第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

5 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況

〔1〕 風俗営業の状況
 警察では、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営適正化法」という。)に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 平成18年5月には、近年国際的な問題となっている人身取引の防止と違法営業の抑止を図ることを目的とした風営適正化法の一部改正法が施行された。
 
 表1-17 風俗営業の営業所数の推移(平成14~18年)
表1-17 風俗営業の営業所数の推移(平成14~18年)

〔2〕 性風俗関連特殊営業の状況
 上記の改正風営適正化法の施行に伴い、近年増加傾向にあった無店舗型性風俗特殊営業の派遣型ファッションヘルス等の届出数が大幅に減少した。
 
 表1-18 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成14~18年)
表1-18 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成14~18年)

〔3〕 深夜酒類提供飲食店営業の状況
 深夜酒類提供飲食店の営業所数は、14年以降緩やかな減少傾向にある。
 
 表1-19 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移
表1-19 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状

 平成18年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は20.0%(182人)で、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがわれる。
 最近では、いわゆるピンクビラのほか、ウェブサイト、週刊誌等を広報媒体として利用する事犯が目立つほか、女性に債務を負わせて売春を強要したり、派遣型ファッションヘルスを仮装したりするなどの悪質な事犯もみられる。
 
 表1-20 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-20 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成14~18年)

事 例
 山口組傘下組織構成員(39)ら7人は、18年3月ころ、売春の周旋をする目的で、女性を装って携帯電話の出会い系サイトの掲示板に売春の相手を求める書き込みをするなどして売春客を誘引し、女性に対し不特定の遊客を相手方として売春をさせ、その対償の一部を取得するなどした。同年8月までに、売春防止法違反(周旋、契約)、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(犯罪収益等収受)等で逮捕した(大阪)。

 18年中の風営適正化法による検挙状況をみると、前年に比べ、客引き事犯に対する検挙が特に増加しており、特に、社交飲食店(注)の従業員による客引き事犯の検挙が多数を占めた。
 わいせつ事犯では、公然わいせつ、わいせつ物頒布等共に増加しており、近年では、コンピュータ・ネットワークを利用してわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯が多くみられる。

注:キャバレー等の風営適正化法第2条第1項第2号の営業の許可を受けている店舗

 
 表1-21 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-21 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成14~18年)
 
 表1-22 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)
表1-22 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成14~18年)

(3)国際的な人身取引事犯に対する警察の取組み

 近年、人身取引の防止が国際的な課題となっており、警察では、入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、仲介業者の取締りを強化し、被害者の早期保護、国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。
 平成18年中の人身取引事犯の検挙人員の内訳は、経営者等が54人、仲介業者が24人であった。また、被害者の国籍は、フィリピン(30人)、インドネシア(14人)、中国(台湾)(10人)が多く、これらが全体の93.1%を占めた。被害者の保護時の在留資格は、「不法入国」(20人)、「興行」(18人)が多数を占めた。
 
 表1-23 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成14~18年)
表1-23 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成14~18年)

事 例
 飲食店経営のタイ人女性(39)は、17年9月及び11月、営利の目的でインドネシア人女性(19)ら2人を買い受け、服従させるために黒魔術により呪殺するなどと告知して畏怖させた上、同飲食店において飲食客の接待に従事させるとともに、不特定の遊客を売春の相手方として紹介するなどして売春を強要した。18年4月までに、経営者を出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反(不法就労助長)、売春防止法違反(管理売春)、人身売買罪及び強要罪で、同店従業員のタイ人女性(29)を入管法違反(不法就労助長)及び人身売買罪で、経営者らにインドネシア人女性を売り渡したインドネシア人女性(29)を入管法違反(不法残留)、人身売買罪及び強要罪で逮捕した。なお、警察は、この売春を強要されるなどした女性2人からの求めにより、婦人相談所等で一時保護し、国際機関の支援により本国へ帰国させた(栃木)。

(4)銃砲の適正管理と危険物対策

〔1〕 猟銃等の管理と改造エアガン等の取締り
 狩猟、有害鳥獣駆除等のため、猟銃・空気銃を所持しようとする者は、銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)の規定により、都道府県公安委員会の許可を受けなければならないこととされている。警察では、所持許可の審査と行政処分を的確に行い、不適格者の排除に努めている。
 また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。
 さらに、威力を高めた改造エアガンや所持することのできない刀剣類がインターネット等を利用して取引されていることから、警察では、このようなエアガン等の取締りを強化している。
 なお、「準空気銃(注)」の所持を原則禁止する、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律が、平成18年8月に施行された。
・許可を受けている猟銃・空気銃の数(18年末現在)・・33万9,109丁
・許可を受けている者の数(18年末現在)・・・・・・・17万5,374人
・不許可等とした申請数(18年中)・・・・・・・・・・・・・13件
・許可の取消件数(18年中)・・・・・・・・・・・・・・・・80件

注:圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃であって空気銃に該当しないもののうち、人を傷害し得るもの

 
 図1-55 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律の概要
図1-55 銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律の概要

事 例
 ボクシングジム経営者(30)は、18年5月、法定の除外事由がないにもかかわらず、「サムライソード」と称する刀24振を、販売する目的で所持していた。同年6月、銃刀法違反(不法所持)で逮捕するとともに、同年11月、この経営者に刀を卸していた輸入業者(59)ら2人を銃刀法違反(不法所持)で逮捕した。また、本件において、同経営者及び輸入業者ら2人が所持していた刀計55振を押収した(京都)。

〔2〕 火薬類、放射性物質等の安全対策
 火薬類や放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法や放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等の規定により、都道府県公安委員会に届け出ることとされている。警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に事前指導や指示等を行っている。
 また、火薬類取扱場所への立入検査等により、火薬類の盗難、不正流出等の防止に努めている。
 <運搬届出の受理件数(18年中)>      <立入検査の件数(18年中)>
 ・火薬類関係・・・4万8,014件       ・火薬類関係・・・2万2,512件
 ・放射性同位元素等関係・・・1,122件
 ・核燃料物質等関係・・・640件

事 例
 高圧ガス販売会社の経営者(39)ら3人は、18年6月、知事に届け出ることなく販売所の敷地内に高圧ガス充てん済み容器57本を貯蔵し、販売主任者を選定せずに業務を行っていた。同月、高圧ガス保安法違反(販売主任者選任義務違反等)で検挙した(警視庁)。

 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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