第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

7 総合的な治安対策

(1)警察の取組み
〔1〕 「緊急治安対策プログラム」の策定
 刑法犯の認知件数が、平成8年から14年にかけて、7年連続で戦後最多の件数を更新し続けるなど、危険水域にある治安情勢の下、警察庁では、犯罪の増加の基調に早急に歯止めを掛け、国民の不安を解消するため、15年8月、「緊急治安対策プログラム」を策定・公表した。同プログラムでは、当面、警察が緊急かつ重点的に取り組んでいく対策が取りまとめられ、おおむね3年程度を目途として、これに記載された施策の実現に向けて取組みを進め、国民が安心して暮らせる安全な社会の確立を目指していくこととされた。
 警察庁では、19年7月、同プログラムに盛り込まれた施策について総合評価書を作成し、政策の効果を様々な角度から明らかにするなどした。
〔2〕 「治安再生に向けた7つの重点」の策定
 「緊急治安対策プログラム」の策定以来3年が経過し、14年に戦後最多を記録した刑法犯認知件数も、15年以降減少するなど、徐々にではあるが治安再生の曙光が見え始めていると考えられるものの、社会を震撼させる事件が続発するなど、依然として厳しい治安情勢の下、警察庁では、「緊急治安対策プログラム」を補完・加速化し、治安再生への道筋を確実なものとするため、18年8月、「治安再生に向けた7つの重点」を策定・公表した。盛り込まれた施策については、19年度末を目途に実現を図ることとされており、19年中も着実に推進した。

(2)犯罪対策閣僚会議の取組み
〔1〕 犯罪対策閣僚会議の開催とその考え方
 治安情勢が危険水域に達し、国民が強い不安感を抱くようになったことを背景に、政府全体としての犯罪対策を進めることの重要性が認識された。そこで、「世界一安全な国、日本」の復活を目指し、関係推進本部及び関係行政機関の緊密な連携を確保するとともに、有効適切な犯罪対策を総合的かつ積極的に推進するため、政府では、平成15年9月から、首相が主宰し、全閣僚を構成員とする犯罪対策閣僚会議を開催している。従来の犯罪対策にかかわる政策会議や推進本部は、いずれも特定の事象に的を絞ったものであり、犯罪対策全般を幅広く取り扱う総合的かつ省庁横断的な枠組みが設けられたのは、犯罪対策閣僚会議が初めてである。
 この会議で示された「治安回復のための3つの視点」は、個々の施策を立案・実施・評価するための視座を提供するだけでなく、総合的で包括的な犯罪対策を実現するための理念としても機能している。
 
 犯罪対策閣僚会議(提供:内閣広報室)
犯罪対策閣僚会議(提供:内閣広報室)
 
 図5-12 治安回復のための3つの視点
図5-12 治安回復のための3つの視点

〔2〕 「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」の策定
 この3つの視点を前提としつつ、犯罪対策閣僚会議では、15年12月、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を策定した。この行動計画は、犯罪対策の推進に関する政府に基本的な考え方を示した前文と、現下の犯罪情勢の特徴的傾向に即した5つの重点課題ごとに取りまとめられた総計148項目(重複項目を含む。)の個別施策から成っている。この中で、計画策定後5年間を目途に、国民の治安に対する不安感を解消し、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の危機的状況を脱することを目標として、各施策を着実に実施していくこととされている。
 
 図5-13 「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」における5つの重点課題
図5-13 「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」における5つの重点課題

〔3〕 行動計画策定後の状況
 上記行動計画に沿って、関係機関連携の下での犯罪の取締りや水際対策の強化、刑法を始めとする各種治安関係法令の改正、地方警察官、入国管理局職員、税関職員等の増員等の施策が着実に講じられてきた。地方公共団体や地域住民、関係事業者等の間でも、これに呼応した取組みが積極的に行われるようになっている。
 また、20年6月に開催された第11回犯罪対策閣僚会議において、内閣総理大臣から、各閣僚に対し、上記行動計画に代わる新たな計画を同年末までに策定するよう指示があった。
 
 銃器・暴力団犯罪取締り・対策チームでの決定に基づき行われた水際における合同訓練
銃器・暴力団犯罪取締り・対策チームでの決定に基づき行われた水際における合同訓練
 
 図5-14 犯罪対策閣僚会議における主な決定等
図5-14 犯罪対策閣僚会議における主な決定等

 7 総合的な治安対策

前の項目に戻る     次の項目に進む