第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 知的財産権侵害事犯、環境事犯等

(1)知的財産権侵害事犯
 平成20年中の知的財産権侵害事犯の検挙件数は1,135件、検挙人員は687人であり、16年以降、高水準で推移している。
 偽ブランド事犯(商標法違反)では、押収した偽ブランド品の63.3%が海外から密輸入されたものである。偽ブランド品の仕出国は、近年急増している中国が大半を占めており、密輸入方法は、国際郵便が58.4%、海上貨物が30.3%である。販売形態は、インターネット利用販売が42.3%、店舗販売が38.2%である。
 海賊版事犯(著作権法違反)では、押収した海賊版の大半が国内で複製されたものであり、販売形態は、インターネット利用販売が58.3%、店舗販売が20.0%である。
 警察では、中国及び韓国から大量の偽ブランド品が密輸入されていることや両国において我が国の企業の知的財産権が侵害される例が増加していることを踏まえ、両国の捜査機関に対し、国内での取締りの強化を要請するとともに、両国の捜査機関と情報交換を行うなどの連携強化を図っている。また、不正商品対策協議会(注)における活動を始め、権利者等と連携した知的財産の保護及び不正商品の排除に向けた広報啓発活動を推進している。

注:昭和61年、不正商品の排除及び知的財産の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等に対する働き掛け等を行っている。

 
表1-3 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
表1-3 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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表1-4 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成16~20年)
表1-4 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国別押収状況の推移(平成16~20年)
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事例1
 輸入販売会社役員(43)らは、19年5月ころから同年10月ころにかけて、偽ブランド品を韓国から密輸入し、インターネット・オークションを利用して販売するとともに、同オークション落札者に対し、偽ブランド品の販売代金を他人名義の預金口座に振り込ませていた。20年5月までに、6人を商標法違反(譲渡等)、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(犯罪収益等隠匿)及び詐欺罪で検挙し、偽ブランド品約1,600点を押収した(愛媛)。
 
押収した偽ブランド品
事例1 写真 押収した偽ブランド品

事例2
 無職の男(33)は、20年2月ころから同年9月ころにかけて、日本で未公開の外国映画に日本語字幕を付け、ファイル共有ソフト「ウィニー(Winny)」を使用して公衆送信していた。同月、著作権法違反(著作権侵害)で逮捕し、パソコン、DVD等約2,500点を押収した(京都)。
 
押収したパソコン等
事例2 写真 押収したパソコン等

(2)環境事犯
〔1〕 廃棄物事犯
 警察では、環境を破壊する犯罪のうち、特に、廃棄物の不法投棄事犯等に重点を置き、組織的・広域的な事犯、暴力団が関与する事犯、行政指導を無視して行われる事犯等を中心に取締りを推進している。
 また、関係機関に必要な情報を提供して環境被害の拡大防止と早期の原状回復を促している。
 平成20年中の検挙事件数は前年より増加しており、中でも産業廃棄物の処理責任を負っている排出事業者を不法投棄、委託違反等で検挙した事件は510事件と、大幅に増加した。
 
表1-5 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
表1-5 廃棄物事犯の検挙状況の推移(平成16~20年)
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事例
 電気通信工事会社役員(59)らは、17年9月、ビルの解体工事現場から排出されたポリ塩化ビフェニル(PCB)含有コンデンサ7台を解体工事会社取締役(65)から無償で譲り受けた上で、20年5月、同社の資材置場に埋め立てて不法投棄した。同年8月までに、2法人、5人を廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反(不法投棄)及びポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法違反(譲渡し、譲受け)等で検挙した(富山)。
 
埋立不法投棄されたPCB含有コンデンサ
事例 写真 埋立不法投棄されたPCB含有コンデンサ

〔2〕 鳥獣の違法捕獲等に係る事犯
 警察では、国内に生息する野生鳥獣の違法捕獲等に係る事犯、希少野生動植物種の密輸入や国内での違法取引等に係る事犯、動植物及び生態系の保護等に係る事犯等の取締りを行っている。
 
表1-6 鳥獣の違法捕獲等に係る事犯の検挙状況(平成19、20年)
表1-6 鳥獣の違法捕獲等に係る事犯の検挙状況(平成19、20年)
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事例
 港湾荷役作業員の男(41)は、20年7月ころ、特定動物である毒蛇51匹(コブラ科13種25匹、クサリヘビ科19種23匹、ナミヘビ科1種3匹)を許可なく自宅において飼養していた。同年8月、動物の愛護及び管理に関する法律違反(特定動物の無許可飼養)で逮捕した(警視庁)。
 
無許可飼養されていた毒蛇
事例 写真 無許可飼養されていた毒蛇

(3)諸法令違反
 平成20年中は、水産資源の違法捕獲等に係る事犯、無線局の不法開設に係る事犯等が発生した。
 
表1-7 主な諸法令違反の検挙状況(平成19、20年)
表1-7 主な諸法令違反の検挙状況(平成19、20年)
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事例
 住吉会傘下組織幹部(53)らは、20年1月、潜水器漁業の知事の許可がないにもかかわらず、簡易潜水器を使用した採捕、運搬、見張り等の役割を分担して鮑約2.9キログラムを採捕するなどした。同月、6人を漁業調整規則違反(無許可潜水器漁業)で逮捕するとともに、同幹部らが違法に採捕した鮑を買い付けていた住吉会傘下組織幹部(39)ら2人を同規則違反(違反採捕水産動物の所持)で逮捕した(宮城)。
 
密漁された鮑
事例 写真 密漁された鮑

 第1節 犯罪情勢とその対策

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