第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 ヤミ金融事犯、悪質商法等

(1)ヤミ金融事犯
 平成19年中のヤミ金融事犯(注1)の検挙事件数等は表1-2のとおりであり、このうち、暴力団が関与する事件は約29.3%であった。

注1:出資法違反(高金利)事件及び貸金業法違反事件並びに貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等の事件

 
 表1-2 金融事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-2 金融事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)

 ヤミ金融事犯は、取立て等において、特定店舗を設けず車を使用し各地を転々としながら他人名義の携帯電話や預貯金口座を利用するなど、手口が巧妙化している。
 多重債務問題が深刻な社会問題となっている状況を踏まえ、18年12月、貸金業の規制等に関する法律等の改正が行われ、罰則の強化を内容とする一部の規定が19年1月20日から、法律の題名変更(変更後の題名は、貸金業法)、取立行為規制の強化等を内容とする一部の規定が同年12月19日から施行された。
 これらを活用し、警察では、全国の都道府県警察に設置したヤミ金融事犯の集中取締本部による取締りを推進している。
 
 被害防止用リーフレット
被害防止用リーフレット
 作成:(社)全国消費生活相談員協会

事例

 無登録貸金業者(45)ら11人は、16年3月ころから18年8月ころにかけて、関東と九州との間を車で移動しながら、移動した先々で「即決融資OK」等の広告を電柱にはり付けるなどして融資を勧誘し、約5,000人に約4億4,000万円を貸し付け、法定金利の約50倍から約90倍の利息を他人名義の口座に振り込ませて受領するなどした。19年10月までに、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)違反(高金利)、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「組織的犯罪処罰法」という。)違反(犯罪収益等隠匿)等で逮捕した(静岡、福岡、大分)。

(2)悪質商法
〔1〕 資産形成事犯
 平成19年中の資産形成事犯(注2)の検挙状況は表1-3のとおりであり、海外事業への投資や未公開株の取引を装って多額の出資を募った詐欺事件等が発生した。

注2:資産形成の各種取引に係る出資法、金融商品取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯

 
 表1-3 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-3 資産形成事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)

事例1

 健康食品販売会社役員(61)ら17人は、15年5月ころから17年6月ころにかけて、「当社に1口50万円を出資すれば5年間で100万円、300万円以上出資すれば出資額の2.5倍の金額を支払う」などとして、顧客約1万3,000人から約537億円をだまし取った。19年1月、詐欺罪で逮捕した(警視庁、福岡、静岡)。

事例2

 福祉機器販売会社役員(55)ら3人は、10年3月ころから17年9月ころにかけて、「銀行の代わりに私にお金を預けてもらえば、高い金利を払うし、必要なときにはすぐに返金する」などとして、聴覚障害者ら約270人から約27億円をだまし取った。19年2月、詐欺罪で逮捕した(警視庁、山梨)。

事例3

 無登録証券会社役員(58)ら11人は、16年11月ころから18年2月ころにかけて、上場予定のない会社の株券を、「上場確実な優良企業の未公開株を販売している。初値は購入価格の2倍以上になる」などとして購入を持ち掛け、取引経験のない高齢者ら約2,800人から約33億円をだまし取った。19年6月までに、詐欺罪で逮捕した(愛知)。

〔2〕 特定商取引等に係る事犯
 19年中の特定商取引等に係る事犯の検挙状況は表1-4のとおりであり、高齢者宅等を訪問して、床下や屋根等の点検を口実に不要なリフォーム工事を高額で行う「点検商法」や、人の不安を煽ったうえ、災厄を免れる効果があるとする高額な印鑑等を売りつける「霊感商法」が目立った。
 
 表1-4 特定商取引等に係る事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)
表1-4 特定商取引等に係る事犯の検挙状況の推移(平成15~19年)
 
 悪質商法に関する広報啓発パンフレット
悪質商法に関する広報啓発パンフレット

事例1

 住宅リフォーム会社役員(30)ら5人は、17年4月ころから19年3月ころにかけて、床下点検を装って主に高齢者宅を訪問し、破損していない排水管を故意に破壊した上で、「排水管が壊れている。全部取り替えなければだめだ」などと告げ、約4,000人に修繕工事の契約を締結させるなどした。19年3月、特定商取引に関する法律違反(不実の告知)、詐欺罪等で逮捕した(北海道)。

事例2

 印鑑販売会社役員(65)ら14人は、15年4月ころから18年3月ころにかけて、姓名判断や家相鑑定と称して主に高齢者宅を訪問し、印鑑の売買契約の締結について勧誘する際、「字画も家相も良くないので、このままでは家族が早死にする。魔よけの鬼門封じの印鑑を作ればすべて良くなる」などと長時間居座って執拗に売買契約の締結を勧誘し、約3万人に高額な印鑑の売買契約を締結させるなどした。19年5月までに、特定商取引に関する法律違反(威迫困惑)で逮捕した(福岡)。

(3)その他の経済事犯
 平成19年中の不動産取引をめぐる事犯の検挙事件数は31事件、検挙人員は46人で、検挙した事件の主な適用法令は、建築基準法及び宅地建物取引業法であった。

 第1節 罪種別犯罪情勢とその対策

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