トピックス 

トピックスIV 大規模災害に対する警察の取組み

 警察は、いかなる災害にも迅速かつ的確に対応できる体制を整え、警察の総力を結集して国民の皆様の安全・安心を守ります。

 平成20年中は、6月に岩手・宮城内陸地震、7月に岩手県沿岸北部を震源とする地震が発生したほか、局地的かつ短時間に降る大雨等の災害により全国各地で大きな被害が発生しました。
 警察は、24時間体制で災害に備えており、大規模災害(注1)発生時等には、直ちに災害警備本部等を設置するなど体制を整えるとともに、必要に応じて広域緊急援助隊を運用し、都道府県警察の単位を越え、一体となって被災者の救出救助、交通対策、防犯活動、被災者支援等、幅広い活動を行います。
 これらの活動を円滑に行うため、国民の皆様の御理解と御協力をお願いします。

注1:震度6弱以上(東京都23区内にあっては震度5強以上)の地震その他の大規模な災害


(1)広域緊急援助隊
 広域緊急援助隊は、平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害発生時等において都道府県警察相互の広域的かつ迅速な援助により警察活動を効果的に行うため、同年6月、各都道府県警察に設置されました。同隊は、
 ・ 被災者の救出救助等を行う警備部隊
 ・ 緊急交通路の確保等を行う交通部隊
 ・ 検視や遺族等への安否情報の提供等を行う刑事部隊
で構成されており、約4,700人の警察職員が隊員に指定され、各都道府県警察において厳しい訓練を重ねるとともに、毎年、管区警察局ごとに合同訓練を行い、救出救助能力の向上に努めています。
 警察では、17年4月に、12都道府県警察(注2)の広域緊急援助隊に、極めて高度な救出救助能力を持つ特別救助班(P-REX)(注3)を設置したほか、平素から、装備資機材の整備・充実等、体制の強化を図っています。

注2:北海道、宮城、警視庁、埼玉、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、広島、香川及び福岡
 3:Police Team of Rescue Experts

 
広域緊急援助隊
トピックス 写真 広域緊急援助隊
 
ヘリコプターによる救出救助訓練を行う広域緊急援助隊
トピックス 写真 ヘリコプターによる救出救助訓練を行う広域緊急援助隊

(2)大規模災害発生時等における警察活動
 警察は、一人でも多くの被災者を救うため、地方公共団体や消防等と連携しながら救出救助に当たります。また、被災者の救出救助にとどまらず、交通対策、防犯活動、被災者支援等を行うなど、警察は、その機動力と持続力をいかし、長期にわたる活動においても臨機応変に対応し、国民の皆様の安全・安心を守ります。
 このほか、外国で大規模な災害が発生した際にも、国際緊急援助活動を行っています(国際緊急援助活動 参照
 
倒壊ビルからの救出救助訓練を行う特別救助班
トピックス 写真 倒壊ビルからの救出救助訓練を行う特別救助班

〔1〕 災害警備体制の確立
 大規模災害発生時等には、直ちに情報収集・連絡体制を確立し、災害の規模等に応じて警察庁並びに被災地を管轄する都道府県警察及び管区警察局に災害警備本部等を設置します。警察庁では、被害情報の収集や関係機関との連絡調整を行うとともに、広域緊急援助隊、ヘリコプター等の派遣の調整を行うなど、広域的な応援のための措置をとります。
 岩手・宮城内陸地震では、17都道県警察から、8日間で延べ約1,430人の広域緊急援助隊、17日間で延べ約60機のヘリコプター等が派遣されました。

〔2〕 被災者の救出救助
 災害発生直後における警察の最大の任務は、被災者の救出救助です。
 岩手・宮城内陸地震では、二次災害の危険性が高い中、被災者の救出救助に当たり、国道に架かる橋が崩落し、約40人の地域住民等が立ち往生する事態となった岩手県一関市には、広域緊急援助隊特別救助班等がヘリコプターで急行し、関係機関と協力して全員を救出しました。
 
被災地で活動する広域緊急援助隊
トピックス 写真 被災地で活動する広域緊急援助隊
 なお、被災者の救出救助は、地域住民に最も身近な存在である交番・駐在所の地域警察官により行われることも多く、平成19年7月の新潟県中越沖地震では、駐在所の警察官が、倒壊家屋の瓦礫の中から生き埋めとなっていた男性を救出しました。
 また、自然災害以外でも、17年4月のJR西日本福知山線列車事故では、車両が複雑にマンションに食い込む困難な状況の中、広域緊急援助隊特別救助班は、マンションの崩落を防ぎながら車両を切断するなどして、救出救助に当たりました。
 
