第6章 公安委員会制度と警察活動の支え 

11 留置場の管理運営

(1)留置場の管理運営
 平成18年4月1日現在、全国に留置場は1,271場設置されている。警察では、捜査業務と留置業務の分離を徹底しつつ、被留置者の人権に配慮した処遇及び施設の改善を推進しており、次のとおり、国際的にも評価される適正な留置業務の運営を徹底している。
○ 人権に配意した適正な処遇
  被留置者の健康を保持するため、月2回、健康診断を実施しているほか、外部の情報を入手できるようにするため、ラジオや日刊新聞紙を備え付けている。
○ 女性被留置者の適正な処遇
  女性の特性に配慮するため、処遇全般を女性警察官が担当する女性専用留置場を設置している。
○ 外国人被留置者の適正な処遇
  使用する言語の違いに配慮するため、母国語の音声と文字によって留置場内の処遇等を案内する機器を整備している。
○ 留置場施設の改善・整備
  被留置者のプライバシーを保護するため、留置場を横一列の「くし型」に配置し、前面に遮へい板を設置するなどの措置を講じているほか、留置場内を快適にするため、便所の周囲を壁で囲うなど構造を改善したり、冷暖房装置を設置したりしている。
 
 留置場内部
写真 留置場内部

 
 女性専用留置場(被留置者は模擬)
写真 女性専用留置場(被留置者は模擬)

 また、警察庁は、被留置者の処遇を全国的に斉一にするため、毎年すべての都道府県警察の留置場に対する計画的な巡回視察を実施している。

(2)被留置者の収容状況
 平成17年中の被留置者の年間延べ人員は約547万人(1日平均約1万5,000人)で、過去10年間で2倍に増加した。同期間中、外国人被留置者の年間延べ人員は2.5倍に増加しており、特に増加率が著しい。被留置者の増加の原因としては、犯罪情勢の悪化に伴い逮捕人員が増加したこと、犯罪の広域化、複雑・多様化や来日外国人犯罪の増加等により捜査が長期化し、留置期間も長期化したこと、拘置所等刑事施設で収容人員が増加したことにより、これらへの移送が停滞していることなどが考えられる。
 
 表6-3 被留置者延べ人員の推移(平成8~17年)
表6-3 被留置者延べ人員の推移(平成8~17年)
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 留置場の収容率(収容基準人員に対する被留置者の割合)は、18年5月20日現在、全国平均で73.2%に達している。特に大都市及びその周辺部を管轄する警察の状況は厳しく、大阪府警察が105.2%、愛知県警察が103.2%、千葉県警察が99.9%、栃木県警察が95.9%、滋賀県警察が95.5%と著しく高率である。少年と成人、女性と男性を一緒に留置できないなどの制約があることから、収容率が約7割から8割に達した時点で実質的に収容力は限界に達しているのが通例であり、留置場の収容力不足は深刻である。
 また、移送待機率(注)は、18年5月20日現在、全国平均で20.4%と高率になっている。中でも、山梨県警察で61.0%となっているなど、7の県警察で30%を越えており、留置場の高収容率の一因となっていることがうかがえる。

注:被留置者数に占める拘置所等への移送を待っている者の割合。起訴されるなど捜査がおおむね終了した場合は、拘置所等刑事施設へ移送されるのが一般的である。


(3)留置場の収容力確保のための施策
 留置場の過剰収容は、被留置者の処遇環境を悪化させるおそれがあるほか、円滑な捜査活動等を妨げるものである。このため、警察では、警察署の新築・増改築時に十分な規模の留置場を整備するとともに、被留置者を収容する専用施設の建設を推進し、収容力の確保を図っている。また、拘置所等刑事施設に対し、早期の移送を要請している。

コラム1 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律

 約100年前の明治41年に制定された旧監獄法は、被収容者の権利義務に関する規定が不明確であり、人権保障の観点等から不十分な内容であったことから、被収容者の権利義務を明らかにし、その人権を尊重しつつ適切な処遇を行うための法整備の必要性が指摘されてきた。これまで、何度かそのための法律案が国会に提出されたが、いわゆる代用監獄問題を中心に反対が強く、いずれも成立には至らなかった。しかし、ようやく平成17年5月に至り、まず受刑者の処遇について定める刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(注)が成立し、その権利義務関係を明確にする法整備がなされた。これに続き、未決拘禁者の処遇を始め、残された旧監獄法の規定を改正するための同法の一部を改正する法律が、18年6月、第164回国会において成立した。この法整備により、旧監獄法の改正は完結することとなり、警察の留置場については、これまで法律に規定のなかった被逮捕者を含め、被留置者のうち大部分を占める未決拘禁者の処遇について、必要な規定が整備された。

注:今回の一部改正により、法律の題名は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律と改められた。

 11 留置場の管理運営

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