第5章 公安委員会制度と警察活動の支え 

5 管区警察局の活動

(1)管区警察局の役割

 警察庁には、その地方機関として7つの管区警察局(東北、関東、中部、近畿、中国、四国及び九州)が設置されている。事務を能率的に処理するため、管区警察局は、警察庁の事務の一部を分担して所掌している。
 東京都と北海道の区域は、管区警察局の管轄外とされ、必要に応じ、警察庁が直接に指揮監督等を行う。また、これらの区域には、国の地方機関として、東京都警察情報通信部と北海道警察情報通信部が置かれている。
 
 図5-13 管区警察局の管轄区域
図5-13 管区警察局の管轄区域

(2)管区警察局の主な業務

 管区警察局では、主として次のような業務を行っている。
 
 図5-14 管区警察局の主な業務と果たしている役割
図5-14 管区警察局の主な業務と果たしている役割

〔1〕 府県警察に対する監察
 管区警察局の監察機能は、平成12年以降の警察改革の一環として強化され、各管区警察局に総務監察部(関東管区警察局は監察部。中国管区警察局及び四国管区警察局は総務監察・広域調整部)を設置し、管区内の府県警察に対する監察を実施している。平成18年度中、各管区警察局は1,231回の監察を実施した。

〔2〕 広域調整
 組織犯罪対策、来日外国人犯罪対策や広域的な対処を必要とする重要事件の合同捜査、共同捜査等に関して、府県警察に対する指導・調整を行っている。また、悪天候時の高速道路の交通規制、飲酒検問や初日の出暴走対策等の一斉取締りの調整等、府県をまたがる交通管理・交通対策の斉一性を確保している。

事例1
 東北管区警察局は、平成18年10月、同管区内で連続発生していたスタッドレスタイヤの窃盗事件につき、岩手、宮城、山形及び福島の各県警察の捜査担当官を集め、情報交換を実施するとともに各県警察が協力して捜査に取り組むよう指示した。その結果、宮城県警察は、同月、スタッドレスタイヤ266本(時価約324万円相当)を盗んだロシア人3人を隣接県警察の協力を得て窃盗罪で逮捕した。また、同年11月以降、同管区警察局の指導・調整の下、岩手、宮城、山形及び福島の各県警察が共同捜査を進め、19年2月現在、これらの者が更に約8,000本(時価約1億6,000万円相当)の窃盗罪を敢行し、盗んだタイヤをロシアに輸出していたことを突き止めている。

〔3〕 大規模災害への対応
 大規模災害の発生等緊急事態の時には、被災情報の収集・分析に当たるとともに、機動警察通信隊や管区警察局ごとに編成される広域緊急援助隊の派遣に関する調整を行っている。
 
 土砂に埋もれた車両からの救出訓練を行う広域緊急援助隊員
土砂に埋もれた車両からの救出訓練を行う広域緊急援助隊員
 
 大規模災害を想定し、通信回線の構築訓練を行う機動警察通信隊員
大規模災害を想定し、通信回線の構築訓練を行う機動警察通信隊員

〔4〕 警察の情報通信
 情報通信部及びその下部機関である各府県情報通信部が、警察庁や都道府県警察を結ぶ情報通信網の整備、管理等を行っている。また、サイバーフォースと呼ばれる技術部隊を設け、サイバーテロの未然防止や被害拡大防止に係る活動を行っている(第4章12参照)。

〔5〕 サイバー犯罪の捜査の支援
 サイバー犯罪に対処するため、府県警察の行う捜索差押、検証等の現場に臨場して、記録媒体内部の電磁的記録の破壊防止、コンピュータの設定状況等の確認、証拠となる電磁的記録の抽出等の技術的支援を行っている(第1章11(2)〔2〕参照)。

事例2
 いわゆる「無認可共済」(注)を営む会社が、会員約2,000人から約35億円の掛け金を集めた詐欺及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反(預り金の禁止)事件に関し、四国管区警察局徳島県情報通信部は、18年11月、徳島県警察によるコンピュータ等の捜索差押えに際して保存データの破損防止等の技術的支援を行った。また、押収したコンピュータ等の電磁的記録の解析のため、同管区警察局は、延べ20人の職員を派遣し、その支援に当たらせた。

注:特定の法律に基づく許可を受けずに行われる共済事業
 
徳島県警察によるコンピュータ等の捜索差押え

〔6〕 教育訓練
 管区警察局に附置された管区警察学校では、主として警部補及び巡査部長の階級にある府県警察の職員を対象とした昇任時教育、専門的教育等を実施している。
 
 実践的訓練を行う警察官
実践的訓練を行う警察官

 5 管区警察局の活動

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