第2章 組織犯罪対策の推進 

2 不法入国・不法滞在者対策

(1)不法残留者、不法入国者及び不法上陸者等の状況
 就労目的で来日する外国人は依然多く、不法に就労する者も少なくない。さらに、不法に就労するよりも効率的に金銭を得ることができるとして、犯罪に手を染めるようになる者も後を絶たない状況であり、大量の不法滞在者は来日外国人犯罪の温床となっていると指摘されている。我が国は、平成16年からの5年間で不法滞在者を半減させることを政府目標としており、これを達成するため、警察では、入国管理局との合同摘発を積極的に行っている。
 
 表2-14 入管法の規定(注)に基づく入国警備官への被疑者の引渡し(平成15~19年)
表2-14 入管法の規定(注)に基づく入国警備官への被疑者の引渡し(平成15~19年)

注:出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第65条。同条では刑事訴訟法の特例として入管法第70条の罪(不法入国、不法残留、不法在留、資格外活動等)に係る被疑者を逮捕した場合で、収容令書が発付され、かつ、その者が他に罪を犯した嫌疑のないときに限り、被疑者を拘束したときから48時間以内に書類及び証拠物と共に当該被疑者を入国警備官に引き渡すことができると規定している。

 
 図2-22 入管法違反の検挙状況の推移等(平成15~19年)
図2-22 入管法違反の検挙状況の推移等(平成15~19年)
 
 図2-23 国籍・地域別の不法残留者数の推移(平成10~19年)
図2-23 国籍・地域別の不法残留者数の推移 (平成10~19年)

(2)不法滞在者による犯罪
 平成19年中の来日外国人刑法犯に占める不法滞在者(注)の割合は10.0%であるが、罪種別にみると、侵入窃盗では40.2%、侵入強盗では44.3%となるなど、国民に強い不安感を与える身近な犯罪への不法滞在者の関与が顕著となっている。

注:入管法第3条違反の不法入国者、入国審査官から上陸の許可を受けないで本邦に上陸した不法上陸者及び適法に入国した後在留期間を経過して残留している者等の不法残留者

 
 図2-24 来日外国人刑法犯の検挙人員に占める不法滞在者の割合(平成19年)
図2-24 来日外国人刑法犯の検挙人員に占める不法滞在者の割合(平成19年)

(3)不法入国・不法滞在を助長する犯罪の状況
 最近5年間の来日外国人による偽造旅券等行使の検挙状況の推移は、表2-15のとおりである。また、これを国籍・地域別にみると、中国人及びフィリピン人の占める比率が高いことが分かる。この種の事案として、日本人の配偶者を装い在留資格を不正に取得する偽装結婚事案や、不法滞在者が我が国において合法滞在を装う目的で使用する外国人登録証明書等を偽造し、販売する事案が依然として多発している。
 
 表2-15 偽変造旅券等行使による不法入国検挙人員の推移(平成15~19年)
表2-15 偽変造旅券等行使による不法入国検挙人員の推移(平成15~19年)

 最近5年間の雇用関係事犯検挙状況の推移は、表2-16のとおりである。この種の事案には、就労あっせん業者や雇用主がかかわっており、暴力団が関与するものも多くみられる。
 
 表2-16 外国人労働者雇用関係事犯検挙状況の推移(平成15~19年)
表2-16 外国人労働者雇用関係事犯検挙状況の推移(平成15~19年)

 警察では、不法入国や不法滞在を助長する犯罪を根絶するため、関係省庁と連携して、外国捜査機関との情報交換を積極的に行い、共同摘発や捜査協力を更に推進することとしている。

 第3節 来日外国人犯罪対策

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