第4章 公安の維持と災害対策 

第10節 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向
〔1〕 批判活動の展開
 右翼は、平成19年中、領土問題、靖国神社及び慰安婦をめぐる議論等をとらえ、批判活動を執拗に行った。
 中国をめぐっては、我が国の排他的経済水域内における中国海洋調査船の調査活動等をとらえ、北朝鮮をめぐっては、日本人拉致容疑事案や朝鮮総聯中央本部が元公安調査庁長官が社長を務める民間会社に売却された旨の報道等をとらえ、韓国をめぐっては、竹島問題等をとらえ、ロシアをめぐっては、北方領土問題等をとらえ、それぞれ関係国、日本政府等を批判した。
 右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表4-5のとおりである。
 
 表4-5 右翼による批判活動に伴う動員数(平成19年)
表4-5 右翼による批判活動に伴う動員数(平成19年)

〔2〕 右翼関係事件の傾向
 19年中は、2件の「テロ、ゲリラ」事件が発生した。
 
 表4-6 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成19年)
表4-6 「テロ、ゲリラ」事件の概要等(平成19年)
 
 街頭宣伝車の取締り
街頭宣伝車の取締り
 
 図4-17 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況(平成10~19年)
図4-17 「テロ、ゲリラ」事件の検挙状況(平成10~19年)

 19年中の右翼による違法行為(右翼関係事件)の検挙状況は、図4-18のとおりである。そのうち、右翼運動に伴う事件(注)等の検挙状況は、次のとおりである。
〈右翼運動に伴う事件の検挙状況〉
  検挙件数…147件(全検挙件数の8.4%)
  検挙人員…259人(全検挙人員の12.8%)
 また、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況は次のとおりで、道路交通法違反を除く全検挙件数の42.4%を占めるなど、悪質な資金獲得活動が依然として後を絶たない。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件


〈資金獲得を目的とした事件の検挙状況〉
 検挙件数…396件(道路交通法違反を除く全検挙件数の42.4%)
 検挙人員…596人(道路交通法違反を除く全検挙人員の49.6%)
 さらに、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、次のとおりであり、銃器の多くを暴力団から入手しているものとみられる。
〈右翼及びその周辺者からの銃器押収状況〉
  19年中の押収…16丁(前年比5丁(45.5%)増)
  最近5年間の押収…120丁(暴力団と関係を有する者からの押収67丁(55.8%))
 
 図4-18 右翼関係事件の検挙状況(平成15~19年)
図4-18 右翼関係事件の検挙状況(平成15~19年)

(2)右翼対策の推進
〔1〕 「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧に向けた違法行為の検挙
 警察は、右翼による「テロ、ゲリラ」事件の未然防圧を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例1

 政治団体幹部(58)は、労務災害事故で負傷したが、無許可の運送業者で労働災害保険金等の受給資格がなかったことから、平成15年5月、社会保険労務士(73)と共謀の上、労働基準監督署に対し、休眠状態だった運送会社との間で雇用関係があるように装い、虚偽の書類を提出するなどして休業補償給付支給金等約390万円を振り込ませ、だまし取った。19年5月、詐欺罪で逮捕した(大阪)。

事例2

 政治団体幹部(34)らは、18年3月、同幹部が多重債務者となって消費者金融会社から融資を受けられないことから、実態のない虚偽の養子縁組を行って名字を改めて、他人になりすました上、同社とローン契約を締結し、同社のカードをだまし取るとともに、このカードを使用して同社の現金自動入出金機から現金を引き出した。19年1月までに詐欺罪等で逮捕した(愛知)。
 
政治団体幹部らの詐欺罪等

〔2〕 街頭宣伝車対策の推進
 警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、市民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。
〈19年中の取締り状況〉
  暴騒音条例に基づく停止・中止命令(79件)、勧告(126件)、立入り(23件)
  名誉毀損罪、威力業務妨害罪、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反等による検挙(43件、59人)

 第10節 右翼の動向と対策

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