第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

6 警察の体制

(1)定員

〔1〕 平成19年度の警察職員の定員
 平成19年度の警察職員の定員は総数28万9,881人であり、そのうち7,568人が警察庁の定員、28万2,313人が都道府県警察の定員である。
 
 表5-1 警察職員の定員(平成19年度)
表5-1 警察職員の定員(平成19年度)

〔2〕 地方警察官の増員
 深刻な治安情勢に対応し、国民が求める安全と安心を確保するため、17年度からの3か年1万人増員構想に基づき、17年度3,500人、18年度3,500人、19年度3,000人の増員を行った。これによって、警察官一人当たりの負担人口は、全国平均で511人となった(人口は18年3月31日現在の住民基本台帳による。)。

(2)警察官の採用

 平成18年度には約11万4,900人が警察官採用試験を受験し、合格者数は約1万6,100人、競争倍率は7.1倍であった。
 近年、大量退職や増員に伴い、警察官の採用者数が増加し、今後、当分の間、採用者数が1万人を超えることが見込まれる。一方、就職適齢人口の減少が見込まれるほか、民間企業の採用が活発化するなど、警察官の採用をめぐる環境は厳しさを増している。
 こうした状況の中、多くの優秀な人材が警察官を志望するよう、様々な職種で活躍する警察官の言葉をウェブサイトや広報誌で紹介するなどの取組みを行っている。また、筆記試験の成績を過度に重視することなく、面接試験等を充実させ総合的な人物評価を行うなど、能力と適性を有する優秀な人材の確保に努めている。
 
 採用に関するウェブサイト
採用に関するウェブサイト

(3)女性職員の活躍

 警察では、従来から女性の採用に積極的に取り組んでおり、平成14年度以降は、毎年1,000人を超える女性警察官が採用されている。19年4月1日現在、全国の都道府県警察には、女性の警察官約1万2,700人、一般職員約1万1,900人が勤務しており、幹部への登用も進んでいる。都道府県警察で採用され、警部以上の階級にある者は、19年4月1日現在、111人である。
 とりわけ、女性が被害者となる性犯罪や配偶者からの暴力事案等では、捜査や被害者対策に女性職員の能力や特性がいかされているほか、暴力団対策、警衛・警護等を含め、ほとんどすべての分野にその職域が拡大している。
 
 似顔絵捜査に従事する女性警察官
似顔絵捜査に従事する女性警察官

(4)精強な第一線警察の構築

 近年、警察官に対する公務執行妨害事件が増加するなど、その職務執行を取り巻く環境が悪化しているとともに、ここ数年の地方警察官の退職者数及び採用者数の増加に伴い、警察組織の人的構成が大きく変化しつつあり、これに伴う現場執行力の低下が懸念されている。
 このため、これらの影響が最も懸念される地域警察部門を中心とした精強な第一線警察を構築するため、各都道府県警察において、「地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プラン」を策定し、各種施策を推進している。
 
 図5-15 地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プランに基づく取組み
図5-15 地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プランに基づく取組み

(5)教育訓練

 警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

〔1〕 警察学校における教育訓練
 都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。
 
 図5-16 警察学校における教育訓練体系
図5-16 警察学校における教育訓練体系

〔2〕 職場における教育訓練
 警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、部外講師による講習会等を行っている。

〔3〕 術科訓練の充実強化
 凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、けん銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等によるけん銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注:スクリーンに投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置

 
 映像射撃シミュレーター
映像射撃シミュレーター
 
 実践的訓練
実践的訓練

(6)警察官の殉職・受傷

 警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。平成18年には、交通事故処理中の警察官が、前方不注視の車両に衝突され、殉職する事案等が発生した。また、19年2月には、軌道敷内に立ち入った女性を助けようとした交番勤務の警察官が電車と接触し殉職する事案、5月には、銃器を使用した人質立てこもり事件で負傷した警察官の救出中に銃撃され殉職する事案等が発生した。
 警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。

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