愛情を求める非行少年たち
京都府宇治警察署生活安全課
前川隆弘 警部補
少年非行が深刻化していることは間違いありません。ただ、少年だけが変わったとは思えません。むしろ、社会の変化が少年を変化させたように感じます。
傷害容疑で逮捕した中学生は、取調べで母親の話に触れた途端、声を上げて泣きました。公園で花火をしていたところを保護した家出の小学生は、「お母さんが怖いから帰りたくない」と言いました。その言葉は、私には愛情の裏返しに聞こえました。いつの時代も子どもが求めるものは親の愛情であり、非行は愛情を求める子どもの悲鳴であると思います。
先日、煙草を吸っている少年に注意したら反抗してきました。しかし、厳しく言い聞かせると素直に謝り、帰り際に「おっちゃん!怒らんといてな~」と言い、バイバイと手を振りながら笑顔で帰っていきました。馬鹿にされているのかもしれないと思いつつ、彼は叱られて何かを感じたはずだと信じます。信じる、許す、愛することが少年に対する大人の務めと心掛け、時には騙されてやり、笑われてやればいい。子どもが大人の寛容な心に気付いたとき、非行の芽が枯れ、健全な芽が生え、奇麗な花を咲かせて実を付けるのだと信じています。
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