第2章 組織犯罪対策の推進 

3 銃器情勢

 平成18年中の銃器情勢は、銃器発砲事件の発生件数及びけん銃(けん銃様のもの(注)を含む。以下同じ。)を使用した事件の認知件数が過去最少の水準で推移しているものの、一般市民に被害が及ぶ凶悪事件は後を絶たず、依然として厳しい状況にある。

注:けん銃らしきものを突きつけ、見せるなどして犯行に及んだ事件において、被害者、参考人等の供述等により、けん銃と推定されるもの


(1)銃器発砲事件の発生状況

 平成18年中の銃器発砲事件は53件(前年比23件減)、それによる死傷者数は19人(前年比3人減)と、いずれも過去最少であった17年を更に下回った。このうち、暴力団等によるとみられるものは36件(前年比15件減)と、全発砲事件の67.9%を占めた。
 
 図2-12 銃器発砲事件の発生状況と死傷者数の推移(平成9~18年)
図2-12 銃器発砲事件の発生状況と死傷者数の推移(平成9~18年)

 地域別の発生状況を見ると、西日本(中部以西)での発生が全体の7割以上(71.6%)を占めた。また、7件以上の発生は、福岡県(12件)のみであった。
 
 図2-13 都道府県別銃器発砲事件の発生状況(平成18年)
図2-13 都道府県別銃器発砲事件の発生状況(平成18年)

(2)けん銃を使用した事件の認知状況

 けん銃を使用した事件の認知件数の推移は図2-14のとおりであり、18年中は、11年ぶりに200件を下回った。
 
 図2-14 けん銃使用事件の認知件数の推移(平成9~18年)
図2-14 けん銃使用事件の認知件数の推移(平成9~18年)

事 例
 無職の男(45)は、18年2月、客を装って郵便局に侵入し、同郵便局内でけん銃を発射した上、現金約90万円を奪い、逃走した。さらに、その無職の男を捕まえようとした郵便局長にけん銃数発を発射し、腰部等を負傷させた。同年3月、この無職の男らを強盗殺人未遂罪、銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)違反(加重所持)で逮捕した(警視庁)。

(3)銃器の摘発

 警察では、犯罪組織の武器庫の摘発や密輸・密売事件等の摘発に重点を置いた取締りを行うなど、総合的な銃器対策を推進している。最近、けん銃の押収丁数は減少傾向にあるが、これは、暴力団等の犯罪組織が隠匿や密輸・密売の方法をますます潜在化・巧妙化させ、押収が困難になっていることによると考えられる。

〔1〕 けん銃の押収状況
 過去10年間のけん銃押収丁数の推移は、図2-15のとおりである。暴力団構成員等からの押収丁数が全押収丁数の44.5%を占めており、図2-16のとおり、このうち半数以上が山口組からの押収となっている。
 
 図2-15 けん銃押収丁数の推移(平成9~18年)
図2-15 けん銃押収丁数の推移(平成9~18年)
 
 図2-16 平成18年中に暴力団構成員等から押収したけん銃の組織別内訳
図2-16 平成18年中に暴力団構成員等から押収したけん銃の組織別内訳

〔2〕 武器庫の摘発状況
 過去10年間の武器庫事件(注)の検挙状況は表2-12のとおりである。18年中に摘発した武器庫は、すべて暴力団が組織的に管理していたものであった。また、けん銃を自宅庭の土中、暴力団構成員等の交友者宅、暴力団構成員等の知人が経営する会社の資材置き場の水道管内に隠匿するなど、その組織管理の手法は一層巧妙化している。

注:組織管理に係る3丁以上のけん銃を押収した事件

 
 土中に隠匿されていたけん銃
土中に隠匿されていたけん銃
 
 表2-12 武器庫事件の検挙状況の推移(平成9~18年)
表2-12 武器庫事件の検挙状況の推移(平成9~18年)

事 例 1
 18年7月、山口組傘下組織幹部の交友者(41)方を捜索したところ、寝室押入内に隠匿されていたビニール袋内から、けん銃4丁及び実包89個を発見・押収し、同人を銃刀法違反(加重所持)等で逮捕した。また、同月、同人に保管を指示した山口組傘下組織幹部(41)を銃刀法違反(共同所持)で逮捕した(岩手)。
 
組織管理に係る3丁以上のけん銃を押収した事件

〔3〕 けん銃等密輸入事件の摘発状況
 過去10年間のけん銃等密輸入事件(予備を含む。)の検挙状況は、表2-13のとおりである。18年中に検挙したけん銃密輸入事件のうち1件は、暴力団幹部が首謀者となり組織的に敢行されたものであった。
 
 表2-13 けん銃等密輸入事件の検挙状況(平成9~18年)
表2-13 けん銃等密輸入事件の検挙状況(平成9~18年)

事 例 2
 フィリピン人船員(34)ら2人は、18年1月、横浜大黒ふ頭において、フィリピンからけん銃11丁及び実包220個等を船内に隠匿して入国し、稲川会傘下組織構成員(44)から指示を受けた男(60)が、中古電化製品販売業者に扮してこれらのけん銃等を受け取った。同月、このフィリピン人船員ら4人を銃刀法違反(加重所持)等で逮捕するとともに、その後の捜査により、フィリピンにおけるこれらのけん銃等の仕出しの責任者(55)、本件の密輸首謀者である稲川会傘下組織組長(43)及び同傘下組織幹部(47)を、同年8月までに、同法違反(営利目的輸入)等で逮捕した(警視庁、神奈川)。
 
フィリピン人船員ら4人を銃刀法違反(加重所持)等で逮捕

 第2節 薬物銃器対策

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