第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

6 良好な生活環境の保持

(1)風俗営業等の状況
〔1〕 風俗営業の状況
 警察では、風営適正化法に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を加えるとともに、風俗営業者の自主的な健全化のための活動を支援し、業務の適正化を図っている。
 近年、人身取引の防止が国際的な課題となっており、また、繁華街・歓楽街を中心に、違法な性風俗関連特殊営業がまん延し、風俗営業等における客引き行為が後を絶たない状況にあるほか、住宅街におけるいわゆるピンクビラの配布等が大きな問題となっている。そこで、人身取引の防止と違法営業の抑止を図ることを目的とした風営適正化法の改正が行われ、平成18年5月1日から施行されている。
 
 表2-18 風俗営業の営業所数の推移(平成13~17年)
表2-18 風俗営業の営業所数の推移(平成13~17年)
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〔2〕 性風俗関連特殊営業の状況
 17年末現在、性風俗関連特殊営業の届出数は42,583と、前年より4,692増加している。
 最近は、無店舗型性風俗特殊営業が増加傾向にある。特に派遣型ファッションヘルス等が大幅に増加しており、最近5年間で3.1倍となった。
 
 表2-19 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成13~17年)
表2-19 性風俗関連特殊営業の届出数の推移(平成13~17年)
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〔3〕 深夜酒類提供飲食店営業の状況
 17年末現在、深夜酒類提供飲食店の営業所数は26万6,435軒と、前年より3,017軒減少した。
 
 表2-20 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成13~17年)
表2-20 深夜酒類提供飲食店の営業所数の推移(平成13~17年)
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(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
 平成17年中の売春事犯の検挙件数は2,214件、検挙人員は1,026人と、それぞれ前年より203件(10.1%)、14人(1.4%)増加した。
 同年中の売春事犯の総検挙人員に占める暴力団構成員及び準構成員の割合は26.6%(273人)で、依然として売春事犯が暴力団の資金源になっていることがうかがえる。
 最近では、いわゆるピンクビラのほか、ウェブサイト、週刊誌等を広報媒体として利用する事犯が目立つほか、女性に債務を負わせて売春を強要したり、派遣型ファッションヘルスを仮装したりするなどの悪質な事犯もみられる。
 
 表2-21 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成13~17年)
表2-21 売春防止法違反の検挙状況の推移(平成13~17年)
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事例
 山口組傘下組織構成員(37)ら3人は、17年8月、中国人女性に対して売春を行う場所を提供した。同年10月売春防止法違反(場所提供業)で逮捕した。また、山口組傘下組織組長(54)は、15年1月から17年9月にかけて、売春から得た犯罪収益等であることを知りながら、この構成員から上納金としてこれを受領した。同年12月、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(犯罪収益等収受)で逮捕した(福岡)。

 17年中の風営適正化法違反の検挙件数は2,523件、検挙人員は3,765人と、それぞれ前年より348件(16%)、645人(20.7%)増加した。
 同年中の風営適正化法による検挙状況をみると、禁止区域等営業による検挙が依然として多いが、このうち、「韓国エステ」、「中国エステ」等の名称を付けてエステティックサロンやマッサージ店を仮装した店舗型ファッションヘルス等営業(風営適正化法第2条第6項第2号)の検挙が多数を占めた。
 
 表2-22 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成13~17年)
表2-22 風営適正化法違反の検挙状況の推移(平成13~17年)
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 17年中のわいせつ事犯の検挙件数は2,412件、検挙人員は2,316人と、それぞれ241件(11.1%)、275人(13.5%)増加した。また、同年中のコンピュータ・ネットワークを利用したわいせつ事犯の検挙件数は136件、検挙人員は107人と、それぞれ15件(4.3%)、11人(11.5%)増加した。
 
