第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

9 サイバー犯罪

 インターネットその他の高度情報通信ネットワークは、国民生活の利便性を向上させ、社会・経済の根幹を支えるインフラとして機能している。その一方で、サイバー犯罪(注1)は年々増加しており、犯罪の手口についても高度化・多様化している状況にある。

注1:高度情報通信ネットワークを利用した犯罪やコンピュータ又は電磁的記録を対象とした犯罪等の情報技術を利用した犯罪


(1)サイバー犯罪の情勢

〔1〕 サイバー犯罪の検挙状況
 サイバー犯罪の検挙件数は増加の一途をたどっており、平成21年中は6,690件と、前年より369件(5.8%)増加し、過去最多となった。
 
表1-11 サイバー犯罪の検挙件数の内訳(平成17~21年)
表1-11 サイバー犯罪の検挙件数の内訳(平成17~21年)
Excel形式のファイルはこちら

ア 不正アクセス禁止法違反
 21年中の不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」という。)違反の検挙件数は2,534件と、前年より794件(45.6%)増加し、過去最多を記録した。不正アクセスの動機としては、「不正にお金を得るため」が全体の88.6%を占め、犯罪によって収益を得る手段として不正アクセス行為が急増している状況にある。
 
図1-27 不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移(平成17~21年)
図1-27 不正アクセス禁止法違反の検挙件数の推移(平成17~21年)
Excel形式のファイルはこちら

イ ネットワーク利用犯罪
 21年中のネットワーク利用犯罪(注2)の検挙件数は3,961件と、前年より373件(8.6%)減少した。特徴として、詐欺の検挙件数が1,280件と、ネットワーク利用犯罪の検挙件数の32.3%を占めており、詐欺の検挙件数の40.8%がインターネット・オークションを利用したものであった。また、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春・児童ポルノ法」という。)違反、児童福祉法違反及びいわゆる青少年保護育成条例違反の検挙件数は1,327件と、前年より57件(4.5%)増加し、児童(18歳未満の者をいう。以下同じ。)の性犯罪等の被害も依然として深刻な状況である。

注2:その実行に不可欠な手段として高度情報通信ネットワークを利用する犯罪


〔2〕 出会い系サイトに関係した事件の検挙状況
 21年中のいわゆる出会い系サイト(注1)に関係した事件として警察庁に報告のあった件数は1,203件であり、これらの事件の被害者548人のうち、児童は453人(82.7%)であった。このうちインターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(以下「出会い系サイト規制法」という。)違反(禁止誘引行為)の検挙件数は348件(前年比19件減)であり、うち児童によるものは222件(前年比103件増)であった。また、21年中の出会い系サイト以外のサイトに関係した事件(注2)として警察庁に報告のあった件数は1,347件であり、被害児童数は1,136人と、出会い系サイトに係る被害児童数の2.5倍であった。

注1:面識のない異性との交際(以下「異性交際」という。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供するウェブサイト
 2:出会い系サイト以外のサイトの利用に起因した事件のうち、児童買春・児童ポルノ法違反事件、児童福祉法違反事件、青少年保護育成条例違反事件及び重要犯罪のうち児童被害に係る事件

 
図1-28 出会い系サイトに関係した事件の検挙件数の推移(平成17~21年)
図1-28 出会い系サイトに関係した事件の検挙件数の推移(平成17~21年)
Excel形式のファイルはこちら

〔3〕 サイバー犯罪等に関する相談の受理状況
 21年中の都道府県警察におけるサイバー犯罪等に関する相談の受理件数は表1-12のとおりであり、前年より2.1%増加した。特に、詐欺・悪質商法に関する相談が前年より6.7%増加した。
 また、インターネット上での困りごと相談を受け付け、その対応策等を回答するウェブサイト「インターネット安全・安心相談」(http://www.npa.go.jp/cybersafety/)への21年中のアクセス件数は15万5,867件であった。
 
表1-12 サイバー犯罪等に関する相談の内訳の推移(平成17~21年)
表1-12 サイバー犯罪等に関する相談の内訳の推移(平成17~21年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)サイバー犯罪の取締りの推進

〔1〕 法令の整備

ア 不正アクセス禁止法
 他人の識別符号を不正に入力し、高度情報通信ネットワークを通じてコンピュータにアクセスする行為を禁止するとともに、当該行為の被害を受けたアクセス管理者からの申出により、都道府県公安委員会が再発防止のために必要な資料の提供、助言、指導等を行うことなどについて規定している。

イ 古物営業法
 インターネット・オークションを営もうとする者に対する届出義務、盗品その他犯罪によって領得された物の疑いがある場合の申告義務、出品者の確認並びに取引記録の作成及び保存に関する努力義務、競りの中止命令等について規定している。

ウ 出会い系サイト規制法
 出会い系サイトを利用して、児童を性交等の相手方となるように誘引することや対償を供与することを示して児童を異性交際の相手方となるように誘引することなど(以下「禁止誘引行為」という。)を禁止するとともに、事業者に対しては、都道府県公安委員会への届出、利用者が児童でないことの確認、禁止誘引行為に係る異性交際に関する情報の公衆閲覧防止措置を義務付けることなどについて規定している。平成22年4月1日現在、993件2,624サイトの届出がなされている。

