重要な課題となっている。警察では、高齢の歩行者・自転車乗用者の事故防止対策を推進しているほか、講習予備検査(認知機能検査)、高齢運転者等専用駐車区間制度等を導入するなど、高齢運転者が安全な運転を継続できるようにするための支援策の充実を図っている。

トピックスV: 2010年APECの成功に向けて
 APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議及び閣僚会議が、平成22年11月に神奈川県横浜市において開催され、関連閣僚会合が同年6月から11月にかけて順次、全国7か所で開催される。警察では、テロ等違法行為の未然防止に万全を期し、要人の身辺の安全と行事の円滑な遂行を確保するため、検問、交通規制等を行うこととしており、これらに向け、国民の理解と協力を呼び掛けている。

第1章:生活安全の確保と犯罪捜査活動
 平成21年中の刑法犯認知件数は減少したが、治安情勢は依然として厳しい。
 警察では、街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策の推進、振り込め詐欺、ヤミ金融事犯、悪質商法、サイバー犯罪等の取締りの強化、被害防止に向けた広報啓発活動の推進等に努めている。
 また、犯罪の検挙と抑止のための基盤整備として、捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会や死因究明制度の在り方に関する研究会での調査・研究、ち密かつ適正な捜査の徹底と司法制度改革への対応、捜査における科学技術の活用等の取組みを推進している。
 さらに、安全で安心な暮らしを守る施策として、配偶者からの暴力事案への対応等女性を守る施策、通学路の安全対策等子どもを守る施策、「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」に基づく施策、風俗関係事犯の取締りや銃砲刀剣類の適正管理等良好な生活環境を保持するための施策を行っているほか、少年の非行防止と健全育成にも取り組んでいる。 

第2章:組織犯罪対策の推進
 暴力団による犯罪、犯罪組織の関与がうかがわれる薬物・銃器に関する犯罪等の情勢は、依然として厳しい。
 警察では、資金獲得犯罪を始めとする暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用、暴力排除活動の推進により暴力団の壊滅を目指すとともに、薬物の供給の遮断及び需要の根絶に向けた対策、犯罪組織の武器庫や密輸・密売事件の摘発に重点を置いた銃器の取締り等を推進している。
 また、犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止し、これを確実にはく奪することが重要であることから、犯罪収益移転防止法に基づく関係機関等と連携した取組み、組織的犯罪処罰法の積極的な活用等により、犯罪収益対策を推進している。

第3章:安全かつ快適な交通の確保
 平成21年中の交通事故による死者数は4,914人と、昭和27年以来57年ぶりに4千人台となった。また、発生件数及び負傷者数も5年連続で減少し、負傷者数は10年ぶりに100万人を下回った前年を更に下回った。しかしながら、いまだ70万件以上の交通事故が発生するなど、依然として憂慮すべき情勢にある。
 警察では、交通安全教育や運転者教育、悪質性・危険性・迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りやち密な交通事故事件捜査等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に推進している。
 また、交通安全施設等整備事業、道路交通のIT化、総合的な駐車対策等、安全かつ快適な交通の確保のための諸対策を推進している。

第4章:公安の維持と災害対策
 我が国に対するテロの脅威が依然として高い状況にある中、警察では、爆発物の原料となり得る化学物質の管理強化、重要施設の警戒警備、的確な警衛・警護警備等テロの未然防止に向けた諸対策を推進するとともに、テロが万一発生した場合に備え、特殊部隊(SAT)等が実戦的訓練を実施して、対処能力の向上を図っている。このほか、北朝鮮による拉致容疑事案等に対する徹底した捜査、調査を進めるとともに、対日有害活動やオウム真理教、極左暴力集団、右翼等に関する情報収集、取締り等を推進し、国民の安全・安心と要人の身辺の安全を確保している。
 また、大雨、台風、地震等の災害が発生した際、広域緊急援助隊等が出動するなどして、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の活動に従事している。

第5章:公安委員会制度と警察活動の支え
 警察では、公安委員会による管理の下、適正な警察活動を確保するための取組みを推進するとともに、組織及び人員の効率的運用、教育訓練の充実強化、装備品・情報通信システムの開発改善等、警察活動の基盤を整備している。
 このほか、犯罪被害者等に対する支援の充実、適正な留置業務の運営の徹底、警察署協議会の活用、警察政策研究センターや科学警察研究所における調査研究等にも取り組んでいる。

 平成22年警察白書概要

前の項目に戻る     次の項目に進む