第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

7 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況
〔1〕 風俗営業の状況
 警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 
 表1-18 風俗営業の営業所数の推移(平成15~19年)
表1-18 風俗営業の営業所数の推移(平成15~19年)

〔2〕 性風俗関連特殊営業の状況
 人身取引の防止と違法営業の抑止を目的とした平成18年の風営適正化法改正以降、近年増加傾向にあった無店舗型性風俗特殊営業の派遣型ファッションヘルス等の届出数が、19年中は前年より増加したものの、17年に比べ大幅に減少している。
 
 表1-19 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成15~19年)
表1-19 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成15~19年)

〔3〕 深夜酒類提供飲食店営業の状況
 深夜酒類提供飲食店の営業所数は、最近5年間はほぼ横ばいで推移している。
 
 表1-20 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成15~19年)
表1-20 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成15~19年)

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
 平成19年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は18.5%(143人)で、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
 最近では、いわゆるピンクビラのほか、ウェブサイト、週刊誌等を広報媒体として利用する事犯が目立つほか、女性に債務を負わせて売春を強要したり、派遣型ファッションヘルスを仮装したりするなどの悪質な事犯もみられる。
 
 表1-21 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-21 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成15~19年)

事例

 無店舗型性風俗特殊営業経営者(44)ら5人は、19年7月から同年10月にかけて、中国人女性(25)らを事務所に午前11時ころから午後10時ころまで待機させるとともに、売春の周旋をする目的で、女性を装って携帯電話の出会い系サイトの掲示板に売春の相手を求める書き込みをするなどして売春客を誘引し、女性に対し不特定の遊客を相手方として売春をさせ、その対償の一部を取得するなどした。同月、売春防止法違反(管理売春)で逮捕するとともに、19年7月から同年9月にかけて経営者からみかじめ料を収受していた山口組傘下組織幹部(34)を、同年10月、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)、売春防止法違反(管理売春幇助)及び職業安定法違反(有害業務の職業紹介)で逮捕した(愛知)。

 19年中の風営適正化法による検挙状況をみると、前年に比べ、検挙件数が増加しており、特に、無許可営業の検挙が大幅に増加した。
 わいせつ事犯では、わいせつ物頒布等が増加しており、近年では、コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯が多くみられる。
 
 表1-22 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-22 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成15~19年)
 
 表1-23 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-23 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)

(3)人身取引事犯に対する警察の取組み
〔1〕 人身取引事犯の検挙状況等
 近年、人身取引の防止が国際的な課題となっており、警察では、入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、仲介業者の取締りを強化し、被害者の早期保護、国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。
 平成19年中の人身取引事犯の検挙人員の内訳は、経営者等が30人、仲介業者が11人であった。また、被害者の国籍は、フィリピン(22人)、インドネシア(11人)が多く、これらが全体の76.7%を占めた。被害者の保護時の在留資格は、「興行」(24人)が多数を占めた。
 
 表1-24 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成15~19年)
表1-24 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成15~19年)

事例

 飲食店経営の中国(台湾)人女性(47)は、19年5月、営利の目的でタイ人女性(27)を買い受け、この女性に多額の借金を負わせた上、同飲食店において飲食客の接待に従事させるとともに、不特定の遊客を売春の相手方として紹介するなどして売春を強要した。19年10月までに、同経営者を風営適正化法違反(無許可風俗営業)、売春防止法違反(周旋)及び人身売買罪で、同店の共同経営者である中国(台湾)人女性(51)を風営適正化法違反(無許可風俗営業)で、同店従業員のタイ人女性(40)ら4人を風営適正化法違反(無許可風俗営業幇助)で、同経営者にタイ人女性を売り渡したタイ人女性(32)を風営適正化法違反(無許可風俗営業)及び人身売買罪で逮捕した。なお、警察は、この売春を強要されるなどした女性からの求めにより、婦人相談所へ一時保護し、その後、この女性は国際機関の支援により本国へ帰国した(長野)。

〔2〕 匿名通報ダイヤルの創設
 警察では、19年10月1日から、「匿名通報ダイヤル」の運用を開始した。これは、警察庁から委託を受けた民間団体が少年の福祉に関係する一定の犯罪(注1)や人身取引事犯に関する通報を国民から匿名で受け付け、事件検挙への貢献度に応じて情報料を支払う制度であり、被害者本人からの申告が期待しにくく潜在化しやすい犯罪を早期に認知し、検挙に結び付けるための試みである。
 20年3月31日現在、少年の福祉に関係する一定の犯罪に関する通報件数は141件、人身取引事犯に関する通報件数は51件であり、このうち事件解決等に結び付いた件数は4件である。

注1:福祉犯のうち、未成年者喫煙防止法、未成年者飲酒禁止法に規定する罪等一部の罪を除き、刑法の強制わいせつ罪(少年が被害者になるものに限る。)、未成年者略取、誘拐罪等を含めたもの

 
 図1-36 子どもや女性を守るための匿名通報モデル事業(匿名通報ダイヤル)
図1-36 子どもや女性を守るための匿名通報モデル事業(匿名通報ダイヤル)

(4)危険物対策
 火薬類、特定病原体等、放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(注2)、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。
 警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

注2:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における関係規定については、19年6月から施行された。

 
 表1-25 運搬届出・立入検査の状況(平成19年)
表1-25 運搬届出・立入検査の状況(平成19年)

事例

 19年9月、火薬類取締法に基づく立入検査を行ったところ、スポーツ用品販売会社経営者(42)が、知事の許可を受けないで、同年3月から10月にかけて28回にわたり、小学校等に対して競技用紙雷管合計61点を販売した事実が発覚した。同年12月、同社及び同人を火薬類取締法違反(無許可販売)で検挙した(岡山)。

 第2節 安全で安心な暮らしを守る施策

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