第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

1 捜査体制の整備

(1)組織・人員の効率的な運用と捜査員の増員・育成
 警察捜査を取り巻く状況の変化に伴い、一つ一つの捜査に要する労力が増大しているほか、捜査すべき事項は増加し、その内容も複雑化・高度化している。これに対し、警察では、限られた組織・人員の効率的な運用や業務の合理化に努めているほか、なお不足する捜査員の増員を行うとともに、犯罪捜査に従事する者の能力向上を図るため、捜査員及び捜査幹部に対する各種教育訓練を実施している。

(2)初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等
 事件発生時には、迅速・的確な初動捜査を行い、犯人を現場やその周辺で逮捕し、又は現場の証拠物や目撃者の証言等を確保することが重要である。
 警察では、機動力をいかした捜査活動を行うため、警視庁及び道府県警察本部に機動捜査隊を設置し、事件発生時に現場や関係箇所に急行して犯人確保等を行っているほか、機動鑑識隊(班)や現場科学検査班等を編成し、現場鑑識活動を強化するとともに、関連技術の研究開発や資機材の開発・整備を推進している。
 
図1-27 初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等
図1-27 初動捜査体制の整備、鑑識活動の強化等
 
図1-28 合同捜査・共同捜査
図1-28 合同捜査・共同捜査

(3)広域捜査力の強化
 通信手段や交通手段の発達等を背景に犯罪が広域化したことから、多くの犯罪捜査では、複数の都道府県にまたがって活動する必要が生じている。このため、都府県警察の単位を越えて広域的に捜査を行う広域捜査隊の編成が進められているほか(注1)、複数の都道府県警察による合同捜査や共同捜査を積極的に推進している。
 また、航空機事故等に関する特別の専門的知識等を有する職員をあらかじめ専門捜査員として登録し、他の都道府県で発生した事案にも活用できるようにしている。
 さらに、警察庁では、複数の管区警察局の管轄区域で発生している社会的反響の大きい凶悪又は特異な事件で複数の地域にまたがり組織的に捜査を行う必要がある事件を警察庁指定事件として指定し(注2)、都道府県警察と捜査会議を開催し、捜査方針を協議するほか、関係情報を収集・分析するなど、事件の解決に向けて捜査活動を支援している。

注1:平成20年末現在、全国13地域で広域捜査隊の編成に関する協定を締結
 2:平成21年2月までに24事件を指定


(4)国民からの情報提供の促進
 犯人を検挙し、事件を解決するためには、犯罪捜査に対する国民の理解と協力が不可欠である。そこで、警察では、国民に対し、都道府県警察のウェブサイトを活用して情報提供を呼び掛けるほか、様々な媒体を活用して、事件発生時の速やかな通報、聞き込み捜査に対する協力及び事件に関する情報の提供を広く呼び掛けている。また、必要に応じ、被疑者の発見・検挙や犯罪の再発防止のため、被疑者の氏名等を広く一般に公表して捜査を行う公開捜査を行っている。
 さらに、警察庁では、平成19年度から、国民からの情報提供を促進し、重要犯罪等の検挙の徹底を図ることを目的として、捜査特別報奨金制度(公的懸賞金制度)を導入し、警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp)等で対象となる事件等について広報している。
 
警察庁ウェブサイト
写真 警察庁ウェブサイト
 
ポスター
ポスター ポスター

(5)検視体制の強化
 平成20年中に警察が取り扱った死体数は約16万体であり、過去10年間で1.4倍に増加している。
 警察においては、死体取扱数の急増に的確に対応し、適正な検視業務を推進するため、刑事調査官(注1)及びその補助者の増員、検視業務に携わる警察官に対する教育訓練の充実、資機材の整備による検視体制の強化を推進している。また、死因の究明を適正に行うためには、解剖を担う医師の体制整備が重要であることから、警察庁では20年1月に日本法医学会に対して解剖医の体制充実について要望した。
 さらに、関係機関(注2)との間で、解剖医・解剖施設の充実、大学の法医学講座等との連携促進、監察医制度の更なる活用等、死因究明体制を強化するための方策について検討を進めている。

注1:刑事部門における10年以上の捜査経験を有する警視又は警部の階級にある警察官で、警察大学校における法医専門研究科を修了したものから任用される検視の専門家であり、全国で196人(平成21年4月1日現在)配置されている。
 2:内閣官房、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省及び海上保安庁

 
図1-29 死体取扱数の推移(平成11~20年)
図1-29 死体取扱数の推移(平成11~20年)
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 第2節 犯罪の検挙と抑止のための基盤整備

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