 表2-23 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
表2-23 わいせつ事犯の検挙状況の推移(平成13~17年)
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(3)国際的な人身取引事犯に対する警察の取組み
 近年、世界的に、売春等の性的サービスをさせ、その収益を搾取することなどを目的として、女性や児童をだましたり脅したりして他国に移送する人身取引事犯が組織的に行われ、国際犯罪組織の資金源となっている。日本でも、仲介業者の手引きによって入国した外国人女性が、渡航費用等の名目で数百万円の不当な債務を負わされたり、旅券を取り上げられたりした上で性風俗店等で働かされ、売春等の性的サービスを強要される事犯が発生している。
 警察では、入国管理局等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、仲介業者の取締りを強化し、被害者の早期保護、国内外の人身取引の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っている。
 平成17年中の国際的な人身取引事犯の検挙件数は81件、検挙人員は83人であり、被疑者の内訳は、経営者が57人、仲介業者が26人であった。また、被害者117人の国籍は、インドネシア(44人)、フィリピン(40人)、タイ(21人)が多く、これらが全体の89.7%を占めた。被害者の入国時の在留資格は、「興行」(67人)、「短期滞在」(12人)が多数を占めた。さらに、風俗営業等が人身取引の温床になることを防止するため、風営適正化法が改正され、接客従業者の国籍や在留資格を確認する義務が経営者に課されたほか、人身売買の罪等により刑に処せられた者は、5年間、風俗営業の許可を受けることができなくなった(18年5月1日施行)。
 
 図2-36 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成13~17年)
図2-36 人身取引事犯の検挙状況と被害者数の推移(平成13~17年)
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事例
 インドネシア人の男(40)ら2人は、インドネシア国内の仲介業者と共謀して、17年8月、インドネシア人女性2人に「日本で働けば稼げる」と言って偽造旅券で日本に入国させ、日本にいる台湾人の飲食店経営者(43)に売り渡した。この女性2人は、同経営者に500万円の借金があるとして売春を強要されていた。同年10月、このインドネシア人の男ら2人及び台湾人の飲食店経営者を同年6月に刑法に新設された人身売買罪で逮捕した。なお、警察は、この女性2人からの求めにより、婦人相談所等で一時保護するとともに、国際機関の支援により本国に帰国させた(長野)。

(4)銃砲の適正管理と危険物対策
〔1〕 猟銃等の管理と改造エアガンの取締り
 平成17年末現在、銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)に基づき、都道府県公安委員会の所持許可を受けている猟銃及び空気銃の数は35万1,098丁で、18万1,312人が許可を受けている。警察では、所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めており、同年中、申請を不許可等とした件数は15件、所持許可を取り消した件数は53件であった。
 また、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。
 さらに、人畜殺傷能力を持たせるまでに威力を高めた改造エアガンやエアガンを改造するための部品がインターネット等を利用して取引されていることから、警察では、このようなエアガン等の取締りを強化している。
 
 押収された改造エアガン
写真 押収された改造エアガン

 なお、圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃であって空気銃に該当しないもののうち、人を傷害し得るものを「準空気銃」と位置付け、法令に基づき職務のため所持する場合等を除き、その所持を禁止する、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律が18年5月、第164回国会において成立した。

事例1
 エアガン販売業者(36)ら4人は、17年9月、人畜殺傷能力を持たせるまでに威力を高めたエアガンやエアガンを改造するための部品をインターネットを利用して販売していた。同年11月までに、銃刀法違反(不法所持)及び武器等製造法違反(製造、販売)で検挙した。また、インターネットを利用して改造エアガンを購入した客についても、銃刀法違反(不法所持)で検挙するとともに、購入した改造エアガンを押収した(警視庁等)。

〔2〕 火薬類、放射性物質等の安全対策
 火薬類や放射性物質等の危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法や放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等の規定により、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。17年中の運搬届出の受理件数は、火薬類関係が4万9,702件、放射性同位元素等関係が1,195件、核燃料物質等関係が803件であった。警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行っている。
 また、火薬類取扱場所に対する立入検査を17年中に2万7,078回実施するなど、火薬類の盗難、不正流出等の防止に努めている。

事例2
 17年8月、火薬類を用いて作業を行う採石場に立入検査を実施したところ、採石業者(62)は、法定の資格のない者に発破作業を行わせていた。同年11月、この採石業者及びその従業員3人を火薬類取締法違反(消費の技術上の基準)等で検挙した(山口)。

 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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