警察活動の最前線 

警察活動の最前線

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。

検挙してこそ刑事!
警視庁荏原警察署刑事組織犯罪対策課
山田 和幸 警部補
写真 警視庁マスコット
 
写真 山田 和幸 警部補

「警察だー!!」
 都内のアパートの一室に、けん銃を携えた私を先頭に捜査員12人が突入しました。狭い室内には、十数台の携帯電話、多数の名簿、数え切れないほどのキャッシュカード等が雑然と置かれ、室内にいた4人の若者は、動くことも言葉を発することもできずにぼう然としていました。ある振り込め詐欺グループを検挙した瞬間でした。
 私は現在、荏原警察署で振り込め詐欺の捜査に携わっています。それまでは警視庁刑事部捜査第二課で振り込め詐欺に関する資料の分析に従事しており、被害者の心情等をつづった書類を目にするたびに、刑事として、自らの手で一人でも多くの犯人を捕まえたいという気持ちを強くもつようになりました。
実際に、振り込め詐欺の犯人を検挙し、取調べをしてみると、犯人からは「お金がもうかるから」という言葉が返ってきます。この悪質な犯罪を、まるでアルバイトであるかのように語る短絡的な動機を耳にしてあきれるばかりでしたが、犯人にきちんと責任をとらせねばと取調べに力が入りました。
 一方、検挙を免れた者は、また、新しい場所で新しい仲間と犯行を繰り返していきます。このような犯人を、一刻も早く、一人でも多く検挙すること、それが私の刑事としての使命であると考えています。
これからも私は「検挙してこそ刑事」という気概で、国民の安全・安心を守るため、犯人検挙に全力を尽くします。

たとえ微力でも
兵庫県警察本部生活安全部生活経済課
本田 英理 巡査部長
写真 兵庫県警マスコット
 
写真 本田 英理 巡査部長

 私は、生活経済課捜査員として、これまで、悪質商法事犯、ヤミ金融事犯、知的財産権侵害事犯、うなぎの産地偽装表示事犯等の捜査に従事してきました。
 その中でも、耐震性に問題のある劣悪な工事により、高齢者から高額な金をだまし取った広域にわたるリフォーム詐欺事件が特に印象に残っています。
 被害者の一人は、苦労してやっとローンの支払を済ませ、お孫さんとの同居を夢見ていた矢先に、何千万円もの被害に遭った女性でした。
 最初は、あまりのショックに事件の話ができないような状態でしたが、何度もその女性宅に足を運び、身の上話に耳を傾けていくうちに、被害の詳細が明らかとなり、捜査に着手できました。
 捜査も終結に向かうある日、その女性が捜査本部を訪れ、「刑事さんが本当の娘のような気がして、生きる元気をもらいました。これから何とか頑張れそうです」と笑顔で話してくれました。
 私は、多様な生活経済事犯に立ち向かうには、まず、被害者と共に泣き、笑い、感動し、たとえ微力であっても一生懸命頑張ることが何より大切なことと肝に銘じ、職務に励んでいます。

地域住民との対話を通じた安全・安心なまちづくり
前 徳島県美馬警察署地域課(現 徳島東警察署地域第二課)
安達 亜子 巡査長
写真 徳島県警マスコット
 
写真 安達 亜子 巡査長

 「あなたがいてくれて良かった」
 平成20年4月、私は美馬警察署へ異動となりました。当時の私には、早く地域住民からの信頼を得て要望にこたえていかなければならないという焦りがありました。そこで、いろいろと考えた末、当署管内には高齢の農業従事者が多いことから、オートバイでのパトロールを行うだけでなく、田畑の周辺を徒歩でパトロールしながら積極的に声掛けを行うこととしました。
 そして、ある日の午後、徒歩でのパトロール中に、畦道を歩く一人の高齢の女性と出会ったのです。
 その女性は、私が挨拶をしても上の空で、表情も曇りがちであったため、再度声を掛けたところ、一瞬ハッとした表情になり、私の方を見て、冒頭の言葉をつぶやいたのです。身に覚えのない携帯電話サイトの利用料金を請求するはがきが届き、不安を感じていたものの、わざわざ警察署へ出向いて相談することもためらわれ、また、パトカーやオートバイに乗車した警察官を呼び止めることもできず、独りで悩んでいたのです。
 しかし、私が、その相談を受け、振り込め詐欺の手口や被害に遭わないための注意点等を説明したところ、その女性は安心し、その後は晴れ晴れとした表情で地域の実情等について話してくれました。
 今、着任当初に感じていた焦りは使命感へと変わっています。今後とも安全・安心なまちづくりに向けて、地域住民との対話を大切にしながら職務に励んでいきたいと思います。

