4 総合的な銃器対策
(1)銃器の摘発
警察では、犯罪組織の武器庫の摘発や密輸・密売事件等の摘発に重点を置いた取締りを行うなど、総合的な銃器対策を推進している。近年、けん銃の押収丁数が減少傾向にあるのは、暴力団等の犯罪組織が隠匿や密輸・密売の方法をますます潜在化・巧妙化させ、押収が困難になっていることによるものと考えられる。
〔1〕 けん銃の押収状況
けん銃押収丁数の推移は、図2-15のとおりである。平成20年中の暴力団構成員等からの押収丁数は全押収丁数の33.7%を占めており、このうち50.6%が山口組からの押収となっている。
図2-15 けん銃押収丁数の推移(平成11~20年)
図2-16 暴力団構成員等から押収したけん銃の組織別内訳(平成20年)
〔2〕 武器庫事件の検挙状況
武器庫事件(注)の検挙状況の推移は、表2-10のとおりである。20年中の検挙件数は5件、押収したけん銃等の数は22丁と、それぞれ前年より7件(58.3%)、62丁(73.8%)減少した。摘発した武器庫は、すべて暴力団が組織的に管理していたものであり、暴力団構成員等の交友者宅や貸倉庫内にけん銃を隠匿するなど、その組織管理の手法は一層巧妙化している。
表2-10 武器庫事件の検挙状況の推移(平成11~20年)
〔3〕 けん銃等密輸入事件の検挙状況
けん銃等密輸入事件(予備を含む。)の検挙状況の推移は、表2-11のとおりである。20年中に検挙したのは、けん銃密輸入事件1件、けん銃実包密輸入事件1件、けん銃部品密輸入事件1件であった。
表2-11 けん銃等密輸入事件の検挙状況の推移(平成11~20年)
事例
20年4月、覚せい剤取締法違反(使用)で逮捕した山口組傘下組織構成員(26)の使用車両を捜索したところ、トランク内に隠匿されていた紙箱内から、けん銃1丁、これに適合する実包44個等を発見・押収した。その後の捜査の結果、当該けん銃等は同組織幹部(36)らの指示により組織的に保管されていたことが判明し、同年5月、同人を銃刀法違反(けん銃加重所持)で再逮捕するとともに、同月、同幹部ら3人を、同年6月、同組織会長(36)を、それぞれ同法違反(けん銃加重所持)で逮捕(うち4人については、同年7月、同法違反(組織的けん銃加重所持)に訴因変更)し、同組織を壊滅に追い込んだ(新潟)。
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(2)政府を挙げた諸対策の推進
厳しい銃器情勢に対処するため、内閣府特命担当大臣(銃器対策)を議長とする銃器対策推進会議の下、関係機関(注1)が連携して銃器対策に取り組んでいる。平成20年5月、内閣官房長官を本部長とする銃器対策推進本部(注2)において、銃器犯罪のない社会を実現することを目的として、「平成20年度銃器対策推進計画」が策定された。また、19年12月、犯罪対策閣僚会議の下に設置された銃器・暴力団犯罪取締り・対策チームにおいて、水際における銃器密輸阻止の合同訓練の積極的な実施が決定されたことを受け、20年11月、沖縄県において、警察、海上保安本部及び税関による銃器密輸入取締り合同訓練を実施した。
図2-17 銃器対策推進会議
図2-18 平成20年度銃器対策推進計画の要旨
銃器密輸入取締り合同訓練
(3)国際的な銃器対策の推進
我が国は、平成14年12月、銃器議定書(注1)への署名を行った。同議定書を締結することで、国際的に不正取引された銃器の追跡調査が容易になり、国際協力が更に円滑になることが期待される。
また、警察庁では、国際刑事警察機構(ICPO-Interpol)(注2)を通じるなどして、外国関係機関と積極的に情報交換を行っているほか、職員を派遣するなどして、外国関係機関との連携の強化に努めている。
(4)国民の理解と協力の確保
警察では、「銃器犯罪根絶の集い」(注3)等の催しを開催したり、「ストップ・ガン・キャラバン隊」(注4)等の民間ボランティア団体と連携した活動を行ったりすることで、銃器犯罪の根絶と違法銃器の排除を広く国民に呼び掛けている。
銃器犯罪根絶の集い
違法銃器根絶キャンペーン
コラム2 けん銃110番報奨制度
平成20年5月、けん銃に係る情報収集の困難化を克服するため、広く国民からの情報提供を促すことを目的として、全国統一フリーダイヤル番号を設定し、各都道府県警察で通報を受け付け、提供された情報の内容や捜査への協力の度合いに応じて報奨金を支払う「けん銃110番報奨制度」を導入した。20年中に寄せられた通報は695件であり、その情報を端緒として1丁のけん銃が発見された。
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