第4章 公安の維持と災害対策 

第4章 公安の維持と災害対策

第1節 北海道洞爺湖サミット警備

 平成20年7月7日から9日にかけて、北海道洞爺湖地域において主要国首脳会議(サミット)が開催されるとともに、6月26、27日に京都府で外務大臣会議、6月13、14日に大阪府で財務大臣会議が開催されるなど、各閣僚会議が国内8箇所で開催された。
 警察は、北海道へ約1万6,000人、京都へ約3,100人の特別派遣部隊を派遣し、北海道は約2万1,000人、京都は約6,200人、大阪は約6,000人の体制で警備を実施した。また、警視庁は、サミット開催に伴い、都内でのテロ等を警戒し、約2万1,000人体制で警備を実施した。本会議開催に関して反グローバリズムを掲げる団体や極左暴力集団による集会、デモや右翼の取組み等があり、14人を公安条例違反、公務執行妨害等で現行犯逮捕した。
 警察は、本警備期間中、テロ、暴動等を封圧し、国内外要人の身辺の安全と行事の円滑な遂行を確保して任務を完遂した。
 
 図4-1 北海道洞爺湖サミット等の開催地
図4-1 北海道洞爺湖サミット等の開催地

(1)警備諸対策
 警察では、平成19年7月、警察庁に「北海道洞爺湖サミット等警備対策委員会」を設置したほか、北海道、京都府及び大阪府警察にサミット対策課を設置するなど、すべての都道府県警察がサミットに向けた態勢を確立し、全国警察が一体となって諸対策を推進した。
 今回のサミット警備では、基本方針として国内外要人の身辺の安全と行事の円滑な遂行の確保、国際テロの未然防止、記者団、随員等の安全かつ円滑な移動の確保を掲げた。
 こうした方針に基づき、警察では、過激な反グローバリズム勢力によるデモや暴動に対処するため、複数の都府県警察が合同して実戦的訓練を行うなどして、部隊の練度向上に努めた。また、テロ等不法行為を未然に防止するため、行政機関や公共交通機関、重要インフラ関係事業者等と緊密に連携し、各種協議会、セミナー、実戦的訓練等を行うなど、官民を挙げた取組みを推進した。
 さらに、サミット警備を円滑に進めるため、適時、適切な広報に配意するとともに、知事部局と連携するなどして、あらゆる機会を通じて関係市町村の首長等や住民の代表者との協議を行い、地元住民の理解促進に努めた。
 
 サミットの会場となったザ・ウィンザーホテル洞爺
サミットの会場となったザ・ウィンザーホテル洞爺
 
 デモ警備状況
デモ警備状況
 
 警護状況
警備状況

(2)国際テロ対策
 警察では、外国治安情報機関との連携を一層緊密化するなど、テロ関連情報の収集・分析を強化したほか、平成19年11月に導入された外国人個人識別情報認証システム(BICS)の活用を図りつつ、関係機関と共に、国際空港・港湾における水際対策を強化し、テロリストの入国阻止に努めた。
 また、警察は、テロの標的とされるおそれのある公共交通機関等に対して、警戒を呼び掛けたほか、テロに関する不審情報を確実に入手するため、テロリストが犯行の準備段階において利用する可能性のある爆発物原材料取扱業者、旅館業者、不動産業者等に対して、警察への協力を要請した。
 さらに、スカイ・マーシャルを増強し、ハイジャック防止対策の徹底を図った。

(3)反グローバリズム運動に伴う違法行為対策
 北海道洞爺湖サミットをめぐり、国内外の反グローバリズムを掲げる団体が、サミットの開催の前段から、札幌市内において集会、デモ等の抗議行動に取り組み、また、サミット開催期間中には、会場周辺等において抗議行動に取り組んだ。
 最大の取組みとなった7月5日の札幌市内でのデモには約5,000人(主催者発表)が参加した。
 
 7月5日の札幌市内でのデモ行進
7月5日の札幌市内でのデモ行進

(4)極左対策
 革マル派(注1)、中核派(注2)、統一共産同盟等は、7月4日から9日までの間、延べ約1,370人を動員し、北海道内においてサミット反対闘争に取り組んだ。また、中核派は、6月29日、都内で「サミット粉砕」を訴える集会、デモに取り組み、極左暴力集団による反対闘争のうち最多となる約1,060人を動員した。外務大臣会議を始めとする関係閣僚会議に対しては、延べ約960人が反対行動に取り組んだ。
 警察は、中核派の上記デモにおいて公務執行妨害等により8人を逮捕した。また、非公然アジト発見に向け、国民に協力を呼び掛けたほか、全国の活動拠点に対して捜索を実施するなど、各種事件捜査を徹底し、19年7月以降、極左活動家96人を検挙した。
 こうした取組みにより、北海道警察を始めとする関係都道府県警察は、極左暴力集団による「テロ、ゲリラ」事件等重大不法事案を封圧した。

注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。
 2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

 
 6月29日の都内での抗議行動
6月29日の都内での抗議行動

(5)右翼対策
 右翼は、領土問題等をとらえてロシア、中国及び韓国批判を、また、「ヤルタ・ポツダム体制」打倒の観点から米国批判を、それぞれ各国要人の来日に合わせて、執拗に行った。北海道では、首脳会議開催期間前を含め、約90団体、約145人が街頭宣伝車約20台を動員して街頭宣伝活動を行ったほか、約30団体、約40人が会場や要人宿泊地等への接近を企てたり、周辺を執拗に徘徊した。また、閣僚会議では、2府において延べ約10団体、約10人がハンドマイク等を使用して街頭宣伝活動を行ったほか、約10団体、約10人が、会場周辺や要人宿泊地周辺等を徘徊した。
 警察では、これらの右翼による活動に対し、会場周辺等における警戒活動の強化等様々な対策を行い、右翼による違法行為を未然に防いだ。
 
 街頭宣伝車による右翼の抗議行動
街頭宣伝車による右翼の抗議行動

 第1節 北海道洞爺湖サミット警備

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