特集 日常生活を脅かす犯罪への取組み 

2 国民の生命・身体を脅かす犯罪の現状

(1)食品・製品等に係る安全・安心を脅かす事犯の現状

〔1〕 食品に係る安全・安心を脅かす事犯の現状
 近年、薬物が混入された食品の摂取によって生命・身体に重大な被害が生じる事案が発生し、国民に大きな不安を与えている。

事例1
 平成19年12月から20年1月にかけて、千葉県及び兵庫県において、中国製冷凍ギョーザによる薬物中毒事案が3件発生し、当該食品等から有機リン系農薬であるメタミドホスが検出された。
 事案の発生が2県にわたることから、両県警察は、警察庁の調整の下、同種被害の拡大を防止するための広報を実施した。また、警察庁は、捜査会議を開催し、捜査方針等について協議した上、両県警察による共同捜査を推進した。さらに、中国公安部と情報交換を行うなど事案の真相解明に努めており、21年6月現在、捜査中である(千葉、兵庫)。
 
捜査会議の状況 (時事)
事例 写真 捜査会議の状況 (時事)

 また、食品衛生関係事犯(食品衛生法違反)や食品の産地等偽装表示事犯(不正競争防止法違反等)といった食の安全に係る事犯は近年増加しており、20年中の検挙事件数は37事件、検挙人員は91人となった。中でも、食品の産地等偽装表示事犯の検挙事件数は16事件、検挙人員は57人と大幅に増加しており、統計を取り始めた14年以降で最多となった。
 偽装手口は悪質・巧妙化が進んでおり、架空の会社名義で架空取引を行うなどの手口もみられる。
 
図-19 食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
図-19 食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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表-4 食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
表-4 食の安全に係る事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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事例2
 食肉製造加工会社代表取締役(77)らは、18年5月ころから19年10月ころにかけて、比内地鶏でない鶏肉で製造した加工食品を「比内地鶏」等と表示し、小売業者11社に販売して約6,300万円をだまし取った。20年5月から同年6月にかけて、1法人、6人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)及び詐欺罪で検挙した(秋田)。
 
偽装された加工食品の検証状況
事例2 写真 偽装された加工食品の検証状況

事例3
 水産物輸入販売会社代表取締役(44)らは、20年2月ころから同年4月ころにかけて、中国産うなぎのかば焼きを「愛知県三河一色産」等と表示し、卸売業者8社に約15トンを販売した。同年11月から同年12月にかけて、3法人、8人を不正競争防止法違反(誤認惹起行為)で検挙した(兵庫、徳島)。
 
押収した中国産うなぎ
事例3 写真 押収した中国産うなぎ

事例4
 水産物輸入販売会社代表取締役(59)は、19年11月、中国産のむき身かき約400キログラムを輸入するに当たり、食品として輸入する際の貝毒検査に係る費用を免れる目的で、釣り餌用と虚偽の申告をして輸入し、小売業者に食品として販売した。20年2月、1法人、1人を食品衛生法違反(輸入届出義務)で検挙した(千葉)。
 
押収したむき身かき
事例4 写真 押収したむき身かき

事例5
 水産加工会社代表取締役(48)は、19年10月ころから同年12月ころにかけて、有毒な物質が含まれるため販売が認められていないとらふぐの肝臓約470キログラムを販売した。20年4月、1法人、1人を食品衛生法違反(不衛生食品等の販売等の禁止)で検挙した(宮崎)。
 
とらふぐの加工場
事例5 写真 とらふぐの加工場

〔2〕 製品等に係る安全・安心を脅かす事犯の現状
 近年、家庭用湯沸器の利用による一酸化炭素中毒事故や高層住宅におけるエレベーター事故を始め、日常生活において身近な製品・施設の利用に起因して生命・身体に重大な被害が生じる事案が発生し、国民に大きな不安を与えている。

事例1
 17年11月、男子大学生ら2人が、自宅において家庭用湯沸器の利用に起因する一酸化炭素中毒で死傷した。19年10月、事故の未然防止のために必要な措置を講ずべき業務上の義務があるにもかかわらず、これを怠ったなどとして、当該家庭用湯沸器の製造会社役員(69)ら3人を業務上過失致死傷罪で検挙した(警視庁)。
 
捜査員による捜索(時事)
事例6 写真 捜査員による捜索(時事)

事例2
 18年6月、男子高校生が、高層住宅のエレベーターから降りようとしたところ、ドアが開いたままの状態で上昇したエレベーターのかご部分と外枠部分との間に挟まれ死亡した。21年3月、事故の未然防止のために必要な措置を講ずべき業務上の義務があるにもかかわらず、これを怠ったなどとして、当該エレベーターの製造会社の元会社員(57)ら6人を業務上過失致死罪で検挙した(警視庁)。
 
捜査員による捜索(時事)
事例7 写真 捜査員による捜索(時事)

(2)保健衛生事犯の現状
 近年、国民の健康志向や美容願望につけ込み、医学的根拠が明らかでない効能をうたい、又は虚偽の体験談を用いてあたかも特定の疾病や部位に効くような宣伝をして健康食品を高額で販売する事犯のほか、模造された医薬品を販売するなどの薬事法違反、無資格で医療行為を行う医師法違反等の事犯が発生し、国民に大きな不安を与えている。
 
表-5 保健衛生事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
表-5 保健衛生事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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事例1
 美容器具販売会社代表取締役(58)は、平成17年9月ころから19年5月ころにかけて、医薬品を販売する許可を受けていないのに、「注射をすればやせられる」などとダイエット効果をうたい、承認を受けていない医薬品である新陳代謝促進剤等を無許可で販売した。20年1月、薬事法違反(無許可の医薬品販売業)で逮捕した(広島)。
 
押収した新陳代謝促進剤
事例1 写真 押収した新陳代謝促進剤

事例2
 エステティックサロン店長(28)らは、19年5月ころから20年3月ころにかけて、医師でないのに、同店に設置した光脱毛機器を使用して脱毛する医療行為を行った。同年9月、3人を医師法違反(無資格医業)で逮捕した(京都)。
 
押収した光脱毛機器
事例2 写真 押収した光脱毛機器

 第1節 日常生活を脅かす犯罪の現状

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