第3章 安全かつ快適な交通の確保 

第3章 安全かつ快適な交通の確保

第1節 平成19年の交通情勢

(1)交通事故の発生状況
〔1〕 概況
 平成19年中の死者数は5,744人で、昭和28年以来54年ぶりに5千人台となった。また、発生件数及び負傷者数も、前年に引き続き減少した。
・ 19年中の発生件数・・・83万2,454件(前年比5万4,410件(6.1%)減)
・ 19年中の死者数・・・5,744人(前年比608人(9.6%)減)
・ 19年中の負傷者数・・・103万4,445人(前年比6万3,754人(5.8%)減)
・ 19年中の交通事故発生から30日以内の死者数・・・6,639人(前年比633人(8.7%)減)
・ 19年末の車両保有台数・・・9,116万6,120台(前年比27万7,301台(0.3%)減)
・ 19年末の運転免許保有者数・・・7,990万7,212人(前年比57万7,346人(0.7%)増)
・ 18年度末の自動車走行キロ(自動車が走行した距離を表したもの)
・・・約7,626億キロ(前年度比約63億キロ(0.8%)減)
 
 図3-1 交通事故発生件数・死者数・負傷者数・車両保有台数・運転免許保有者数・自動車走行キロの推移
図3-1 交通事故発生件数・死者数・負傷者数・車両保有台数・運転免許保有者数・自動車走行キロの推移

〔2〕 交通死亡事故の発生状況
・ 自動車乗車中の死者は、高齢者(注1)が30.4%を占める。
・ 自動二輪車乗車中の死者数は、若者(注2)が最も多い(自動二輪車乗車中の死者数の33.8%)。
・ 自転車乗用中の死者数は、75歳以上の高齢者が最も多い(自転車乗用中の死者数の38.4%)。
・ 歩行中の死者数は、75歳以上の高齢者が最も多い(歩行中の死者数の44.9%)。

注1:65歳以上の者をいう。
 2:16歳以上24歳以下の者をいう。

 
 図3-2 状態別、年齢層別死者数(平成19年)
図3-2 状態別、年齢層別死者数(平成19年)

(2)近年死者が減少している理由
 発生件数及び負傷者数は依然として高止まりの状態にあるものの、近年、死者数は減少傾向にある。その要因としては、シートベルト着用者率が向上して事故の被害が軽減されていること、高速で走行する車両の事故が減少していること、悪質・危険性の高い事故が減少していること、歩行中の死傷者の違反割合が減少していることなどが考えられる。
〔1〕 シートベルト着用者率の向上
 平成19年中のシートベルト非着用者の致死率は、着用者の9倍以上であり、シートベルトの着用が交通事故の被害軽減に寄与していると認められる。シートベルト着用者率が5年以降ほぼ毎年向上していることが、自動車乗車中の死者数が減少していることの一因であると考えられる。
 
 図3-3 シートベルト着用者率及び致死率(自動車乗車中)の推移(平成10~19年)
図3-3 シートベルト着用者率及び致死率(自動車乗車中)の推移(平成10~19年)

コラム 後部座席のシートベルト着用義務化

 19年の道路交通法改正により、自動車の後部座席同乗者のシートベルト着用が義務付けられ、高速道路における違反に対しては、運転者に行政処分点数が付されることとされた(20年6月から施行)。
 後部座席についても、シートベルトを着用することにより、着用していない場合に比べ、交通事故における致死率(死者数を死傷者数で除した割合)は約3分の1となり(19年統計)、後部座席同乗者の前席への衝突等により前席乗員が頭部に重傷を負う確率も約51分の1となる((独)自動車事故対策機構の実験データ)など、シートベルトの着用による被害軽減効果は顕著である。
 しかしながら、19年10月に実施された全国調査(警察庁と(社)日本自動車連盟(JAF)が合同で実施)において、後部座席同乗者のシートベルト着用率は、一般道で8.8%、高速道路で13.5%と、依然として低い状況にある。
 警察では、改正道路交通法の施行を機に、自動車に乗車する際は、後部座席乗員を含む全員がシートベルトを着用(6歳未満はチャイルドシートを使用)するよう、広報啓発や指導取締り等を通じて一層の促進を図ることとしている。
 
 衝突実験の映像
衝突実験の映像
(後部座席シートベルト非着用のダミーが前方に飛び出し、前席にぶつかっている。)

〔2〕 事故直前の車両速度の低下
 19年中の80キロメートル毎時を超える高速の事故での死亡事故率は、80キロメートル毎時以下の38.6倍である。こうした高速走行の事故が減少していることが、死者数が減少している一因であると考えられる。
 
 図3-4 一般道における危険認知速度(注)別交通事故件数の推移(平成10~19年)
図3-4 一般道における危険認知速度(注)別交通事故件数の推移(平成10~19年)

〔3〕 悪質・危険性の高い事故の減少
 19年中の飲酒運転や最高速度違反による事故の死亡事故率は、全体と比べると飲酒運転が8.4倍、最高速度違反では16.6倍と高くなっている。これら悪質・危険性の高い事故が減少していることが、死者数が減少している一因であると考えられる。
 
 図3-5 飲酒運転・最高速度違反による交通事故の構成率及び死者数の推移(平成10~19年)
図3-5 飲酒運転・最高速度違反による交通事故の構成率及び死者数の推移(平成10~19年)

〔4〕 歩行者の法令遵守
 19年中の歩行者の致死率を違反の有無別でみると、違反のある者は4.8%、違反のない者は1.4%となっている。近年、歩行中の死傷者数は漸減傾向にあるものの、違反のある者の構成率が減少傾向にあり、これが、歩行中の死者数が減少している一因であると考えられる。
 
 図3-6 歩行中死傷者(1当及び2当)の違反構成率及び歩行中死者・死傷者数の推移(平成10~19年)
図3-6 歩行中死傷者(1当及び2当)の違反構成率及び歩行中死者・死傷者数の推移(平成10~19年)

 第1節 平成19年の交通情勢

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