第5章 公安の維持と災害対策

10 警備実施

(1)警衛・警護警備等
〔1〕 情勢に応じた的確な警衛警備
 天皇皇后両陛下は、平成17年中、第56回全国植樹祭(6月、茨城県)、第60回国民体育大会秋季大会(10月、岡山県)、第25回全国豊かな海づくり大会(11月、神奈川県)、阪神・淡路大震災10周年のつどい及び国際連合防災世界会議開会式(1月、兵庫県)への御臨席等のため行幸啓になった。
 皇太子殿下は、同年中、2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会開会式(2月、長野)への御臨席等のため行啓になった。
 海外へは、天皇皇后両陛下が友好親善のため、ノルウェー(5月、アイルランドお立ち寄りを含む。)及び米国自治領北マリアナ諸島サイパン島(6月)を御訪問になったほか、皇太子殿下を始め、皇族方が合計11回御訪問になった。
 また、同年11月には東京都内のホテルにおいて清子内親王殿下と黒田慶樹氏との結婚式及び披露宴が執り行われ、天皇皇后両陛下、皇太子同妃両殿下を始め、皇族方が御参列及び御臨席になった。
 これに対し、極左暴力集団等は、行事・式典に反対する集会やデモ、ビラの配布を行った。このような情勢の中で、警察は、皇室と国民との間の親和に配意した警衛警備を実施し、御身辺の安全確保と歓送迎者の雑踏事故防止を図った。
 
 清子内親王殿下御結婚に伴う警衛・警護警備
写真 清子内親王殿下御結婚に伴う警衛・警護警備

〔2〕 ブッシュ米国大統領来日に伴う警護警備
 ブッシュ米国大統領は、夫人を伴い、17年11月15日に来日し、京都迎賓館における日米首脳会談等の日程を滞りなく終え、同月16日に離日した。
 京都府警察では、最大時約5,800人体制で警護警備を実施したほか、警察庁では、警護警備対策室を設置し、一行の安全と関連行事の円滑な進行を確保した。
 
 京都を視察する小泉首相とブッシュ大統領
写真 京都を視察する小泉首相とブッシュ大統領

〔3〕 プーチン・ロシア大統領来日に伴う警護警備
 プーチン・ロシア大統領は、17年11月20日に来日し、東京都内における日ロ首脳会談等の日程を滞りなく終え、同月22日に離日した。
 警視庁では、最大時約7,500人体制で警護警備を実施したほか、警察庁では、警護警備対策室を設置し、一行の安全と関連行事の円滑な進行を確保した。

〔4〕 第44回衆議院議員総選挙に伴う警護警備
 第44回衆議院議員総選挙は、17年8月30日公示、9月11日投開票の日程で施行され、各政党の多数の要人が全国で遊説活動を行った。
 特に、小泉自由民主党総裁は選挙運動期間中、18都道府県で応援演説を行い、会場には連日多数の聴衆が集まった。
 関係都道府県警察では、右翼によるテロ等の違法事案が懸念される厳しい警護情勢の下、雑踏事故防止にも配意した的確な警護警備諸対策を推進し、要人の身辺の安全を確保した。
 
 第44回衆議院議員総選挙に伴う警護警備(読売新聞)
写真 第44回衆議院議員総選挙に伴う警護警備(読売新聞)

〔5〕 首相警護
 小泉首相は、17年中、東南アジア諸国連合(ASEAN)主催緊急首脳会議出席に伴うインドネシア訪問(同年1月)、グレンイーグルズ・サミット出席に伴う英国訪問(7月)、国際連合総会出席に伴う米国訪問(9月)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席に伴う韓国訪問(11月)、東アジア首脳会議等出席に伴うマレーシア訪問(12月)等を行った。警察では、関係国の警護当局との緊密な連携の下、的確な警護を実施し、身辺の安全を確保した。

〔6〕 2005年日本国際博覧会の開催に伴う警備諸対策
 2005年日本国際博覧会は、17年3月25日から9月25日にかけて、愛知県において、121か国(日本を含む。)・4国際機関が参加して開催された。
 開催期間中は、天皇皇后両陛下が御視察されたほか、皇太子同妃両殿下を始め、皇族方が御来場されるとともに、多くの国内外要人が訪れた中、2,200万人を超える観客が来場した。
 警察では、厳しい国際テロ情勢の下、会場を管轄する愛知県警察を始め、全都道府県警察が一体となって、(財)2005年日本国際博覧会協会を始めとする関係機関等と緊密に連携し、水際対策、会場上空対策、NBCテロ対策等の警備諸対策を推進するとともに、情勢に応じた的確な警衛・警護警備を実施した。
 
 2005年日本国際博覧会の開催に伴う警戒警備
写真 2005年日本国際博覧会の開催に伴う警戒警備

(2)機動隊の活動
〔1〕 機動隊の種類と機能
 都道府県警察には、集団警備力によって有事即応体制を保持する常設部隊として機動隊が設置されているほか、管区機動隊、第二機動隊等が設置されている。
 
 機動隊の訓練状況
写真 機動隊の訓練状況
写真 機動隊の訓練状況

 また、機動隊には、専門部隊として、爆発物処理班、銃器対策部隊、水難救助部隊、機動救助部隊等の機能別部隊が編成されている。また、一部の都道府県警察には、ハイジャックや人質立てこもり事件等に対処するための特殊部隊(SAT)や、NBCテロ対応専門部隊等が設置されている。
 さらに、大規模災害発生時の初動措置に当たる広域緊急援助隊や国際緊急援助隊が、全国警察の機動隊員、管区機動隊員等で編成されている。
 
 NBCテロ対応専門部隊の訓練状況
写真 NBCテロ対応専門部隊の訓練状況

 
 機動救助部隊の訓練状況
写真 機動救助部隊の訓練状況

〔2〕 機動隊の任務と活動
 機動隊は、危機管理のための集団警備力の中核として、集団不法事案に対する治安警備、主要な警衛・警護警備、台風、地震等の災害警備、祭礼、催し物等の雑踏警備に当たっているほか、集団警備力としての特性を生かしつつ、繁華街や歓楽街等における集団警ら、暴力団対策、暴走族の一斉取締り等、様々な活動を行っている。
 また、各種機能別部隊の専門能力を生かした捜査活動や、人命救助活動等の市民生活に密着した警察活動に従事している。
 
 繁華街における集団警ら
写真 繁華街における集団警ら

(3)雑踏警備
 警察では、祭礼等の行事に際して多数の人が集まることにより事故が発生するおそれがある場合には、雑踏事故の未然防止を図るため、あらかじめ、行事の主催者や施設の管理者等に対して、自主警備体制の強化、自主警備計画の作成、安全確保のために必要な施設の改善等を要請しているほか、警察部隊の投入が必要と判断される場合には、雑踏警備計画を作成し、混雑が予想される場所等への警察官の配置、交通規制、広報活動等を行っている。
 また、平成13年7月に兵庫県明石市で発生した多数の死傷者を伴う雑踏事故の教訓を踏まえ、警察では、雑踏事故対策に当たり遵守すべき基本的な事項の再徹底を図るとともに、警察本部に雑踏警備実施指導官、警察署に雑踏警備実施主任者を置き、雑踏事故防止のための体制の確立に努めている。
 
 花火大会における雑踏警備
写真 花火大会における雑踏警備

 
 表5-5 雑踏警備実施状況の推移(平成13~17年)
表5-5 雑踏警備実施状況の推移(平成13~17年)
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