第4章 公安の維持と災害対策 

2 大量破壊兵器関連物資等の不正輸出

(1)大量破壊兵器関連物資等の不拡散についての国際的な取組み
 2009年(平成21年)7月、イタリアで開催されたG8ラクイラ・サミットにおいて、核兵器等の不拡散に関する首脳声明が採択された。同声明では、「核兵器のない世界に向けた状況を作ることを約束する」として、すべての国に更なる軍縮や核兵器等の不拡散を求めることが確認された。
 警察では、大量破壊兵器関連物資等の拡散が国際安全保障上の重大な関心事項となっていることを踏まえ、国際的な取組みにも積極的に参加しており、21年10月に実施されたシンガポール主催のPSI(注)海上阻止訓練には、警視庁及び愛知県警察のNBCテロ対応専門部隊が参加し、税関職員と共同で、コンテナ内で発見された大量破壊兵器関連物資に対する検査等の訓練を行った。

注:Proliferation Security Initiativeの略。国際社会の平和と安定に対する脅威である大量破壊兵器、ミサイル及びそれらの関連物資の拡散を阻止するために、国際法及び各国国内法の範囲内で、参加国が共同してとり得る移転(transfer)及び輸送(transport)の阻止のための措置を検討・実践する取組み

 
PSI海上阻止訓
PSI海上阻止訓練

(2)不正輸出の取締り
 警察では、我が国からの大量破壊兵器関連物資等の不正輸出に対する取締りを積極的に推進しており、平成21年中には、3件の不正輸出事件を検挙した。
 また、これまで検挙した事件において、第三国を経由した迂回輸出の実態が確認されるなど、不正輸出の手口が更に悪質・巧妙化していくことが懸念されるところ、警察では、国内外の諸情勢を的確に把握・分析し、関係機関との活発な情報交換を通じた連携強化を図ることにより、大量破壊兵器関連物資等の不正輸出の取締りを強化していくこととしている。

事例
 貿易会社代表取締役(50)は、20年1月、大量破壊兵器等の開発等に使用されるおそれがあるものとして輸出が規制されている中古タンクローリー2台を、経済産業大臣の許可を受けることなく、北朝鮮に輸出するための経由地として、韓国に不正に輸出した。21年5月、外為法違反(無許可輸出)で逮捕した(兵庫)。
 
事例

 第2節 外事情勢と諸対策

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