第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

第7節 適正な警察活動

(1)警察改革の推進
 国家公安委員会・警察庁は、「警察改革要綱」に掲げる施策をすべて実行に移し、また、厳しい治安情勢に対処するため、警察改革の精神の下、治安再生に取り組んでいるが、刑法犯認知件数は依然として高い水準にあるほか、市民生活に大きな不安と脅威を与える事件が相次いで発生するなど、犯罪情勢は依然として厳しい。
 平成20年中の懲戒処分者数は252人と、前年より51人減少し、「警察改革要綱」を策定した12年以降で最少となり、この間で最多の14年と比べると6割近く減少したが、警察職員による飲酒運転等国民の信頼を損なう非違事案がいまだ発生している。
 国家公安委員会・警察庁は、国民からの厳しい批判を反省・教訓として「警察改革要綱」を策定した原点に立ち返り、警察改革を着実に推進するため、17年12月、「警察改革の持続的断行について」と題する、次の5項目から成る指針を取りまとめた。警察では、この指針に基づき今後とも改革を着実に推進し、その実施状況を検証していくこととしている。
 
説明図 警察改革の推進

(2)適正な予算執行の確保
 警察では、適正な予算執行を確保するため、次のような取組みを行っている。

 〔1〕 警察が行う会計監査
 国家公安委員会が定める会計の監査に関する規則に基づき、警察庁長官、警視総監、道府県警察本部長及び方面本部長は、会計監査を実施している。
 
図5-12 会計の監査に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第9号)
図5-12 会計の監査に関する規則(平成16年国家公安委員会規則第9号)

 平成20年度に警察庁が実施した監査では、捜査費、旅費及び契約に係る予算の執行状況を重点的に監査することとし、捜査費の執行に直接携わった捜査員1,859人を含む4,686人に対して聞き取りを実施するなどした。その結果、県費の捜査費で支出すべき事件の捜査について、国費の捜査費を執行していたことから、支払った金額を返納すること(沖縄)、職員の旅行に際して、旅費の支給漏れがあったことから、本来支給すべき額を追加支給すること(釧路方面情報通信部、神奈川県情報通信部、旭川方面本部、群馬)などについて、改善を指示した。また、捜査費関係文書の記載内容の不備、契約に関する適切さを欠く取扱い等について、必要な改善措置を講ずるよう、関係部署を指導した。
 21年度については、20年度の会計監査実施結果を踏まえつつ、引き続き厳正な会計監査を行うこととしている。
 
監査における職員からの聞き取り
写真 監査における職員からの聞き取り

〔2〕 会計に関する職員教育
 職員に予算執行の手続に関する正確な知識を修得させるとともに、適正経理の重要性を再認識させるため、会計に関する職員教育を徹底している。また、それに必要な捜査費等の経理に関する各種の解説資料を作成し、配布している。

(3)監察
 警察では、警察内部の自浄能力を高めるため、都道府県警察で監察を掌理する首席監察官をすべて国家公安委員会の任命に係る地方警務官とするほか、警察庁、管区警察局及び都道府県警察において監察担当官を増員するなど監察体制を強化するとともに、国家公安委員会が定める監察に関する規則に基づき、能率的な運営及び規律の保持のため、厳正な監察を実施している。これにより、警察庁、管区警察局等による監察実施回数が大幅に増加した。
 
図5-13 監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)
図5-13 監察に関する規則(平成12年国家公安委員会規則第2号)

 平成20年度は、図5-14のとおり、監察実施項目を定め、業務及び服務の両面において監察を行った。同年度の警察庁及び管区警察局による都道府県警察等に対する監察の実施回数は1,933回と、警察改革要綱が策定された12年度の3.2倍に増加している。また、都道府県警察においては、年1回以上ほぼすべての警察署に対し監察が実施されている。
 なお、警察法の規定により、国家公安委員会は警察庁に対して、都道府県公安委員会は都道府県警察に対して、監察について必要があると認めるときは、具体的又は個別的な監察の指示をすることができ、これまで、神奈川県公安委員会(13年4月)及び奈良県公安委員会(同年7月)が、警察職員による不祥事案の発生に際して各県警察に対し監察を指示したほか、予算執行に関する不適正事案の発生に際して、北海道公安委員会(16年3月)及び福岡県公安委員会(同年4月)が、各道県警察に対し監察を指示した。
 
図5-14 平成20年度の監察実施計画
図5-14 平成20年度の監察実施計画

(4)苦情の適正な処理
 警察法には苦情申出制度が設けられており、都道府県警察の職員の職務執行について苦情がある者は、都道府県公安委員会に対し文書により苦情の申出をすることができる。
 なお、警察本部長や警察署長あてに申出があったものなど、都道府県警察の職員の職務執行についての苦情でこの制度によらない申出についても、これに準じた取扱いがなされている。
 
図5-15 苦情申出制度の概要
図5-15 苦情申出制度の概要

(5)情報管理の徹底
 警察では、犯罪捜査、運転免許等に関する大量の個人情報のほか、多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、これまで、警察情報セキュリティポリシー(警察情報セキュリティに関する規範の体系)を策定するなどして、情報の流出等への対策を進めてきた。
 しかしながら、ファイル共有ソフトを介して捜査資料等の情報が流出するなど、警察における情報管理の在り方が問われる事案が発生している。こうした事案の絶無を期するためには情報の組織的管理及び職員一人一人の意識改革の徹底が必要不可欠であることから、警察庁では、警察庁職員及び都道府県警察に対し、捜査資料等の不必要な複写及び持ち出しの禁止、不必要な情報の廃棄・消去等について指示し、情報管理に係る職員の責務等について更なる浸透を図っている。また、これらの取組みの実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした監査を継続的に実施しているほか、公費によるコンピュータの整備を進め、私有コンピュータ等の公務使用を禁止するなど、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を推進している。
 特に、外部記録媒体からの情報流出を防止するため、外部記録媒体の利用を制限するとともに、外部記録媒体を用いずに情報を共有することが可能となるファイルサーバ(注)の整備や外部記録媒体に書き込む情報を自動的に暗号化する機能の導入等を引き続き推進することとしている。

注:自らの記録装置に保存された情報をネットワーク上のほかのコンピュータと共有することができるサーバ

 
図5-16 情報管理の徹底に向けた各種対策
図5-16 情報管理の徹底に向けた各種対策

 第7節 適正な警察活動

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