第1章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 構造的な不正事案

(1)政治・行政をめぐる不正事案

 地方公共団体の長や議員による贈収賄事件、競売入札妨害事件、買収等の公職選挙法違反の摘発が続いており、政治・行政をめぐる不正が顕在化している。平成18年中は、いわゆる「官製談合」を始めとする入札をめぐる不正が社会の注目を集めた。
 <18年中の談合・競売入札妨害>
  ・ 検挙事件数(注)・・・42件(前年比25件(147.1%)増)
  ・ 検挙人員 ・・・275人(前年比174人(172.3%)増)
     うち逮捕146人(前年比118人(421.4%)増)

注:同一の被疑者で同種の余罪がある場合でも、一つの事件として計上した統計

 
 図1-22 政治・行政をめぐる不正事案の検挙事件数の推移(平成9~18年)
図1-22 政治・行政をめぐる不正事案の検挙事件数の推移(平成9~18年)

事 例
 宮崎県知事(65)は、17年及び18年に同県が発注した委託業務の指名競争入札に際し、建築設計業等を営む特定の会社に有利な価格で落札させようと企て、17年6月ころから18年7月ころにかけて、同県出納長や幹部職員らに対し、同社が落札予定業者として適当である旨申し向けるなどした。同県出納長らはこの特定業者に知事の意向を伝え、同業者は指名業者間の談合において知事の意向を示し、有利な価格で落札した。18年12月までに知事、県出納長、同社役員ら36人を談合罪で検挙し、19年1月までに知事を事前収賄罪等で再逮捕した(宮崎)。
 
宮崎県の談合事案

(2)経済をめぐる不正事案

 平成18年中の金融・不良債権関連事犯の検挙事件数は127件で、前年より11件(9.5%)増加した。
 また、その他の経済をめぐる不正事案では、次のような社会的反響の大きい事件を検挙した。
 
 図1-23 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成9~18年)
図1-23 金融・不良債権関連事犯の検挙事件数の推移(平成9~18年)

事 例
 駐車場の管理等を行う財団法人の理事長(72)は、15年4月ころから17年2月ころにかけて、大阪市開発公社との業務委託契約に基づいて預かり保管中の市営駐車場の売上金を前後67回にわたり合計約1億3,000万円横領した。18年5月、業務上横領罪で逮捕した(大阪)。
 
 大阪市開発公社横領事案
大阪市開発公社横領事案

(3)財務捜査体制の整備

 企業等の経済活動に関連して行われる犯罪の捜査では、背景、動機、実行行為等を明らかにするため、帳簿類等の客観的な資料に基づいて、財務の実態を解明することが不可欠である。このため、警察大学校財務捜査研修センターでは、全国の捜査員を対象に、簿記その他の財務捜査に必要な知識や効果的な財務捜査の手法等についての教育を行うとともに、最新の企業会計制度に即した財務捜査手法等の調査研究を行っている。
 また、都道府県警察では、公認会計士等の資格を有する者や民間企業での会計事務の経験者等を財務捜査官として採用するなど、体制強化に努めている。
 
 財務捜査研修センターでの研修風景
財務捜査研修センターでの研修風景

 第1節 最近の犯罪情勢とその対策

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