第2章 組織犯罪対策の推進 

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

 平成21年中の薬物事犯の検挙人員は1万4,947人と、前年より659人(4.6%)増加し、覚せい剤の密輸入事件の検挙件数が大幅に増加しているほか、大麻事犯の検挙人員は過去最多を記録するなど、我が国の薬物情勢は、依然として厳しい状況にある。
 
図2-6 薬物事犯の検挙人員(平成21年)
図2-6 薬物事犯の検挙人員(平成21年)
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(1)覚せい剤情勢
 平成21年中の覚せい剤事犯の検挙人員(注)は、前年より増加し、全薬物事犯の検挙人員の大半を占めている。また、粉末押収量及び錠剤押収量は、前年より減少した。
<21年中の覚せい剤事犯の特徴>
 ・ 検挙人員の58.0%が再犯者
 ・ 検挙人員の53.2%が暴力団構成員等
 ・ 営利犯の検挙人員が大幅に増加

注:国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)違反の検挙人員のうち、覚せい剤事犯に係るものを含む。

 
図2-7 覚せい剤事犯の検挙状況の推移(平成12~21年)
図2-7 覚せい剤事犯の検挙状況の推移(平成12~21年)
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事例
 会津小鉄会傘下組織組長(62)は、18年9月ころから20年11月にかけて、覚せい剤を密売し、不正に収益を得ていた。同月、同組長ら12人を覚せい剤取締法違反(営利目的共同所持等)等で逮捕(同組長ら4人については、21年4月、より罰則の重い麻薬特例法違反(業として行う譲渡)に訴因変更)した。
 同組長は、逮捕後、組織の解散届を提出し、覚せい剤を組織的に密売していた暴力団組織は壊滅した(京都、愛知、滋賀)。
 
事例

(2)各種薬物事犯情勢

〔1〕 各種薬物事犯
 最近5年間の大麻事犯、MDMA(注1)等合成麻薬事犯等の各種薬物事犯(シンナー等の有機溶剤事犯を除く。)の検挙人員及び押収量は、表2-5のとおりである。
<平成21年中の大麻事犯の特徴>
 ・ 栽培事犯の検挙人員が増加
 ・ 検挙人員の61.3%が少年及び20歳代の若年層
 ・ 検挙人員の84.8%が初犯者
<21年中のMDMA等合成麻薬事犯の特徴>
 ・ 押収量が減少
 ・ 検挙人員の53.3%が少年及び20歳代の若年層
 ・ 検挙人員の86.0%が初犯者

注1:化学名「3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(3,4-Methylenedioxymethamphetamine)」の略名。本来は白色粉末であるが、様々な着色がなされ、文字や絵柄の刻印が入った錠剤の形で密売されることが多い。

 
ビニールハウスで栽培されていた大麻
ビニールハウスで栽培されていた大麻
 
表2-5 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
表2-5 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成17~21年)
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〔2〕 シンナー等の有機溶剤事犯
 最近5年間のシンナー等有機溶剤事犯の検挙(補導を含む。)人員は減少傾向にあり、その推移は、表2-6のとおりである。
<21年中の特徴>
 ・ 検挙人員(摂取、吸入及び摂取・吸入目的所持)の31.8%が少年
 ・ 検挙人員(知情販売(注2))の67.9%が少年

注2:乱用する目的で購入すると知った上での販売

 
表2-6 有機溶剤事犯の検挙人員の推移(平成17~21年)
表2-6 有機溶剤事犯の検挙人員の推移(平成17~21年)
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(3)薬物事犯への暴力団の関与
 平成21年中の暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員は6,201人と、前年より400人(6.9%)増加し、覚せい剤事犯の全検挙人員の53.2%を占めていることから、覚せい剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。
 また、大麻事犯については、暴力団構成員等の検挙人員は870人と、前年より14人(1.6%)増加し、全検挙人員の29.8%を占め、MDMA等合成麻薬事犯については、暴力団構成員等の検挙人員は28人と、前年より56人(66.7%)減少しているものの、全検挙人員の26.2%を占めており、暴力団構成員等が薬物事犯に幅広く関与していることがうかがわれる。
 
図2-8 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成12~21年)
図2-8 暴力団構成員等による覚せい剤事犯の検挙人員の推移(平成12~21年)
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事例
 山口組傘下組織幹部(51)ら4人は、21年4月ころから同年7月にかけて、山中の大型ビニールハウス3棟において、資金獲得のために組織的に大麻草を大量に栽培した。同幹部ら4人を大麻取締法違反(栽培)で逮捕(同年10月、麻薬特例法違反(業として行う栽培等)に訴因変更)するとともに、大麻草約430本、乾燥大麻約2.8キログラムを押収した(鹿児島)。
 
事例

(4)インターネット利用による薬物密売事犯
 平成21年中にインターネットを利用した薬物密売事犯で密売人を検挙した事件は13件と、前年より2件(18.2%)増加した。このうち、1事件については、覚せい剤取締法における広告の制限に係る規定を適用した。

事例
 無職の男(32)らは、大麻種子を販売する目的で「SEEDS BANK」と称するウェブサイトを運営し、大麻の種子を掲示して販売していた。21年4月、サイト利用者が大麻の栽培をする目的で種子を購入していることを知りながら大麻種子を販売したとして、同人ら2人を大麻取締法(栽培ほう助等)で逮捕した(警視庁、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川)。

 第2節 薬物銃器対策

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