鑑識一筋
鳥取県米子警察署刑事第一課
高力 範明 警部補
写真 鳥取県警マスコット1
写真 鳥取県警マスコット2
 
写真 高力 範明 警部補

 科学好きであった私は、先に警察官になっていた兄を通じて鑑識という仕事の存在を知り、鑑識の仕事をすることにあこがれて警察官になりました。そして、昭和53年に鑑識係に任命されて以来、30年にわたって犯罪鑑識に従事し、現在、米子警察署の鑑識係長として、毎日犯罪現場を飛び回っています。
 鑑識の任務は、「証拠の宝庫」と言われる犯罪現場から犯人に結びつく証拠資料を適正に、かつ、細大漏らさず採取し、犯罪を証明することにあります。
 現場鑑識活動は、屋内外を問わず、様々な犯罪現場において、現場の状況から姿の見えない犯人の行動を読み取り、長時間にわたって地面をはいつくばり、毛髪等の微細な資料や足跡等のかすかなこん跡を見逃すことなく発見・採取するという神経がすり減る作業ですが、「現場には必ず犯人につながる資料がある」との強い信念をもって、一つでも多くの資料を採取することを心掛けています。
 現場鑑識活動には、健康で強じんな体が必要であるため、私は、可能な限り、愛犬との散歩と自転車通勤を続け、体力の維持に努めています。
 私たち鑑識マンは、安全・安心な社会を支える鑑識の仕事に誇りをもち、今日も現場出動しています。

理解と協力を求めて
長崎県警察本部刑事部組織犯罪対策課
石丸 健
写真 長崎県警マスコット
 
写真 石丸 健一 警部補

 「本県の人口は約144万人、対する暴力団員は約600人。皆さんはこの数字をどのように感じますか?」
 私は行政機関や企業の方々に暴力団排除に関する講話をする際、まず初めに必ずこの質問をします。近年、暴力団による民事介入暴力や行政・企業を対象とする不当要求が増加しているにもかかわらず、その実態を知る人は極めて少ないのが現状です。
 そこで、次の質問です。
 「600人が正業にも就かず、世にのさばっています。そして、その存在を受け入れ、共生する者がその数倍います。そして、彼らのために苦しむ人が更にその何倍もいます。さて皆さん!この事実を許せますか?」
 この質問をすると、私の話を聞いている方々の表情が途端に変わります。私たちの仕事は、暴力団員が生きていけない社会をつくることです。そのためには、まず人々の心の中に暴力団を許さない、受け入れないという強い信念をはぐくみ、また、社会の中に暴力団を排除するための様々な仕組みをつくることが不可欠です。
 一人一人の理解、そして社会全体の協力を求める活動は、正に草の根運動であり、一朝一夕には成しえません。それでも、私は今日もまた問い掛けます。「1億2千万人に対し8万2千人・・・さて皆さん!」

外国人との共生社会の実現に向けて
滋賀県警察本部刑事部捜査第一課
溝口 叔宏 警部補
写真 滋賀県警マスコット
 
写真 溝口 叔宏 警部補

 「罪を犯した外国人は悪い人です。でも外国人みんなが同じように思われるのは嫌です。何でも協力します。いつでも言ってください」
 ある外国人男性から贈られた私への貴重な言葉です。私は、この言葉を大切にしています。
 私は、スペインで少年時代を過ごし、「将来、語学がいかせる国際色豊かな仕事に就こう!」と夢を抱き、商社に勤めましたが、同社が海外進出を断念した後、警察の国際犯罪捜査部門の存在を知り、夢の実現に向かって警察社会に飛び込みました。あれから12年が経過し、私は念願の国際捜査官として外国人犯罪と対峙していますが、「罪を犯した外国人の多くは、根っからの悪人ではなく、正面から向き合って更生の道を着実に歩ませれば、日本社会に溶け込める。自分が少年時代に経験したような共生社会を滋賀県で実現したい」と思っています。
 自然豊かで職の多い滋賀県では、外国人登録者数が3万2千人を超え、外国人にとっても生活がしやすい反面、外国人犯罪が後を絶ちません。夢がかなったこの地で、貴重な言葉を贈ってくれた男性のような善良な外国人が一人でも多くなるように、日々奮闘しています。

