第3章 安全かつ快適な交通の確保 

第4節 交通環境の整備

1 安全・安心な交通環境の整備

(1)交通安全施設等整備事業の推進
 警察では、交通の安全と円滑を確保するため、信号機、道路標識等の交通安全施設等の整備を進めている。
 交通安全施設等整備事業については、昭和41年以降、多発する交通事故を緊急かつ効果的に防止するため、交通安全施設等整備事業長期計画に即して推進してきたが、各種の社会資本整備事業を一層重点的、効果的かつ効率的に推進するため、平成15年3月に社会資本整備重点計画法が制定された。同法においては、交通安全施設等、道路、港湾等の社会資本の整備について、従来の事業分野別の長期計画を統合した「社会資本整備重点計画」を策定することとされ、横断的な取組みや事業間連携の更なる強化が図られた。
 現在は、20年度から24年度までの間を計画期間とする第2次社会資本整備重点計画に即して、同計画に掲げられた成果目標の達成に向け、交通安全施設等の整備を推進している。
 
図3-13 主な交通安全施設等整備状況
図3-13 主な交通安全施設等整備状況
 
図3-14 第2次社会資本整備重点計画(計画期間:平成20~24年度)
図3-14 第2次社会資本整備重点計画(計画期間:平成20~24年度)
 
図3-15 警察の整備する交通安全施設等
図3-15 警察の整備する交通安全施設等

(2)交通管制システムの整備
 都市部では、道路交通が複雑・過密化し、交通渋滞、交通公害及び交通事故の一因となっている。
 警察では、交通管制システムにより、車両感知器等で収集した交通量や走行速度等のデータを分析し、その分析結果に基づき信号機の制御や交通情報の提供を行うことにより、交通の流れの整序化に努めている。
 具体的には、
 ・ 交通状況に即応した信号機の制御により交通の円滑化を図る
 ・ きめ細かな交通情報の提供により交通流・交通量の誘導及び分散を図る
 ・ バス優先の信号制御により公共交通機関の利便性を向上させ、マイカーの需要の低減と交通総量の抑制を図る
などの対策を講じ、複雑・過密化した交通を効率的かつ安全に管理して交通の安全と円滑の確保に努めている。
 
図3-16 交通管制システム
図3-16 交通管制システム

(3)警察による交通情報提供
 警察では、交通管制システムにより収集・分析したデータを交通情報として広く提供し、運転者が混雑の状況や所要時間を的確に把握して安全かつ快適に運転できるようにすることにより、交通の流れを分散させ、交通渋滞や交通公害の緩和を促進している。
 情報提供の手段として、交通情報板等のほか、VICS(注1)(道路交通情報通信システム)を活用している。VICSは、光ビーコン(注2)等を通じてカーナビゲーション装置に対して交通情報を提供するシステムで、時々刻々変動する道路交通の状況を地図画面上にリアルタイムで表示することができる。
 また、関係団体の協力の下、警察の保有するリアルタイムの交通情報をオンラインで提供するシステムを構築するなどして、カーナビゲーション装置のほか、携帯電話やインターネットを活用して交通情報を提供する民間事業の高度化を支援するとともに、交通情報の提供に関する指針を定め、こうした事業が交通の安全と円滑に資するものとなるよう働き掛けをしている。

注1:Vehicle Information and Communication System
 2:通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、車載装置と交通管制センターの間の情報のやり取りを媒介する路上設置型の赤外線通信装置

 
図3-17 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例
図3-17 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例

(4)交通管理等による環境対策

〔1〕 環境対策のための交通規制
 警察では、道路交通騒音対策及び振動対策の観点から、通過車両の走行速度を低下させてエンジン音や振動を低く抑えるための最高速度規制、エンジン音や振動の大きい大型車を沿道から遠ざけるための中央寄り車線規制等の対策を、沿道地域の交通公害の状況や道路交通の実態に応じて実施している。
 
大型貨物車等の中央寄り車線規制
大型貨物車等の中央寄り車線規制

〔2〕 エコドライブの推進
 「環境負荷の軽減に配慮した自動車の使用(エコドライブ)」は、環境保全効果があるとともに、交通事故防止にも一定の効果が期待されることから、警察では、平成18年10月にエコドライブ普及連絡会(注3)において策定した「エコドライブ10のすすめ」を用いて、エコドライブの普及促進に努めている。

注3:警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省で構成

 
図3-18 エコドライブ10のすすめ
図3-18 エコドライブ10のすすめ

(5)効果的な交通規制等の推進
 警察では、地域の交通実態を踏まえ、速度、駐車等に関する交通規制や交通管制の内容について常に点検・見直しを図るとともに、道路整備、地域開発、商業施設の新設等による交通事情の変化に対しても、これを的確に把握してソフト・ハード両面での総合的な対策を実施することにより、安全で円滑な交通流の維持を図っている。

コラム3 新たな基準による規制速度の決定方法

(1)一般的な道路
 一般的な道路では、「基準速度一覧表」に従って設定した基準速度を最大限に尊重しつつ、各道路における交通事故発生状況、歩道の有無等の道路構造、沿道状況等に応じた補正を行い、原則として基準速度の上下10キロメートル毎時の範囲で実際の規制速度を決定する。
 
基準速度一覧表
基準速度一覧表

(2)生活道路
 生活道路は、歩行者の安全確保や地域住民の安全と安心が優先される道路であることから、急な飛び出し等に対応し、重大事故の発生を回避できる速度という観点から、速度規制を実施する場合は、最高速度を原則として30キロメートル毎時とする。また、区域規制の実施や、関係機関と連携したハンプやクランク等車両速度を抑制する物理的デバイスの設置についても併せて検討する。
 
生活道路における区域規制
生活道路における区域規制

(3)自動車の通行機能を重視した構造の道路
 一般道路であっても、道路構造の水準が高く、危険因子が少ない自動車の走行性を重視した道路では、安全が確保されていれば、最高速度を原則として70キロメートル毎時又は80キロメートル毎時とする。
このうち速度規制に関しては、従来の規制基準が平成4年に策定されたものであり、その後、道路整備の進展や自動車性能の向上等により道路交通を取り巻く環境が変化してきたことを踏まえ、18年度から「規制速度決定の在り方に関する調査研究検討委員会」(委員長:太田勝敏東洋大学教授)において、より合理的な規制速度の決定の在り方について検討を進めてきた。21年3月に、同委員会から「規制速度決定の在り方に関する調査研究報告書」が提出されたことを受け、21年10月、一般道路における最高速度規制に関する基準を改正した。今後は、新たな基準に基づき、既存の速度規制の点検を積極的に実施することとしている。
 
自動車の通行機能を重視した構造の道路(栃木県宇都宮市 宇都宮北道路)
自動車の通行機能を重視した構造の道路(栃木県宇都宮市 宇都宮北道路)

 第4節 交通環境の整備

前の項目に戻る     次の項目に進む