第2章 組織犯罪対策の推進 

4 国際組織犯罪対策

 警察では、我が国の治安に大きな影響を与えている国際犯罪組織を壊滅させるため、内外の関係機関と連携しながら、各種対策に取り組んでいる。
 
 図2-26 内外の関係機関と連携した国際組織犯罪対策
図2-26 内外の関係機関と連携した国際組織犯罪対策

(1)国内関係機関との連携

〔1〕 水際における取締り
 平成17年1月、警察庁、法務省及び財務省は共同で、航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報を入国前に照合することのできる事前旅客情報システム(APIS)(注1)を導入した。当初は航空会社の任意の協力により情報の提供を受けていたが、18年5月、第164回国会において出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(以下「改正入管法」という。)が成立し、情報の事前提出が航空機及び船舶の長に義務付けられ、19年2月から施行されている。また、偽変造旅券の使用や他人へのなりすましによる不法入国を防ぐため、改正入管法により、外国人が入国する際に指紋等の個人識別情報を提出することが義務化された。

注1:Advance Passenger Information System


〔2〕 その他の取組み
 警察では、法務省入国管理局と協力し、合法滞在を装う者やこれらを組織的に幇助する者等の徹底した取締りを行うため、情報交換を行うとともに、合同で不法滞在者の摘発を実施するなどしている。また、盗難自動車の不正輸出を防止するため税関と情報交換を行うなど、国内関係機関との連携を強化している。
 このほか、不法滞在・不法就労防止のための指導啓発活動、防犯講習及び研修生受入企業に対する日常の生活指導を推進するなどしている。

(2)外国治安機関等との協力

 日本で犯罪を敢行した被疑者が外国人である場合、住所や氏名、生年月日等を把握するためには、その者の国籍国への照会を要する場合があり、また、被疑者が海外に逃亡した場合、逃亡先国における所在確認等の捜査協力を依頼しなければならない。このように、国際犯罪の捜査には、外国の治安機関の協力が不可欠であることから、警察では、次のような取組みを進めている。

〔1〕 ICPOを通じた国際協力
 ICPOは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための各種国際会議の開催、国際手配書の発行等を行う、各国の警察機関を構成員とする国際機関であり、2006年(平成18年)末現在、186か国・地域が加盟している。各国・地域は連絡窓口として国家中央事務局(NCB)(注2)を置くこととされており、日本では警察庁がこれに指定されている。
 ICPOは、加盟国・地域間の情報交換をより迅速かつ確実に行えるようにするため、盗難車両や盗難旅券、国際手配被疑者等のデータベースを事務総局で運用している。警察庁では、日本の盗難車両や紛失・盗難旅券等に関する情報を提供している。さらに、警察庁は、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合に参加するほか、捜査協力の実施、事務総局への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

注2:National Central Bureau

 
 表2-18 外国に対し捜査共助を要請した件数の推移(平成9~18年)
表2-18 外国に対し捜査共助を要請した件数の推移(平成9~18年)
 
 表2-19 外国から捜査共助を要請された件数の推移(平成9~18年)
表2-19 外国から捜査共助を要請された件数の推移(平成9~18年)
 
 表2-20 ICPOを通じた情報の発信・受信状況(平成9~18年)
表2-20 ICPOを通じた情報の発信・受信状況(平成9~18年)

〔2〕 各国治安当局との協議
 警察庁では、次のように日本との間で多くの国際犯罪が敢行される国や来日外国人犯罪者の国籍国等の治安当局との間で開催される二国間協議に積極的に参画し、これらの国々との連携の強化に努めている。
 
 図2-27 各国治安当局との協議状況
図2-27 各国治安当局との協議状況

〔3〕 各国との刑事共助条約締結交渉(第5章11(2)イ〔3〕参照)
 刑事共助条約は、国際礼譲で行われていた共助の実施を条約上の義務とすることにより、共助の確実な実施を担保するとともに、従来は外交当局を経由して行われていた共助の実施のための連絡を条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、事務処理の合理化・迅速化を図る条約である。
 警察庁としては、引き続き、中国、ロシア等との刑事共助条約締結交渉に積極的に参画するとともに、その他の国との条約締結の可能性について関係省庁と共に検討を進めることとしている。

(3)国外逃亡被疑者等の追跡等

 図2-28のとおり、日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者及びそのおそれのある者(以下「国外逃亡被疑者等」という。)の数は年々増加している。警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、入国管理局に手配するなどして出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関等の協力を得ながら所在確認等を進め、その上で、関係国と協力・連携し、犯罪人の引渡しに関する条約等に基づく引渡しの実現を図っている。また、逃亡先国で退去強制処分に付された場合に、公海上の航空機で身柄を引き取るなどして検挙している。このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する捜査資料等を逃亡先国の捜査機関等に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促している。
 
 図2-28 国外逃亡被疑者等の推移(平成9~18年)
図2-28 国外逃亡被疑者等の推移(平成9年~18年)
事 例
 日本人と中国人の混成による強盗団の一員として、侵入強盗を連続して敢行していた日本人の 男(47)は、14年10月、福井県内で侵入強盗を敢行した後、中国に逃亡していたことから、警察庁は、ICPOを通じ同人を国際手配するとともに、中国関係当局に対し、所在確認の協力等を要請した。18年10月、この要請に応じて中国関係当局が被疑者の身柄を拘束したとの連絡を受け、18年11月、中国から退去強制された同人を強盗致傷罪で逮捕した(福井)。

 第3節 来日外国人犯罪対策

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