粘り強い交通事故事件捜査を心掛けて
前 福井県敦賀警察署交通課(現 交通部交通指導課)
新谷 和幸 警部補
写真 福井県警マスコット
 
写真 新谷 和幸 警部補

 平成15年4月、敦賀市内の国道8号線において、かわいい盛りの2歳の幼児が死亡するという悲惨で悪質なひき逃げ事件が発生しました。
 この事件は、発生時間帯が深夜で、目撃者がほとんどおらず、遺留品等の物証も乏しく、当初から捜査は困難を極めました。
 しかし、こうした最悪ともいえる捜査環境の中でも、私たち捜査員は士気を高くもち続け、「亡くなった幼児や御両親の無念を晴らすため、必ず犯人を検挙する」との信念から、長期間にわたり粘り強く捜査し、時効成立の3か月前である平成20年1月、ようやく犯人検挙にたどりつきました。
 今回の事件で犯人検挙が報じられると、地域住民から称賛のメールや手紙が数多く寄せられましたが、何よりも私たち捜査員の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれたのは、我が子を突然失われた御両親からの警察に対する慰労と感謝の言葉でした。
 私は、この事件捜査での経験を糧に、今後とも被害者やその家族の期待にこたえるため、粘り強く交通事故事件捜査に励んでいきたいと思います。

過去の経験をいかして歩む
長野県警察本部交通部交通規制課
市川 正樹 警部
写真 長野県警マスコット
 
写真 市川 正樹 警部

 幼児がダンプカーにひかれるという痛ましい事故が発生した際、同じ年代の子を持つ父親として涙あふれる切ない思いをしたことが、交通事故から人の命を守る交通警察にこだわりをもったきっかけでした。
 また、初めての駐在所勤務時に暴力団事務所へのけん銃発砲事件が発生し、地域住民や地方公共団体と警察が一丸となった暴力追放運動を展開した際、地域の結束力の強さに行政マンとしての警察官の在るべき姿を学びました。
 その後、私は地域、行政機関及び警察が深くかかわり合う交通規制業務に従事することとなりました。長野オリンピック冬季競技大会開催時には、交通総量抑制のため、大規模かつち密な交通規制計画を作成し、管内の地区ごとに事前説明会を連日開催したところ、地域住民の協力を得て予想以上の成果を上げることができ、感無量でした。
 交通警察は、正に地域住民との信頼関係で成り立っているものです。地域住民から寄せられる意見を尊重し、悲惨な交通事故を一件でもなくすため、これまでの貴重な経験をいかしながら、道路管理者等の関係行政機関や所轄警察署と連携して、通学路における歩車分離式信号機等の交通安全施設の整備を行うとともに、交通管理技能指導官として後進の育成にも力を入れていきたいと思います。

名峰「八甲田山」における大惨事を教訓として
青森県警察本部警備部機動隊
松名瀬 天志 巡査長
写真 青森県警マスコット
 
写真 松名瀬 天志 巡査長

 「八甲田前嶽北側斜面で雪崩発生」との無線指令が入ったのは、平成19年2月14日午前11時のことでした。名峰「八甲田山」に潜む悪魔が突如牙をむき、スキー客等24人を襲ったのです。この事故は、死者2人、負傷者8人という大惨事となってしまいました。
 私は、最大風速30メートル、体感温度氷点下20度、さらに猛吹雪で視界5メートルという悪天候の中、機動隊の捜索救助隊員として、この事故の現場へ出動しました。現場では、あちこちから負傷者のうめき声が聞こえ、雪上には広範囲にわたって負傷者の鮮血が点在していました。このような凄惨な光景を目の当たりにしながらも、私は「全員無事に家族の下に帰したい」という一念で自分を奮い立たせ、自衛隊等と連携して救助活動に取り組みました。負傷者に大きな声で励ましの言葉を掛けながら、重くのしかかった雪をひたすら手でかき分け、全力を尽くしましたが、全員を救助できなかったことが今でも悔やまれます。
 八甲田山で山岳遭難救助訓練が行われるたびに、この事故のことを思い出します。そして、自分に言い聞かせます。「あの経験を決して無駄にするな」と。

