第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

第3節 管区警察局の活動

(1)管区警察局の役割
 警察庁には、その地方機関として7つの管区警察局(東北、関東、中部、近畿、中国、四国及び九州)が設置されている。事務を能率的に処理するため、管区警察局は、警察庁の事務の一部を分担して所掌している。
 東京都と北海道の区域は、管区警察局の管轄外とされ、必要に応じ、警察庁が直接に指揮監督等を行う。また、これらの区域には、国の地方機関として、東京都警察情報通信部と北海道警察情報通信部が置かれている。
 
図5-3 管区警察局の管轄区域
図5-3 管区警察局の管轄区域

(2)管区警察局の主な業務
 管区警察局では、主として次のような業務を行っている。
 
図5-4 管区警察局の主な業務と果たしている役割
図5-4 管区警察局の主な業務と果たしている役割

〔1〕 府県警察に対する監察
 管区警察局の監察機能は、平成12年以降の警察改革の一環として強化され、各管区警察局に総務監察部(関東管区警察局は監察部。東北管区警察局、中国管区警察局及び四国管区警察局は総務監察・広域調整部)を設置し、管区内の府県警察に対する監察を実施している。20年度中、各管区警察局は1,327回の監察を実施した。

〔2〕 広域調整
 組織犯罪対策、来日外国人犯罪対策や広域的な対処を必要とする重要事件の合同捜査、共同捜査等に関して、府県警察に対する指導・調整を行っている。また、悪天候時の高速道路の交通規制、飲酒検問や大規模な集団暴走等の一斉取締りの調整等、府県をまたがる交通管理・交通対策の斉一性を確保している。

事例
 東北管区警察局は、20年8月、工事現場の普通貨物自動車等を対象とした窃盗事件が宮城県及び山形県で連続して発生していたことから、両県警察の捜査担当官を集め、情報交換を行うとともに、両県警察の共同捜査に当たり、指導・調整を図った。また、捜査の過程で、暴力団組織を背景として形成された窃盗グループの存在が浮上し、長野県において発生した窃盗事件の被疑者が同グループの一員であることが判明したことから、同管区警察局は、同年10月、宮城県警察と山形県警察との合同捜査本部の設置及び長野県警察との共同捜査の実施に関し、関東管区警察局と連携しつつ指導・調整を行った。その結果、21年3月までに、山口組傘下組織幹部(58)ら18人を窃盗罪等で逮捕し、これらの者が普通貨物自動車等を対象とした窃盗事件を113件敢行し、盗品を東南アジアに不正に輸出していたことを解明した。

〔3〕 大規模災害への対応
 大規模災害(注)発生時等には、被災情報の収集・分析に当たるとともに、機動警察通信隊や管区警察局ごとに編成される広域緊急援助隊の派遣に関する調整を行っている。

注:震度6弱以上(東京都23区内にあっては震度5強以上)の地震その他の大規模な災害

 
土砂に埋もれた車両からの救出救助訓練を行う広域緊急援助隊
写真 土砂に埋もれた車両からの救出救助訓練を行う広域緊急援助隊

〔4〕 警察の情報通信
 管区警察局情報通信部及び府県情報通信部では、警察庁や都道府県警察を結ぶ情報通信網の整備、管理等を行っている。また、サイバーフォースと呼ばれる技術部隊を設け、サイバーテロの未然防止や被害拡大防止に係る活動を行っている。
 
警察通信施設の点検の様子
写真 警察通信施設の点検の様子

〔5〕 サイバー犯罪の捜査の支援
 サイバー犯罪に対処するため、府県警察の行う捜索差押え、検証等の現場に臨場して、記録媒体内部の電磁的記録の損壊防止、コンピュータの設定状況等の確認、証拠となる電磁的記録の抽出等の技術支援を行っている。

事例
 ファイル共有ソフト「シェア(Share)」を使用したテレビアニメを対象とする著作権法違反(著作権侵害)事件に関し、近畿管区警察局京都府情報通信部は、シェアの特性を踏まえた被疑者の特定に係る技術支援を行うとともに、20年5月に京都府警察によるコンピュータ等の捜索差押えの現場に職員を派遣し、押収したコンピュータ等の解析を行うなど、事件解決に向けた技術支援を行った。

〔6〕 教育訓練
 管区警察局に附置された管区警察学校では、主として警部補及び巡査部長の階級にある府県警察の職員を対象とした昇任時教育、専門的教育等を実施している。
 
実践的訓練を行う警察官
事例 実践的訓練を行う警察官

 第3節 管区警察局の活動

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