第2章 組織犯罪対策の推進 

2 暴力団犯罪の取締り

(1)検挙状況
 暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移は、図2-2のとおりである。
 平成12年以降、検挙人員の多い罪種は、覚せい剤取締法違反、窃盗、傷害、詐欺及び恐喝の5つの罪種であり、これに変化はないが、恐喝、賭博及び公営競技関係4法(注)違反(ノミ行為等)の検挙人員が大きく減少している一方、詐欺及び窃盗の検挙人員が増加していることから、暴力団が資金獲得の手段を変化させている状況がうかがわれる。

注:競馬法、自転車競技法、小型自動車競走法及びモーターボート競走法

 
図2-2 暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移(平成12~21年)
図2-2 暴力団構成員等の主要罪種別検挙人員の推移(平成12~21年)
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(2)対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件
 対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生事件数等の推移は、表2-2のとおりである。平成21年中、対立抗争事件は1事件発生し、これにより2人が死傷した。また、暴力団員等によるけん銃使用事件は22回発生し、これにより14人が死傷した。
 
表2-2 対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生事件数等の推移(平成12~21年)
表2-2 対立抗争事件及び暴力団等によるとみられる銃器発砲事件の発生事件数等の推移(平成12~21年)
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(3)資金獲得犯罪
 警察では、多様化・不透明化する暴力団の資金獲得活動に関する情報を収集・分析するとともに、社会情勢の変化に応じた暴力団の資金獲得活動の動向にも留意しつつ、各種の事業活動に進出している暴力団や暴力団と共生する者等に対する取締りを推進している。

〔1〕 社会情勢の変化に応じた資金獲得犯罪
 暴力団は、企業や行政機関を対象とした不当要求、振り込め詐欺、強盗、窃盗のほか、最近の経済不況下における各種公的給付制度を悪用した詐欺等、時代の変化に応じて様々な資金獲得犯罪を行っている。

事例
 山口組傘下組織構成員(48)らは、平成20年12月から開始された就職安定資金融資制度を悪用し、架空の人材派遣会社を使い、従業員の解雇及び解雇に伴う住宅喪失の事実があるように装い、公共職業安定所に対して内容虚偽の書類を作成・提出して、同所より就職安定資金融資対象者証明書の交付を受けた上、金融機関に提出するなどして融資金を詐取した。21年6月、同人ら2人を詐欺罪で逮捕した(滋賀)。

〔2〕 経済活動を装った資金獲得犯罪
 暴力団は、実質的にその経営に関与している暴力団関係企業を通じ、又は暴力団と共生する者と結託するなどして、暴力団の威力を背景としつつ、一般の経済取引を装い、貸金業法違反、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反等様々な資金獲得犯罪を行っている。

〔3〕 伝統的資金獲得犯罪
 近年、暴力団構成員等の総検挙人員のうち、覚せい剤取締法違反、恐喝、賭博及びノミ行為等のいわゆる伝統的資金獲得犯罪による検挙人員の占める割合は、低下する傾向にある。
 
表2-3 暴力団構成員等に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成12~21年)
表2-3 暴力団構成員等に係る伝統的資金獲得犯罪の検挙人員の推移(平成12~21年)
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コラム1  弘道会対策

(1)弘道会の概要
 現在の山口組組長が昭和59年に立ち上げた山口組の傘下組織で、主たる事務所を愛知県名古屋市に置いている。現在の会長が、平成元年に若頭(注1)に就任し、以後、組織を拡大してきた。同人は、17年3月に、二代目会長を継承している。

注1:一般に、組長等の代表者以外で組織の運営を支配する地位にある者の筆頭者をいう。

(2)弘道会の位置付け
 全暴力団構成員の半数を占める構成員を擁する山口組は、多くの暴力団と友誼(ぎ)関係(注2)等を構築することにより、大半の暴力団に影響を及ぼし得る地位を獲得しており、山口組による一極集中の勢力関係が生じている。
 現在の山口組は、傘下組織の一つである弘道会の初代会長が組長、二代目会長が若頭となっており、山口組の主要ポストを押さえている弘道会が、事実上支配している団体である(注3)

注2:他団体との間で、首領、幹部同士が擬制的血縁関係を結び義兄弟になるなどして作り上げられる関係をいう。
 3:暴力団においては、傘下組織の組長等が同時に上位組織の幹部となっている状況がみられる。

(3)弘道会集中取締り等対策の推進
 暴力団対策上、一極集中状態にある山口組の弱体化が急務であり、そのためには、中枢組織である弘道会の弱体化を図ることが不可欠である。警察では、組織を挙げて弘道会及びその傘下組織に対する取締りを推進している。
 
弘道会による山口組の実質支配状況
弘道会による山口組の実質支配状況
 
弘道会事務所に対する捜索時の状況
弘道会事務所に対する捜索時の状況

事例1
 弘道会幹部(62)らは、19年12月、紳士服販売店において、不正に作成した他人名義のクレジットカードを使用して衣類の購入を申し込み、ブレザー1着(約22万円相当)を詐取した。21年10月、同幹部ら2人を詐欺罪等で逮捕した(大阪)。

事例2
 弘道会傘下組織幹部(42)は、構成員らと共謀の上、飲食店従業員に因縁を付け、同人に対して「土下座せい。」「弘道会をなめとんのか。」などと語気鋭く申し向け、暴力団の威力を示して脅迫した。21年11月、同幹部ら3人を暴力行為等処罰に関する法律違反(集団的脅迫)で逮捕した(三重)。

 第1節 暴力団対策

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