第2章 組織犯罪対策の推進 

4 国際連携

 経済・金融サービスのグローバル化により、マネー・ローンダリングやテロ資金供与もまた、国境を越えて敢行されるようになってきている。これらの行為を防止するためには、相対的に規制の緩い国の金融サービス等が悪用されることのないよう各国が連携して、対策を講ずることが不可欠である。そのため、国際社会においては、FATF、アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(APG)(注1)等の枠組みの下、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策の国際的基準の策定、普及等が行われており、警察庁も、それらの活動に積極的に参画してきている。

注1:Asia/Pacific Group on Money Laundering


(1)FATFの活動内容と警察庁の参画状況
 FATFは、マネー・ローンダリング対策に関する国際協力を推進するため、1989年(平成元年)のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設置された政府間会合である。2001年(13年)9月の米国同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも指導的な役割を果たしており、20年6月1日現在、我が国を含む32の国・地域及び2国際機関が参加している。FATFは、マネー・ローンダリング対策、テロ資金対策として、各国が法執行、刑事司法及び金融規制の各分野において講ずるべき措置を、それぞれ「40の勧告」、「9の特別勧告」として発出している。これらの勧告については、数次にわたって改訂されており、最近では、2003年(15年)、不動産業者、貴金属商等の非金融機関や弁護士、司法書士、公認会計士等の職業専門家がマネー・ローンダリング等に利用される傾向にあることを踏まえ、顧客の本人確認義務、疑わしい取引の届出義務の対象を拡大することなどを内容とする「40の勧告」の改訂が行われた。また、FATFでは、加盟国における勧告の遵守の徹底のため、順次、各加盟国に審査団を派遣して相互審査を実施している。我が国に対しても、過去2度にわたって審査が実施され、20年3月からは、「40の勧告」の上記改訂を踏まえた第3次審査が実施されている(同年10月ころその結果が公表される予定)。
 警察庁は、従前から、FATFの活動に積極的に参画してきており、19年においても、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策のための新たな枠組み作りに向けた議論や、相互審査における審査官となるための研修等に職員を派遣した。

(2)APGの活動内容と警察庁の参画状況
 APGは、アジア・太平洋地域のFATF非参加国・地域におけるマネー・ローンダリング対策を促進するため、1997年(平成9年)に、アジア・太平洋地域の国・地域を中心として設置された国際協力の枠組みであり、20年6月1日現在、我が国を含む36の国・地域が参加している。警察庁は、FATF同様、APGの活動にも積極的に参画してきており、19年においても、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の手口分析の研究のための会合等に職員を派遣した。
 
 オーストラリアにおけるAPG年次会合(平成19年7月)
オーストラリアにおけるAPG年次会合(平成19年7月)

(3)外国FIUとの情報交換
 国境を越えて行われるマネー・ローンダリングやテロ資金供与を発見するためには、外国FIUとの密接な連携の下、保有情報を交換することが必要である。国家公安委員会・警察庁は、平成19年5月、各国FIU間における情報交換、専門知識に関する協力等を目的として結成されているエグモント・グループ(注2)に、日本のFIUとして改めて加盟した。
 さらに、国家公安委員会・警察庁においては、19年中、我が国と地理的・経済的に緊密な関係にある12の国・地域のFIUとの間で情報交換のための枠組みを設定した。

注2:20年6月1日現在、我が国を含む108の国・地域のFIUが加盟している。

 
 ベルギーFIUとの情報交換枠組みの設定
ベルギーFIUとの情報交換枠組みの設定

 第4節 犯罪収益対策の推進

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