第3章 安全かつ快適な交通の確保 

第8節 道路交通のIT化

(1)警察によるITS(注1)(高度道路交通システム)
 警察では、最先端の情報通信技術等を用いて交通管理の最適化を図るため、光ビーコン(注2)の機能を活用して、次の3つのシステムを始めとするUTMS(注3)(新交通管理システム)の開発・整備を推進し、安全・円滑かつ快適で環境負荷の低い交通社会の実現を目指している。

〔1〕 PTPS(注4)(公共車両優先システム)
 バス等の大量公共輸送機関を優先的に走行させる信号制御を行い、定時運行と利便性の向上を図るシステム(平成20年度末現在、40都道府県で整備)
注1:Intelligent Transport Systems
 2:通過車両を感知して交通量等を測定するとともに、車載装置と交通管制センターの間の情報のやり取りを媒介する路上設置型の赤外線通信装置
 3:Universal Traffic Management Systems
 4:Public Transportation Priority Systems

 
図3-17 公共車両優先システム
図3-17 公共車両優先システム

〔2〕 FAST(注5)(現場急行支援システム)
 人命救助その他の緊急業務に用いられる車両を優先的に走行させる信号制御等を行い、現場到着時間の短縮及び緊急走行に伴う交通事故防止を図るシステム(20年度末現在、13都道府県で整備)

〔3〕 DSSS(注6)(安全運転支援システム)
 運転者に周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供することで、危険要因に対する注意を促し、ゆとりをもった運転ができる環境を作り出すことにより、交通事故を防止することなどを目的としたシステム(20年度に行われた、官民連携した大規模な実証実験において、効果的なサービスの在り方について検証を実施)

注5:FAST emergency vehicle preemption systems
 6:Driving Safety Support Systems

 
図3-18 安全運転支援システム
図3-18 安全運転支援システム


(2)ITSに関する国際協力の推進
 技術開発の分野では、広い視野をもって検討を行うことが必要であることから、他国との共同プロジェクトの推進等国際的な協力関係の樹立が重要である。警察庁では、平成20年11月、米国ニューヨークで開催された第15回ITS世界会議(世界66か国から産学官の関係者約8,000人が参加)に参加し、ITSに関して各国と情報交換を行い、協力関係を深めた。また、米国運輸省道路交通安全局との間で署名した、交通安全、ITS及び緊急時対応の協力に関する文書に基づき、21年1月、米国で会議を開催し、両国が推進するITSに関する施策について情報交換を行った。
 
第15回 ITS世界会議
写真 第15回 ITS世界会議

(3)警察による交通情報提供
 警察では、交通管制システムにより収集・分析したデータを交通情報として広く提供し、運転者が混雑の状況や所要時間を的確に把握して安全かつ快適に運転できるようにすることにより、交通の流れを分散させ、交通渋滞や交通公害の緩和を促進している。
 情報提供の手段として、交通情報板等のほか、VICS(注1)(道路交通情報通信システム)を活用している。VICSは、光ビーコン等を通じて車載のカーナビゲーション装置に対して交通情報を提供するシステムで、時々刻々変動する道路交通の状況を地図画面上にリアルタイムで表示することができる。
 また、関係団体の協力の下、警察の保有するリアルタイムの交通情報をオンラインで提供するシステムを構築するなどして、カーナビゲーション装置のほか、携帯電話やインターネットを活用して交通情報を提供する民間事業の高度化を支援するとともに、交通情報の提供に関する指針を定め、こうした事業が交通の安全と円滑に資するものとなるよう働き掛けをしている。

注1:Vehicle Information and Communication System

 
図3-19 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例
図3-19 VICS対応型カーナビゲーション装置の画面表示例

コラム2 官民連携した安全運転支援システムの大規模実証実験

 警察では、IT新改革戦略(平成18年1月IT戦略本部決定)に基づき、DSSSの実用化に向けた取組みを推進している。
 20年度には、システムの効果、受容性等について検証するとともに、交通事故防止への寄与度を定量的に評価するため、官民連携した大規模な実証実験(注2)が行われた。この実証実験において、警察では、路側インフラからの情報に加えて自車の位置、速度等の情報に基づき、車載機が運転者への情報提供の要否及びタイミングを判断し、音声や画像等で運転者に注意を促すシステムの実験を実施した。
 また、21年2月25日から28日にかけて、東京臨海副都心地区において、報道機関や一般参加者を対象としたDSSSに関する展示会、試乗会及びシンポジウムを実施するなど、国民の理解を深める取組みを行った。
注2:地域実証実験(平成20年4月から栃木、神奈川、愛知、広島等において実施)及び合同実証実験(21年1月から東京臨海副都心地区において実施)

 
追突防止支援システム
コラム2 写真 追突防止支援システム
 
DSSS展示会
コラム2 写真 DSSS展示会

 第8節 道路交通のIT化

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