特集:変革を続ける刑事警察 

2 犯罪のこん跡をたどるための捜査環境の整備

 携帯電話、預貯金口座、自動車、身分証明書類等を悪用した犯罪が増加しており、犯罪のこん跡をたどることが課題となっている。乏しいこん跡の中から犯人を浮上させるための捜査手法として、犯人と被害者又は共犯者等との関係を解明するための携帯電話の通話履歴の解析、犯行前後の犯人の足取りを解明するための犯行現場周辺の防犯カメラが撮影した画像の解析及び自動車利用犯罪の検挙のための自動車ナンバー自動読取システムの活用等は、非常に重要である。
 しかし、携帯電話の通話履歴や防犯カメラが撮影した画像は、速やかに押収しないと記録が消去されてしまうことがある。また、防犯カメラが撮影した画像が不鮮明な場合があることや、自動車ナンバー自動読取システムが捜査に必要とされた場所に設置されているとは限らないことなどの問題がある。
 こうした問題を解決して、捜査力を強化するためには、通信事業者等と、捜査上必要な情報の保存、押収の在り方等に関して協力の枠組みを構築すること、関係団体等との協議を通じて防犯カメラの性能の高度化・標準化を図ること、自動車ナンバー自動読取システムの整備等を推進することなどが必要である。
 さらに、近年では、偽変造された身分証明書類が、預貯金口座の開設や携帯電話の契約時に使用され、他人名義の預貯金口座や携帯電話が各種犯罪に悪用されていることから、生体認証機能を備えた偽造されにくい身分証明書類の導入や、身分証明書類の偽変造判別装置の導入・高度化等を検討する必要がある。
 依然として厳しい治安情勢に的確に対処し、国民の安全・安心な暮らしを守るためには、今後とも、有効な捜査手法を最大限活用できるよう、捜査環境の整備に向けた取組みを進めていく必要がある。

 第4節 今後の展望

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