〔2〕 体制の強化
 複数の都道府県にまたがって敢行されるサイバー犯罪については、関係都道府県警察が捜査の重複を防ぎつつ、連携して対処する必要がある。このため、警察庁では、16年に情報技術犯罪対策課を設置し、都道府県警察が行うサイバー犯罪捜査に関する指導・調整を行っているほか、捜査員の能力向上のための研修、産業界や外国関係機関等との連携、広報啓発活動等を推進している。
 都道府県警察及び都道府県情報通信部では、サイバー犯罪対策を効率的に進めるため、関係部門が連携の上、サイバー犯罪対策に関する知識及び技能を有する捜査員等により構成されるサイバー犯罪対策プロジェクトを設置している。また、サイバー犯罪捜査に必要な専門的技術・知識を有する捜査員を育成するとともに、民間企業でシステム・エンジニアとして勤務していた者をサイバー犯罪捜査官として採用するなど、体制強化に努めている。
 
図1-29 サイバー犯罪対策のための体制
図1-29 サイバー犯罪対策のための体制

(3)インターネット上の違法情報・有害情報対策

〔1〕 違法情報・有害情報の削除に向けた取組み
 警察庁では、一般のインターネット利用者からの違法情報・有害情報(注)に関する通報を受理し、警察への通報やサイト管理者等への削除依頼を行うインターネット・ホットラインセンター(http://www.internethotline.jp/)の運用を平成18年6月に開始した。同センターでは、21年中に13万586件の通報を受理しており、このうち国内のウェブサーバに蔵置されたものについては、サイト管理者等に対して1万8,467件の違法情報・有害情報の削除依頼を行い、このうち1万6,064件(87.0%)が削除された(外国のウェブサーバに蔵置されたものに係る対応については、特集第1節3参照)。

注:違法情報とは、児童ポルノ画像、わいせつ画像、覚せい剤等規制薬物の販売に関する情報等、インターネット上に掲載すること自体が違法となる情報をいう。有害情報とは、違法情報には該当しないが、犯罪や事件を誘発するなど公共の安全と秩序の維持の観点から放置することのできない情報をいう。

 
図1-30 インターネット・ホットラインセンターの概要
図1-30 インターネット・ホットラインセンターの概要

〔2〕 違法情報・有害情報の把握及び取締り
 警察では、サイバーパトロール(注1)、インターネット・ホットラインセンターからの通報等により、インターネット上の違法情報・有害情報の把握に努めるとともに、違法情報については、書き込みを行っている者の検挙だけでなく、これを放置している悪質なサイトの管理者等の取締りを推進している。

注1:ウェブサイトや電子掲示板等の閲覧による違法情報・有害情報の有無の調査


(4)サイバー犯罪等の防止に向けた取組み

〔1〕 広報啓発活動
 警察では、情報セキュリティに関する国民の知識及び意識の向上を図るため、警察やプロバイダ連絡協議会(注2)等が主催する研修会、学校関係者等からの依頼による講演会、地域の各種セミナー、情報通信技術関連イベント等の機会を活用して、情報セキュリティ・アドバイザー等が講演等を行うほか、警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp/cyber/)、広報啓発用パンフレット及び情報セキュリティ対策DVD(注3)により、サイバー犯罪の手口やインターネット上の違法情報・有害情報の現状、対策等について周知を図っている。

注2:都道府県警察では、関係機関、プロバイダ、消費者団体等で構成されるプロバイダ連絡協議会等を設置し、サイバー犯罪の情勢や手口、サイバー犯罪被害防止等に関する情報交換を行っているほか、講習会等の実施、一般向け広報資料の作成等を行っている。
 3:ケーブルテレビでの放映、特定非営利活動法人POLICEチャンネルのウェブサイト(http://www.police-ch.jp/)への掲載、警察署や図書館での貸出し等も行われている。

 
警察庁ウェブサイト
警察庁ウェブサイト
 
情報セキュリティ対策DVD
情報セキュリティ対策DVD

〔2〕 民間企業等との連携
 警察庁では、平成13年度から、総合セキュリティ対策会議(注4)を開催しており、21年度においては、「インターネット・オークションにおける盗品の流通防止対策」をテーマに議論を行い、22年3月、インターネット・オークションにおける盗品カーナビの流通防止の在り方等について報告書に取りまとめた。同報告書を受け、事業者等の関係者と連携の上、インターネット・オークションにおける盗品カーナビの流通防止を図っていくこととしている。

注4:有識者、関連事業者、PTAの代表者等で構成し、情報セキュリティに関する産業界と政府の連携の在り方について検討している。


〔3〕 自殺予告事案等への対応
 近年、インターネット上で自殺を予告する事案や自殺の呼び掛けを通じて知り合った者同士が自殺する事案が多発している。都道府県警察は、インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン(注5)に基づき、プロバイダ等から自殺を予告する者等に関する情報の開示を受け、インターネット上での自殺予告事案に対応している。21年中は、223件の事案に対応し、78人の自殺を行うおそれのあった者について説諭等の措置をとり、自殺を防止した。

注5:平成17年10月に、業界団体が、警察庁及び総務省と連携し策定


 第1節 犯罪情勢とその対策

前の項目に戻る     次の項目に進む