第2章 組織犯罪対策の推進 

4 暴力排除活動

 暴力団対策は、社会全体で実施していくことが必要であることから、警察では、「警察対暴力団」という構図から、「社会対暴力団」という構図へ転換を進め、関係機関・団体等との連携を一層強化し、社会全体で暴力団を孤立させるための取組みを推進している。

(1)国及び地方公共団体における暴力排除活動

〔1〕 公共事業等や民間工事等からの暴力団排除
 国及び地方公共団体は、警察と連携して、公共工事等の請負業者から暴力団関係企業を排除するための、いわゆる暴力団等排除要綱等の整備を推進している。
 また、平成21年12月、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団取締り等総合対策ワーキングチームにおける申合せに基づき、政府が発注する公共工事以外の公共事業等について、契約書に暴力団排除条項(注)(下請契約、再委託契約等に係るものを含む。)を盛り込むなど、あらゆる公共事業等からの暴力団排除を推進している。また、民間工事等においても同様の対策が推進されるよう、民間工事等に関係する業界に対し、所要の指導・要請を行っている。さらに、独立行政法人や地方公共団体についても同様の取組みが推進されるよう指導等を行っている。

注:法令、規約及び契約書等に設けられている条項であって、許可等を取得する者、事務の委託の相手方、契約等の取引の相手方等から暴力団員等の暴力団関係者又は暴力団関係企業を排除する旨を規定する条項をいう。

 
図2-4 暴力団取締り等総合対策ワーキングチームにおける申合せの概要
図2-4 暴力団取締り等総合対策ワーキングチームにおける申合せの概要

〔2〕 暴力団排除のための条例
 近年の対立抗争事件の発生や暴力団事務所の進出等の情勢を踏まえ、地方公共団体において、暴力団排除のために条例を制定・改正する動きがみられる。

事例
 福岡県では、21年10月、暴力団の排除に関する基本理念を定め、暴力団の排除に関する基本的施策、青少年の健全な育成を図るための措置、事業者による暴力団員等に対する利益供与の禁止等暴力団排除のための総合的な施策を盛り込んだ福岡県暴力団排除条例が公布され、22年4月に施行された。

(2)各種業・取引等における暴力団排除

〔1〕 各種業における暴力団排除
 警察では、暴力団の資金源を遮断するため、関係機関と連携して、産業廃棄物処理業、貸金業、建設業等の各種業からの暴力排除活動を推進している。また、近年、各種業法等において、各種業等から暴力団や暴力団関係企業等を排除するため、暴力団排除条項が整備されており、平成21年には、関税法及び割賦販売法に同条項が盛り込まれた。

〔2〕 各種取引における暴力団排除
 近年、暴力団の資金獲得活動が巧妙化・不透明化していることから、取引先が暴力団関係企業等であることに気付かずに、企業が結果的に経済取引を行ってしまうおそれがある。こうした実態を踏まえ、19年6月に犯罪対策閣僚会議幹事会において申し合わせた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(注1)に基づき、関係機関が連携を強化し、各種取引における暴力団排除を推進している。
 証券業界においては、21年3月、日本証券業協会が不当要求情報管理機関(注2)として国家公安委員会からの登録を受けるなど、証券取引からの暴力団等反社会的勢力の排除を推進している。
 また、銀行業界においては、21年9月、全国銀行協会が、会員銀行等に対し、暴力団排除条項及び反社会的勢力に該当しないことを表明・確約させる口座開設申込書等の参考例を示し、銀行取引からの暴力団等反社会的勢力の排除を推進している。

注1:企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応についてとりまとめたもの
 2:不当要求に関する情報の収集及び事業者に対する当該情報の提供を業とする者

 
図2-5 銀行取引からの暴力団排除
図2-5 銀行取引からの暴力団排除

(3)地域住民等による暴力排除活動
 警察では、地域住民等による指定暴力団の本部事務所等に対する進出阻止運動を支援し、その進出を断念させるなど、地域住民等に対する的確な支援を推進している。また、都道府県暴力追放運動推進センター(以下「暴追センター」という。)及び弁護士会と緊密に連携し、民事介入暴力対策に関する研究会を組織して、暴力団犯罪の被害者が加害者に対して提起した損害賠償請求訴訟や事務所撤去訴訟等の民事訴訟に対する支援を実施するなどして、暴力団の不当要求による被害の防止、暴力団からの被害の救済等に努めている。
 また、暴力団の安定的な資金源となっている飲食店等からの、いわゆるみかじめ料収入を封圧するため、支払拒否業者が警察、暴追センター及び弁護士会と連携の上、暴力団に対するみかじめ料支払拒否運動を行っている。警察では、これらの暴力排除活動に対する支援を推進している。

事例
 警察では、稲川会の総本部事務所移転問題に関連して、移転予定地の地域住民による暴力団追放運動及び地域住民を原告とした暴力団事務所使用禁止仮処分申請に係る民事訴訟に対する支援を実施した。平成21年4月、「総本部事務所等暴力団事務所として使用しない」旨の和解に持ち込み、総本部事務所開設を断念させた(警視庁)。

 第1節 暴力団対策

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