第3章 安全かつ快適な交通の確保 

3 交通安全教育と交通安全活動

(1)交通安全教育

〔1〕 交通安全教育指針
 国家公安委員会は、地方公共団体、民間団体等が効果的かつ適切に交通安全教育を行うことができるようにするとともに、都道府県公安委員会が行う交通安全教育の基準とするため、交通安全教育指針を作成し、公表している。この指針には、交通安全教育を行う者の基本的な心構えのほか、教育を受ける者の年齢、心身の発達段階や通行の態様に応じた体系的な交通安全教育の内容及び方法が示されている。
 警察では、関係機関・団体と協力しつつ、この指針を基準として、幼児から高齢者に至るまでの各年齢層を対象に、交通社会の一員としての責任を自覚させるような交通安全教育を実施している。
 
図3-10 年齢層に応じた交通安全教育
図3-10 年齢層に応じた交通安全教育

〔2〕 事業所等における交通安全教育
 一定台数以上の自動車を使用する事業所等では、道路交通法の規定に基づき選任された安全運転管理者により、指針に従って適切に交通安全教育を実施することが義務付けられている。警察では、交通安全教育が適切に実施されるよう、安全運転管理者等を対象とした講習を行うなど必要な指導を行っている。

(2)交通安全活動
 警察では、様々な形で関係機関・団体や交通ボランティア(地域交通安全活動推進委員、交通指導員等)等と連携し、国民的な交通安全意識の高揚に努めている。

〔1〕 全国交通安全運動
 広く国民に交通安全思想の普及と浸透を図るとともに、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けることにより、交通事故防止の徹底を図るため、毎年春と秋の2回実施している。期間中、国、地方公共団体や民間団体が相互に協力して幅広い国民運動を展開している。
 
交通安全パレード
交通安全パレード

〔2〕 シートベルト・チャイルドシートの着用・使用の徹底
 平成20年6月から自動車の後部座席同乗者のシートベルト着用が義務付けられ、高速道路における違反に対しては、運転者に行政処分点数が付されることとなった。21年10月に実施された全国調査(警察庁と(社)日本自動車連盟(JAF)の合同調査)において、後部座席同乗者のシートベルト着用率は、一般道で33.5%、高速道路で63.4%にとどまっており、警察では、関係機関・団体と連携し、衝突実験映像や「シートベルトコンビンサー」を用いて着用効果を実感できる参加・体験・実践型の交通安全教育等を推進し、後部座席を含めたすべての座席でのシートベルト着用の徹底を図っている。
 また、22年4月の調査で使用率が56.8%にとどまっているチャイルドシートについても、幼稚園や保育所における保護者等への広報、正しい取付方法の指導等により、その適正な使用の徹底を図っている。
 
シートベルトコンビンサー体験
シートベルトコンビンサー体験

〔3〕 その他の交通安全活動
 国民的な交通安全意識の高揚のため、警察では、地方公共団体等が行う交通安全キャンペーン等の広報啓発活動に協力するほか、地域ボランティア等による自主的な交通安全活動が効果的に行われるよう、その指導者を対象とする研修会の開催、交通事故実態に関する情報の提供等、各種の支援を行っている。
 このほか、図3-11の諸団体が交通安全を目的とした活動を展開している。
 
図3-11 諸団体の活動
図3-11 諸団体の活動

コラム1  幼児二人同乗用自転車の安全利用と普及促進

 自転車の幼児二人同乗については、安全上問題があるにもかかわらず、これまで広く行われていた。このような状態を解消し、自転車の利用者や周囲の歩行者等の安全確保を図るとともに、複数の幼児を持つ保護者のニーズに応えるため、20年4月から21年3月にかけて、警察庁に設置した検討委員会において検討を重ねた。その結果、安全性等の要件を満たす「幼児二人同乗用自転車」に限って幼児二人同乗を認めるべきとの結論が得られ、都道府県公安委員会規則の改正を経て、21年7月、幼児二人同乗が認められることとなった。
 警察では、関係機関・団体と連携し、「幼児二人同乗用自転車」の安全な利用のための正しい乗り方の実践、交通ルールの遵守、同乗幼児のヘルメット着用等を促進するための交通安全教育や広報啓発活動を推進しているほか、地方公共団体等に対して、貸出制度や助成制度の導入を積極的に働き掛けている。
 
保護者を対象とした幼児二人同乗用自転車の交通安全教室
保護者を対象とした幼児二人同乗用自転車の交通安全教室

 第2節 交通安全意識の醸成

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