特集 日常生活を脅かす犯罪への取組み 

2 国民の生命・身体を脅かす犯罪への取組み

(1)食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯への取組み
〔1〕 取締りの強化
 警察では、食の安全に係る事犯については、悪質な事案に重点を置き、迅速かつ積極的な取締りを行い、製品等の利用により生じた事故等については、事故等の原因を究明するとともに、関係者の刑事責任の有無を明らかにするなど、食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯の取締りを推進している。
 被害が広域にわたる場合は、関係都道府県警察で合同・共同捜査を行うほか、捜査会議を開催して捜査方針等について協議を行うなどして、事案の真相解明に努めている。また、必要に応じて、外国の治安機関と情報交換等を行っている。
 
外国の治安機関との協議
写真 外国の治安機関との協議

〔2〕 関係機関との連携強化
 食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯が発生した場合には、被害拡大防止等のため、関係機関との連携を図り、相互に協力する必要がある。警察では、情報交換を行うなど、関係機関との連携強化を図っている。

ア 消費者安全情報総括官制度の創設
 平成20年9月、消費者の安全確保に政府一体として取り組んでいくため、関係機関(注1)による消費者安全情報総括官制度が創設され、消費者の生命・身体に生ずる被害に関する情報の集約・共有体制や緊急時の即応体制の強化を推進している。警察庁においては、刑事局長が消費者安全情報総括官に選定されている。

イ 食品表示連絡会議等の設置
 20年2月、関係機関(注2)の間で食品表示連絡会議が設置され、各都道府県に設置されている食品表示監視協議会(注3)の対応が円滑に実施されるよう関連情報の共有を進めている。

ウ その他
 上記のほか、食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯に関して、農林水産省、国土交通省等と意見や情報を交換するなど、相互の連携強化を図っている。

注1:内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省
 2:内閣府、公正取引委員会、警察庁、厚生労働省及び農林水産省
 3:警察を含む都道府県の関係機関と国の出先機関との間で、不適正な食品表示に関する監視を強化するために設置され、不適正な食品表示に関する情報が寄せられた場合に、必要に応じて情報共有・意見交換を行い、問題のある事業者への処分等必要な対応を迅速にとっている。


(2)保健衛生事犯への取組み
 警察では、保健衛生事犯の積極的な取締りを推進している。また、犯行手口等を適時適切に公表するとともに、許可業者による事件の場合には、関係機関に通報し、行政処分を促すことなどにより、同種事案の発生の抑止を図っている。

事例
 医薬品販売会社社員(33)らは、平成19年5月ころから20年5月ころにかけて、医薬品の承認を受けていない清涼飲料水に「糖尿病に効く」などと薬効をうたう広告をして販売した。同年6月、1法人、2人を薬事法違反(承認前の医薬品の広告禁止等)で検挙した。さらに、関係機関に通報し、行政処分を促した結果、同年12月、同社の系列店17店舗に対し、8日間の業務停止命令が下された(新潟、福井)。

コラム13 消費生活侵害事犯対策ワーキングチームの設置

 悪質商法、ヤミ金融、食の安全に係る事犯等、近年続発している消費生活の安全を脅かす事犯に対する国民の関心は極めて高く、政府としてこれら事犯に対し適切に対処することが強く求められている。そこで、20年12月、犯罪対策閣僚会議において「犯罪に強い社会を実現するための行動計画2008」が決定された際、同計画中「消費者の目線に立った生活経済事犯への対策の強化」に掲げられた施策を推進する関係機関(注)によって構成されるワーキングチームが設置され、情報交換を行うとともに、今後更に取り組むべき課題を確認し、そのために必要な施策を検討することとされた。

注:内閣官房、内閣府、金融庁、警察庁、公正取引委員会、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省
 
コラム 図 消費生活侵害事犯対策ワーキングチームの設置

 第2節 日常生活を脅かす犯罪への取組み

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