第7章 公安委員会制度と警察活動の支え 

13 シンクタンクの活動

(1) 警察政策研究センターの活動
 警察大学校に置かれている警察政策研究センターは、警察の課題に関する調査研究を進めるとともに、警察と国内外の研究者等との交流の窓口として活動している。

 [1] フォーラムの開催
 財団法人や大学等と連携して、治安対策に関する各種のフォーラムを開催している。

 
表7-7 フォーラム等の開催状況

表7-7 フォーラム等の開催状況
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事例1 日仏治安回復フォーラムの開催
 平成16年3月、フランス内務省国内治安高等研究所長、パリ警視庁近隣都市警察局地域警察部長を招き、治安回復のための施策の在り方を議題としたフォーラムを開催した。我が国の研究者や民間ボランティア団体の代表、警察庁職員も参加し、日仏両国の取組みを紹介するとともに、活発に意見交換を行った。

 
日仏治安回復フォーラム
日仏治安回復フォーラム

 [2] 外部研究者との交流の促進
 職員が日本刑法学会等各種学会やシンポジウムに参加するなど、学会や研究者との交流を進めている。慶應義塾大学大学院法学研究科との間では、15年度から2か年度にわたり、各国のテロ対策法制について共同研究を実施している。また、同大学院及び財団法人公共政策調査会と共同で、シンポジウムを開催している。

 
慶應義塾大学大学院と共催したシンポジウム
慶應義塾大学大学院と共催したシンポジウム

 [3] 大学・大学院における講義の実施
 警察政策に関する研究の発展及び普及のため、多くの大学・大学院に職員を講師として派遣するとともに、特別講義を行っている。

 
表7-8 講義を担当した大学・大学院

表7-8 講義を担当した大学・大学院
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職員による大学での講義
職員による大学での講義

 
国際会議で発表する職員
国際会議で発表する職員

 [4] 警察に関する国際的な学術会議等への参加
 日本警察に関する情報発信を行うことなどを目的として、警察に関する国際的な学術会議等に積極的に参加している。

事例2 セキュリティ業及び治安に関する国際会議の開催
 16年9月、台湾で開催された第1回セキュリティ業及び治安に関する国際会議に職員が参加し、日本の治安に関する講演を行うとともに、台湾の警察研究者、実務家と意見交換を行った。

事例3 日英警察セミナーの開催
 16年7月、 英国ポーツマス大学犯罪学研究所及び日本アングロ協会が主催した日英警察セミナーに職員が参加し、日本の犯罪情勢及び警察の取組みに関する講演を行った。

 
(2) 警察情報通信研究センターの活動
 警察大学校に置かれている警察情報通信研究センターでは、情報通信システムに関する技術、暗号技術等、警察活動にかかわる情報通信技術について研究しており、その成果は情報通信システムの整備等に活用されている。

研究例1 警察電話網のIP化に関する研究
 近年、高速な回線が安価に利用できるため、一般加入電話に代わり、IP(Internet Protocol)電話が普及し始めていることから、警察電話網をIP電話により再構築する場合の、通信品質や安全性の確保方策、災害時における停電対策等について研究を行った。

研究例2 デジタル記録方式の防犯カメラ画像に関する研究
 デジタル記録方式の防犯カメラで撮影された画像を犯罪捜査に有効に活用するため、不鮮明に記録されている画像をコンピュータで処理し、鮮明な画像にするための方法について研究を行った。

 
(3) 科学警察研究所の活動
 科学警察研究所では、事件・事故の原因や証拠を科学的に解明するための研究を行っているほか、各種社会問題の背景を分析し、その結果に基づいて政策提言をするなどの活動を行っている。実施した研究については、事前及び事後の事業評価を実施し、事業評価結果報告書をウェブサイトで公表している。

 
表7-9 平成16年中に事業評価を実施した研究課題

表7-9 平成16年中に事業評価を実施した研究課題
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研究例1 散布されたガソリンによる火災発生の危険性に関する研究
 ガソリン等の危険物を使用した放火事件や人質立てこもり事件が発生していることから、床面に散布されたガソリンを燃焼させる実験を行うなど、火災発生時の危険性を定量的に解析するための研究を行っている。

研究例2 違法薬物・危険物質の非開披探知装置の研究開発
 周波数が1テラヘルツから3テラヘルツの電磁波(テラヘルツ波)は、紙、プラスチック等を透過し、違法薬物や爆薬等の危険物質を検知する性質をもつ。この性質を利用して郵便の内容物を探知する技術を、独立行政法人理化学研究所等と共同で研究開発している。

研究例3 印刷物の偽造手法の分類に関する研究
 同一の被疑者によって偽造された日本銀行券等の印刷物には、素材や印刷の方法に共通点がみられる。これらを分析し、偽造手法を正確に分類することで、効果的な捜査が行えるようにするための研究を行っている。

研究例4 環境負荷軽減のための交通管理システムに関する研究
 近年、自動車交通により生じる環境負荷を軽減するための新しい交通管理技術の開発が求められている。そこで、路上に設置された車両感知器により得られるデータを活用して自動車の排出ガス量を推計するシステムを開発した。これにより、大気汚染が深刻な路線や時間帯を特定して効果的な対策を講じられるようになった。

研究例5 地理情報システム(GIS)を用いた侵入窃盗多発地区の分析
 東京23区の区域で、住宅に侵入して行われる窃盗事件が多発する地区が、平成8年から12年にかけてどのように変化したかを、地理情報システム(GIS)を用いて分析した。これにより、犯罪の類型ごとに、発生の多い場所や時間が明らかとなった。

 
GISを用いた進入窃盗多発地区の分析
GISを用いた進入窃盗多発地区の分析

研究例6 分析機器を用いたMCT118型検査法の開発
 MCT118部位と呼ばれる、特に日本人について個人を識別する能力が高いDNA型を、フラグメントアナライザーという機器で検査する手法を確立した。新しい検査法は、検査時間が従来の半分であるほか、現在行われているSTR型検査という検査法と同一の分析機器を用いることができるという利点がある。

 
フラグメントアナライザー
フラグメントアナライザー

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