第7章 公安委員会制度と警察活動の支え 

6 教育訓練と職務執行

(1) 教育訓練
 警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力、実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

 [1] 警察学校における教育訓練
 都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。
 ・ 採用時教育…新たに採用された警察職員に対し、職責を自覚させ、使命感を培うとともに、基礎的な知識及び技能を修得させるもの
 ・ 昇任時教育…上位の階級又は職に昇任した警察職員に対し、それぞれの階級又は職に必要な知識及び技能を修得させるもの
 ・ 専門的教育…特定の業務分野に関する高度な専門的知識及び技能を修得させるもの

コラム2 採用時教育制度の見直し
 警察庁では、新規に採用した警察官を早期に現場の戦力とすることができるよう、採用時の教育制度を見直した。平成17年4月からは、事件捜査の作成要領に関する授業を充実させるとともに、早い時期から警察署での単独勤務を経験させるなど、より実戦的な実習を行うこととした。

 [2] 警察署等の職場における教育訓練
 警察署等の職場では、個々の警察職員の能力や職務に応じた個人指導のほか、研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、部外講師による講習会等を行っている。

 [3] 術科訓練の充実強化
 凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、けん銃等の術科訓練の充実強化を図っている。

 
制圧逮捕訓練
制圧逮捕訓練

コラム3 映像射撃訓練装置
 この装置は、特殊な素材で作られた画面に映し出される映像に向けて、実弾を発射する射撃訓練を行うことにより、けん銃を使用する際の判断能力の向上を図るものである。画面には、不審者に職務質問をする場面や、110番通報を受けて強盗事件の現場へ臨場する場面等、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した映像が映し出され、その中で犯人が逃走したり、凶器を持って反撃したりする。このように刻々と変化する状況に応じて、実弾射撃訓練を行うことにより、従来から行われている、固定した標的に対する射撃訓練と比べて、けん銃の取り出しから相手に向けて撃つまでの判断能力をより向上させることができる。17年4月現在、この装置は全国に57台配備されている。

 
映像射撃訓練装置
映像射撃訓練装置

 
(2) 警察官の殉職・受傷
 警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。
 平成16年8月には、大阪府天満警察署地域課の警察官が、交通違反をした車両に停車を求め、職務質問をしようとしたところ、突然後退してきた車両にひかれ、殉職した。警察では、被疑者を検挙するための果敢な職務執行をたたえて警察庁長官名による表彰を行うとともに、遺族に賞じゅつ金を支給した。また、大阪府警察は、現場から逃走した車両を運転していた元暴力団員を、同月、殺人罪、公務執行妨害罪、覚せい剤取締法違反等で逮捕した。
 また、同年10月には、京都府久美浜警察署地域課の警察官が、台風23号による大雨で陥没した道路にカラーコーンを設置し、通行する車両の安全を確保しようとしていたところ、道路沿いの増水した川へ転落し、殉職した。警察では、住民が被害に遭うことを防止するために行った果敢な職務執行をたたえて警察庁長官名による表彰を行うとともに、遺族に賞じゅつ金を支給した。
 このように、殉職・受傷した警察官又はその家族に対しては、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置がとられている。

 6 教育訓練と職務執行

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