第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

4 警察の体制

(1)定員
 平成20年度の警察職員の定員は総数28万9,754人であり、そのうち7,611人が警察庁の定員、28万2,143人が都道府県警察の定員である。
 
 表5-1 警察職員の定員(平成20年度)
表5-1 警察職員の定員(平成20年度)

(2)警察力強化のための取組み
 地方警察官については、深刻な治安情勢に的確に対応するため、平成13年度から19年度にかけて合計2万4,230人の増員を行った。この結果、警察官一人当たりの負担人口は、12年度(増員前)の557人から、20年度は511人(人口は19年3月31日現在の住民基本台帳による。)となった。刑法犯認知件数は、15年以降5年連続して減少し、その検挙率も上昇していることから、地方警察官の増員は、他の諸施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。
 しかしながら、刑法犯認知件数は、減少したとはいえいまだに治安が良好であると考えられていた昭和40年代を大きく超える水準にあるなど、治安情勢は依然として厳しく、引き続き、あらゆる角度から警察力の強化に努める必要がある。他方で、警察は本格的な大量退職期を迎えており、平成19年度の地方警察官の退職者数は、過去最高の約1万2,100人となり、また、19年度の警察官採用試験の競争倍率は7.0倍となっており、減少傾向に一応の歯止めを掛けることはできたものの、3年連続で10倍を下回っている。
 警察としては、大量退職期の到来を踏まえつつ、次のような警察力強化のための取組みを強力に推進し、厳しい治安情勢に対応することとしている。
 
 図5-5 退職者数の推移と退職者予測
図5-5 退職者数の推移と退職者予測
 
 図5-6 警察官採用試験実施状況
図5-6 警察官採用試験実施状況

〔1〕 退職警察職員の積極的活用
 交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員の拡充と再任用制度の積極的活用により、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能等を若手警察職員に伝承している。
〔2〕 警察力の質的強化
 高度情報通信技術(IT)の活用による業務の省力化・効率化等により、限られた人的資源を一層有効に活用している。
〔3〕 優秀な人材確保のための採用募集活動の強化
 警察庁が、警察官という職業の魅力をアピールし、都道府県警察の採用募集活動を強力に支援している。
 
 警察庁ウェブサイト(都道府県警察採用コンテンツ)
警察庁ウェブサイト(都道府県警察採用コンテンツ)

(3)女性職員の活躍
 警察では、従来から女性職員の採用に積極的に取り組んでおり、平成14年度以降、毎年1,000人を超える女性警察官が採用されている。20年4月1日現在、全国の都道府県警察には、女性の警察官約1万3,500人、一般職員約1万1,800人が勤務しており、幹部への登用も進んでいる。都道府県警察で採用され、警部以上の階級にある者は、20年4月1日現在、130人である。
 また、女性が被害者となる性犯罪や配偶者からの暴力事案等において、捜査や被害者対策に女性職員の能力や特性がいかされているほか、暴力団対策、警衛・警護等を含め、ほとんどすべての分野にその職域が拡大している。
 
 警戒警備に従事する女性警察官
警戒警備に従事する女性警察官

(4)精強な第一線警察の構築
 近年、警察官に対する公務執行妨害事件が増加するなど、その職務執行を取り巻く環境が悪化しているとともに、最近の地方警察官の退職者数及び採用者数の増加に伴い、警察組織の人的構成が大きく変化しつつあり、これに伴う現場執行力の低下が懸念されている。
 このため、これらの影響が最も懸念される地域警察部門を中心として精強な第一線警察を構築するため、各都道府県警察において、「地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プラン」を策定し、幹部の指揮能力の強化や若手警察官の早期戦力化等の各種施策を推進している。
 
 図5-7 地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プランに基づく取組み
図5-7 地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プランに基づく取組み

(5)教育訓練
 警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。
〔1〕 警察学校における教育訓練
 都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。
 
 図5-8 警察学校における教育訓練体系
図5-8 警察学校における教育訓練体系

〔2〕 職場における教育訓練
 警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。
 
 映像射撃シミュレーター
映像射撃シミュレーター

〔3〕 術科訓練の充実強化
 凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、けん銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等によるけん銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注:スクリーンに投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置

 
 実践的な総合訓練
実践的な総合訓練

(6)警察官の殉職・受傷
 警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。
 平成19年には、2月に軌道敷内に立ち入った女性を助けようとした交番勤務の警察官が電車と接触し殉職する事案、5月に銃器を使用した人質立てこもり事件で負傷した警察官の救出中に銃撃され殉職する事案等が発生した。
 警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。

 4 警察の体制

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