第3節 国民の信頼にこたえる警察
1 適正な警察活動
(1)警察改革の推進
国家公安委員会・警察庁は、平成12年に策定した「警察改革要綱」及び17年に取りまとめた「警察改革の持続的断行について」と題する指針に基づき、警察改革の精神の下、治安再生に取り組んできた。
図5-17 警察改革要綱、指針「警察改革の持続的断行について」
コラム2 警察に関する意識調査
警察庁では、これまでの警察改革の取組みの結果が、国民にどのようにとらえられているかを確認するため、22年2月から同年3月にかけて、一般国民2,291人を対象に、警察に関する意識調査(注)を実施した。その結果、警察を信頼しているかとの質問については、「信頼している」又は「どちらかといえば信頼している」と回答した者が、「どちらかといえば信頼していない」又は「信頼していない」と回答した者の4.1倍に上った。また、10年前と現在を比較し、警察がどのように変わったかとの質問については、「良くなった」又は「どちらかといえば良くなった」と回答した者が、「どちらかといえば悪くなった」又は「悪くなった」と回答した者の4.6倍に上った。
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(2)適正な予算執行の確保
警察では、適正な予算執行を確保するため、次のような取組みを行っている。
〔1〕 警察が行う会計監査等
国家公安委員会が定める会計の監査に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長及び方面本部長は、監査手法に改善・工夫を加えながら、より適正な会計経理を推進するため、会計監査を実施している。
図5-18 会計の監査に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第9号)
平成21年度に警察庁が実施した監査では、捜査費、旅費及び契約に係る予算の執行状況を重点的に監査することとした。特に、契約については、岩手県警察等において物品の購入等の契約について不適正な経理処理が判明したことを踏まえ、物品の購入等の契約について、さらに重点的に監査することとした。その結果、物品購入等の契約について不適正な経理処理が認められたことから、国庫補助金に係る所要額を返還するとともに改善策を講じること(27部署)(注1)、旅費の支給漏れが認められたことから、本来支給すべき額を追加支給すること(8部署)(注2)、旅費の過払いが認められたことから、払いすぎた額を返還すること(7部署)(注3)などについて、改善を指示した。また、捜査費関係文書の不備、契約に関する適切さを欠く取扱い等について、必要な改善措置を講ずるよう、関係部署を指導した。
22年度については、21年度の会計監査実施結果を踏まえつつ、引き続き厳正な監査を行うこととしている。
事例
岩手県警察では、21年10月までに、15年度から20年度にかけての物品の購入等の契約に係る予算の執行状況を調査した。その結果、契約した物品が納入されていないのに、納入されたとする内容の関係書類を作成するなどして代金を支払い、その支払金を業者に預け金として保有させて、後日、これを利用して契約した物品とは異なる物品を納入させていたことなどが判明し、総額2億1,491万257円(国費868万3,477円、県費2億622万6,780円)の不適正な経理処理について公表した。
岩手県警察では、これらの不適正な経理処理事案を踏まえて、職員教育の実施、物品調達システムの見直し等により、再発防止を徹底することとした。
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〔2〕 会計に関する職員教育
職員に予算執行の手続に関する正確な知識を修得させるとともに、適正経理の重要性を再認識させるため、会計に関する職員教育を徹底している。また、それに必要な捜査費等の経理に関する各種の解説資料を作成し、配布している。
(3)監察
警察では、警察内部の自浄能力を高めるため、都道府県警察で監察を掌理する首席監察官をすべて国家公安委員会の任命に係る地方警務官とするほか、警察庁、管区警察局及び都道府県警察において監察担当官を増員するなど監察体制を強化するとともに、国家公安委員会が定める監察に関する規則に基づき、能率的な運営及び規律の保持のため、厳正な監察を実施している。これにより、警察改革要綱が策定された平成12年度と比べ、警察庁、管区警察局等による監察実施回数が大幅に増加した。
図5-19 監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)
21年度は、図5-20のとおり監察実施項目を定め、業務及び服務の両面において監察を行った。同年度の警察庁及び管区警察局による都道府県警察等に対する監察の実施回数は2,041回と、警察改革要綱が策定された12年度の3.4倍に増加している。また、都道府県警察においては、年1回以上ほぼすべての警察署に対し監察が実施されている。
なお、警察法の規定により、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な監察の指示をすることができ、これまで、神奈川県公安委員会(13年4月)及び奈良県公安委員会(同年7月)が、警察職員による不祥事案の発生に際して各県警察に対し監察を指示したほか、予算執行に関する不適正事案の発生に際して、北海道公安委員会(16年3月)及び福岡県公安委員会(同年4月)が、各道県警察に対し監察を指示した。
図5-20 平成21年度の監察実施計画
(4)苦情の適正な処理
警察法には苦情申出制度が設けられており、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し文書により苦情の申出をすることができる。
なお、警察本部長や警察署長あてに申出があったものなど、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情でこの制度によらない申出についても、これに準じた取扱いがなされている。
図5-21 苦情申出制度の概要
(5)情報管理の徹底
警察では、犯罪捜査、運転免許等に関する大量の個人情報のほか、多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(警察情報セキュリティに関する規範の体系)を策定するなどして、情報の流出等への対策を進めている。具体的には、警察庁職員及び都道府県警察に対し、捜査資料等の不必要な複写及び持ち出しの禁止や不必要な情報の廃棄・消去等、情報の組織的管理の徹底について指示するとともに、情報管理に係る職員の責務等について浸透を図っている。また、これらの取組みの実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした監査を継続的に実施しているほか、私有コンピュータ等の公務使用を禁止するなど、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を推進している。
特に、外部記録媒体からの情報流出を防止するため、外部記録媒体の利用を制限するとともに、外部記録媒体を用いずに情報を共有することが可能となるファイルサーバ(注)の整備・拡充や外部記録媒体に書き込む情報を自動的に暗号化する機能の導入等を引き続き推進することとしている。
図5-22 情報管理の徹底に向けた各種対策