サイバーテロとの闘い
警察庁情報通信局情報技術解析課
西村 一浩 技官
写真 警察庁エンブレム
 
写真 西村 一浩 技官

 列車の運行システムの不具合により国民生活に混乱が生じたといったニュースを聞くと、改めて我々の生活が情報通信技術に強く依存していることに気付かされます。これまでのところ、日本では、サイバー攻撃により重要インフラの基幹システムが停止するという事案は起きていませんが、24時間体制でサイバーテロ事案の認知に当たっているサイバーフォースセンターの観測システムでは、ウェブサイトの改ざんやコンピュータ・ウイルスの活動を頻繁にとらえています。
 サイバーフォースセンターの一員である私は、主に電力会社や鉄道会社等の重要インフラ事業者を訪問し、サイバー攻撃に関する情報の提供や情報セキュリティに関する助言等を行っています。例えば、悪意を持つ者が事業者のウェブサイトへ大量にアクセスして他者の閲覧を妨害するなどの事案に対し、どうすれば攻撃を防ぐことができるのか、どうすればサービスを継続・再開することができるのかということなどについて検証し、助言を行っています。
 サイバーテロを未然に防止し、万一発生した場合でも被害を最小限にとどめるためには、事業者と警察との連携が何より重要となります。今後とも、より具体的かつ的確な技術的助言を行い、国民が安心して過ごすことができる社会の実現に貢献していきたいと思います。

「私はあなたの味方です」
前 山梨県警察本部刑事部捜査第一課(現 甲府警察署警務課)
高野 良江 警部補
写真 山梨県警マスコット
 
写真 高野 良江 警部補

 性犯罪の被害者と向き合うとき、閉ざされた心の扉を開いてもらうため、私は、警察官としてというよりも、むしろ一人の女性として彼女たちの話に耳を傾け、その痛みや苦しみを共有するように努めています。彼女たちは、精神的にも肉体的にも傷ついているために、「この人は敵か、それとも味方か」と、初めは疑心暗鬼のまなざしで私を見つめます。傷ついた彼女たちは、しばらく食事も喉を通らないこともあるのですが、話を終えるころになると、私とお菓子等を一緒に食べて「久しぶりに食べ物の味が分かるようになった。うれしい」と凍りついていた表情を緩ませ、徐々に笑顔を取り戻してくれます。そして、別れ際に「話を聞いてもらえて良かった。ありがとう」と言う彼女たちの笑顔を見るとき、私は被害者支援のやりがいと充実感を感じます。
 一日も早く被害者に笑顔が戻ることを願いながら、これからも、卑劣な性犯罪に対して被害者と共に闘っていきます。

機動警察通信隊、出動
中国管区警察局山口県情報通信部機動通信課
井上 聡美 技官
写真 警察庁エンブレム
 
写真 井上 聡美 技官

 私が所属する機動警察通信隊とは、災害や事件・事故が発生した際に、いち早く現場に駆けつけ、無線回線の設定や映像の伝送等、必要な通信対策を行うため、技術者で構成された部隊のことです。
 私たちは、機動警察通信隊の出動先が、徒歩でしかたどりつけない山間部や電気の途絶した災害現場であることを想定し、厳しい訓練を繰り返しながら、いつでも出動できるように備えています。また、日ごろから通信資機材の整備と最新の情報通信技術の研鑽にも努めています。
 いつ、どこで発生するか分からない災害や事件・事故に、警察が迅速に対応できるかは、私たちがいかに早く、的確に、現場の通信体制を確立できるかに懸かっています。
 私たちは、この仕事が、直接現場の警察活動を支え、ひいては我が国の「安全と安心」に寄与していることに大きな誇りと使命感を感じながら、今日も出動します。

 警察活動の最前線

前の項目に戻る     次の項目に進む