トピックス 

トピックスI 子どもを犯罪から守るための取組み
~子ども自身の犯罪に巻き込まれない能力の育成と地域の仕組みづくり~

 子どもを犯罪被害から守るためには、地域社会が一体となった取組みを強化するとともに、子ども自身に犯罪に巻き込まれない能力をつけさせましょう。

 子どもに対する犯罪の前兆となり得る声掛け事案は、その多くが登下校時の通学路において発生しており、登下校時の通学路に焦点を当てた対策を進めていく必要があります。また、地域社会の目が及びにくい場面でも適切な対応ができるように、子ども自身に犯罪の危険を予見・回避する能力を身に付けさせるための被害防止教育も重要です。警察では、子どもを対象とする犯罪等の情報を地域住民等に対して発信しており、警察、学校、防犯ボランティア団体を始めとする地域住民等が一体となって、子どもの安全の確保に向けた活動を行っています。これらの取組みを通じて、子どもを犯罪被害から守るための地域社会づくりを更に進めていきましょう。

(1)子どもを取り巻く状況 ~声掛け事案の発生状況等~

 「声掛け事案」は、小学校低学年を中心に幅広い年齢層の子どもに対して「道案内してあげる」、「家まで送ってあげる」などと言葉巧みに接近してくるもので、略取・誘拐や性犯罪等の重大な犯罪の前兆事案となるものもあります。
 平成18年中、警視庁管内において発生した声掛け事案のうち、学校への行き帰りをねらったものが全体の45.9%を占め、多くが登校時である8時台及び下校時である15時台から17時台に集中して発生しています。このように、声掛け事案に対しては、登下校時の通学路に焦点を当てた対策が重要であり、現在、地域住民等のボランティアによる通学路のパトロール活動等、登下校時の通学路の安全対策が実施されています。
 
 図I-1 声掛け事案の対象となった子どもの学年
図I-1 声掛け事案の対象となった子どもの学年
 
 図I-2 子どもが何をしていたときに声掛け事案に遭ったか
図I-2 子どもが何をしていたときに声掛け事案に遭ったか
 
 図I-3 声掛け事案の発生時間帯
図I-3 声掛け事案の発生時間帯

(2)地域住民等が一体となった子どもを守るための仕組みづくり

 子どもを犯罪被害から守るためには、何よりも地域住民等が一体となった取組みが重要であり、近年、地域住民の防犯意識の高まりから、防犯ボランティア団体の活動が活発になってきています。
 
 長野市立通明小学校PTA(長野県)
長野市立通明小学校PTA(長野県)
 
 三勲学区さわやかパトロール隊(岡山県)
三勲学区さわやかパトロール隊(岡山県)
 
 スクールサポーターの活動状況
スクールサポーターの活動状況

 また、「子ども110番の家」として、危険に遭遇した子どもの一時的な保護と警察への通報等を行うボランティアの数も年々増加しています。平成18年12月現在、全国で約189万箇所が「子ども110番の家」に指定されており、鉄道事業者による「こども110番の駅」等民間事業者によって設置されるものもみられます。
 警察では、「地域安全安心ステーション」モデル事業(注)により、防犯ボランティア団体の活動を支援していますが、平成19年度からは、それらを拡充するなどして、子どもの安全を確保することに重点を置いた支援を実施しています。また、退職した警察官等をスクールサポーターとして委託し、積極的に学校へ派遣するなどして、学校と連携して、学校や通学路における子どもの安全確保等に関する施策を推進しています。

注:警察が、犯罪抑止を目的として、消防、学校及び市区町村と連携の下、地域住民やボランティア団体の活動拠点を中心とした自主防犯活動を支援する事業

 
 図I-4 「子ども110番の家」対応マニュアル
図I-4 「子ども110番の家」対応マニュアル

(3)子ども自身の犯罪に巻き込まれない能力の育成

 警察では、子どもが犯罪に巻き込まれる危険を予見する能力や危険を回避する能力を向上させるため、学校や教育委員会と連携して、幼稚園や保育所、小学校等において、被害防止教育を実施しています。
 この被害防止教育は、それを単独で行うほか、非行防止・薬物乱用防止教室や学校行事等と併せて実施するものもあります。その内容は、講師による指導や寸劇・人形劇、ビデオ上映による指導等、年齢、理解度等に応じたものとなっており、また、地域安全マップの作成等、子どもが体験、実践する方式も取り入れています。
 また、警察では、子どもの被害防止教育の一環として、保護者が子どもと共に利用できる「子ども防犯テキスト」を作成し、全国の小学校等に配付しており、随時、「子ども防犯テキスト」の改定を行いながら、子どもにとってより親しみやすい被害防止教育の実施に努めています。
 このほか、被害防止教育実施後には、内容に対する意見、感想等のアンケート調査を実施し、加えて、県下で発生している声掛け事案の手口、場所等を分析し、担当者の教育に反映するなどして、被害防止教育を実施する警察職員の資質向上のための取組みを行っています。また、スクールサポーター、少年補導員等に対しても、定期的に警察官による研修会等を行い、不審者対応要領等について統一した内容による指導を行うことを通じて、被害防止教育の質の向上に努めています。
 
 図I-5 被害防止教育の内容
図I-5 被害防止教育の内容
 
 警察による被害防止教育
警察による被害防止教育
 
 子ども防犯テキスト
子ども防犯テキスト

(4)警察による犯罪情報発信活動

 警察では、子どもが被害に遭った事案や子どもに対する犯罪の前兆となる声掛け事案、付きまとい事案等の発生に関する情報が迅速に児童や保護者に提供されるよう、警察署と小学校や教育委員会との間で電子メールやファックス等による情報共有体制を整備しています。また、これらの情報を都道府県警察のウェブサイトで公開するとともに、携帯電話等の電子メール等を活用した情報提供システムを用いて発信するなど、地域住民に対する積極的な情報提供を実施しています。

事 例
 徳島県警察では、子どもを対象とした犯罪や声掛け事案、不審者情報等を警察署で認知した段階で犯罪情報等の内容を手書きの絵や地図等の画像と共に送信する「安心メールシステム」を構築して、「子ども110番の家」の設置者である地域住民、保護者、ガソリンスタンド、理髪店、タクシー業者、コンビニエンスストア等の携帯電話に対して発信しています。
 この「安心メールシステム」では、子ども被害の犯罪発生情報等に加えて強盗事件やひったくり、連続窃盗等に関する情報提供や協力依頼も行っており、また、内容に応じて情報提供先を隣接警察署管内にまで拡大して発信しています。
 これにより、警察と「子ども110番の家」の設置者との間で犯罪情報等を共有し、警察だけでなく地域住民等においても、受け取った情報を基に発生場所周辺の学校、通学路等のパトロールや見守り活動を実施するなど、地域社会全体で子どもの安全を確保するための活動が促進されています。
 平成18年10月には、このシステムにより公然わいせつ事件のメールを受信していた地域住民が、通勤途中に特徴の似ている男を発見し、警察に通報した結果、被疑者の逮捕につながりました。
 
 <安心メールシステム>
<安心メールシステム>
 
 携帯電話に発信される画面(文字のほか、手書きの絵や地図等を提供)
携帯電話に発信される画面(文字のほか、手書きの絵や地図等を提供)

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