事故現場で活動する特別救助班
トピックス 写真 事故現場で活動する特別救助班

隊員の声
宮城県警察広域緊急援助隊
特別救助班班長 永野 裕二 警部補
 岩手・宮城内陸地震では、山間地で、被災された方々を救出するために、ヘリコプターから降下し、渓流をさかのぼり、土砂をかき分け、いくつもの尾根を越えて、被災現場に向かいました。
 土石流により大きな被害を被った駒ノ湯温泉では、倒壊した建物から被災者4人を救出し、倒木を取り除き、スコップで泥水をかき出しながら残る行方不明者を捜索しました。
 不眠不休で活動する中、被災者の方々からいただいた温かいおにぎりとねぎらいの言葉がうれしかっただけに、全員を救出できなかったことが残念でなりません。
 
トピックス 写真 特別救助班班長 永野 裕二 警部補

〔3〕 交通対策・防犯活動
警察では、道路の被害状況の把握に努め、通行不能な道路や危険な道路への通行制限を行うほか、地域住民等の避難路や緊急交通路を確保するため、必要に応じて交通規制を行います。また、被災後の無人化した住宅街、商店街等における窃盗犯等を防止するため、被災地におけるパトロールの強化、避難所の定期的な巡回等を行います。
 岩手・宮城内陸地震では、発生直後から約1か月半にわたり、交通対策や防犯活動を行い、地域住民等の安全・安心の確保に万全を期しました。
 
通行制限を行う警察官
トピックス 写真 通行制限を行う警察官

〔4〕 被災者支援
 警察では、やむを得ず自宅を離れて避難する被災者の支援に万全を期するため、女性警察官を中心とした被災者支援隊を編成し、相談窓口の設置や避難所への訪問による相談活動等を行います。
 阪神・淡路大震災において被災者支援に当たった「のじぎくパトロール隊」の活躍を踏まえ、岩手・宮城内陸地震では、宮城県警察が「栗駒シャクナゲ隊」を、岩手県警察が「イーハトーブ隊」を、それぞれ編成し、避難所等において被災者支援の活動を行いました。
 
避難所を訪問するイーハトーブ隊
トピックス 写真 避難所を訪問するイーハトーブ隊

隊員の声
宮城県若柳警察署地域課
栗駒シャクナゲ隊 遊佐 晃子 巡査長
 栗駒シャクナゲ隊の一員として、1か月以上にわたって支援に携わり、被災者の方々の心の痛みや不安を共有し、それらを少しでも和らげるよう努めたところ、避難所で知り合った母子から、後日お礼の手紙をいただきました。被災者の方々と真剣に向き合えば、心が通じ合うということに大変感激しました。今後もこの感激を胸に、県民の方々に役立つ活動を続けたいと思います。
 
手紙に同封されていた遊佐巡査長の似顔絵
トピックス イラスト 手紙に同封されていた遊佐巡査長の似顔絵

〔5〕 通信対策
 大規模災害発生時等において、現場の状況を把握し、指揮・命令・報告等を確実に実施するためには、警察本部と現場警察官との間の通信手段の確保が必要不可欠です。各都道府県情報通信部等(注)に設置されている機動警察通信隊は、大規模災害発生時等には、速やかに出動して、臨時の無線回線の設定や衛星通信車等による現場の映像の伝送等、必要な通信対策を行っています。
 岩手・宮城内陸地震では、両県を始め、近隣県や東北・関東管区警察局の機動警察通信隊が出動し、山間部における無線回線を確保するとともに、現地の映像をリアルタイムに警察本部、警察庁、首相官邸等に伝送しました。

注:管区警察局情報通信部、東京都警察情報通信部、北海道警察情報通信部、府県情報通信部及び方面情報通信部

 
被災地で通信対策を行う機動警察通信隊
トピックス 写真 被災地で通信対策を行う機動警察通信隊

(3)災害の発生に備えて
災害は、いつ、どこで発生するか分からない上、災害の種別、規模、発生する時間帯や地域等により被害の様相が大きく異なります。警察では、過去の災害を教訓とし、いかなる災害にも迅速かつ的確に対応できるよう、災害警備計画を策定し、様々な事態を想定した実践的訓練を積み重ね、災害の発生に備えた体制の整備を行っています。
 また、平素の警察活動を通じて、地域住民等に対して災害発生時の避難場所、避難時の留意事項等について周知徹底を図り、デパート、劇場等多人数の集合する場所の管理者に対して非常の際の誘導要領、照明・予備電源の確保等について検討をお願いしているほか、関係機関・団体と連携しながら、地域住民等による防災活動を促進しています。
 
山間部における災害を想定した訓練
トピックス 写真 山間部における災害を想定した訓練
 
列車事故を想定した訓練
トピックス 写真 列車事故を想定した訓練

 4 大規模災害に対する警察の取組み

前の項目に戻る     次の項目に進む