第4章 公安の維持と災害対策 

7 オウム真理教の動向と対策

(1)オウム真理教の動向

〔1〕 教団の危険性と「原点回帰」の教団運営
 平成18年9月15日、最高裁判所は、麻原彰晃こと松本智津夫の弁護団が行った特別抗告を棄却する決定を行い、これにより松本の死刑が確定した。しかし、オウム真理教(以下「教団」という。)は、依然として松本を「尊師」として位置付け、絶対的帰依の対象としているほか、殺人を暗示的に勧める危険な教義を保持するなど、いまだに治安に対する危険性を具備している。
 また、教団は、松本の説法を収録したビデオテープや書籍等の教材を信者に教学させるとともに、年3回の集中セミナーを始めとした各種の集中修行月間を設定するなど、「原点回帰」の教団運営が顕著である。
 
 教団施設内の状況
教団施設内の状況
 
 図4-13 オウム真理教の拠点施設等
図4-13 オウム真理教の拠点施設等

〔2〕 教団の分裂
 教団は、「原点回帰」の教団運営を進める主流派と、同方針に批判的な上祐派との間で対立を深め、18年7月から、施設の住み分けや会計分離が行われるなど、分裂は決定的と見られていた。このような中、19年3月7日、上祐及びこれを支持する複数の信者が教団を脱会して新たな団体を設立する旨を表明した。さらに、上祐派は、5月7日までに新団体「ひかりの輪」を設立して上祐が新団体の代表に就任した旨を表明した。
 
 図4-14 教団の分裂状況
図4-14 教団の分裂状況

(2)オウム真理教対策の推進

〔1〕 特別手配被疑者の追跡捜査と組織的違法行為の厳正な取締り
 乗客及び駅職員12人を殺害し、約5,300人を負傷させた地下鉄サリン事件の発生から12年が経過したが、警察庁指定特別手配被疑者である平田信、高橋克也及び菊地直子の3人は、依然として逃走中である。警察は、3人の発見及び検挙を最優先の課題として、広く国民の協力を求めつつ、全国警察を挙げた追跡捜査を推進している。
 また、警察の事件検挙により明らかになった事実等を基に、教団が依然として危険性を有していると判断されたことから、18年1月、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づき、教団に対する観察処分の期間更新が決定された。
 警察としては引き続き、教団信者による組織的違法行為に対する厳正な取締りを行っていくこととしている。
 
 地下鉄サリン事件発生時(平成7年3月)の状況(共同)
地下鉄サリン事件発生時(平成7年3月)の状況(共同)
 
 警察庁指定特別手配被疑者
警察庁指定特別手配被疑者

〔2〕 教団の実態解明と施設周辺の警戒警備活動
 警察は、無差別大量殺人行為を再び起こさせないため、関係機関と連携して教団の実態解明に努めるとともに、教団施設周辺の住民や関係自治体による要望を踏まえ、住民の平穏な生活を守るため、施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動を実施している。また、警察は、オウム真理教対策関係省庁連絡会議に参画し、関係省庁との連携を強化している。このほか、警察は、松本の死刑確定に際し、所要の警備対策を講じ、違法事案の未然防止を図った。
 
 施設周辺での警戒警備の状況
施設周辺での警戒警備の状況

 7 オウム真理教の動向と対策

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