第6章 公安の維持と災害対策 

9 極左暴力集団の動向と対策

(1) 極左暴力集団の動向
 [1] 革マル派の動向
 革マル派(注1)は、平成16年中、過労死等の労働問題に焦点を当て、教育機関、郵政公社、地方公共団体等における労働運動の強化を訴え、主要な労働組合の定期大会等に活動家を動員してビラ配布等を行った。また、東日本旅客鉄道労働組合(JR東労組)で14年から続いている、元顧問を支持する勢力とこれに反発する勢力との対立には、過去に同組合の動向に敏感な反応を示してきたにもかかわらず、一切反応を示さなかった。さらに、自衛隊のイラク派遣の日程に合わせて、集会やデモを行ったほか、沖縄県宜野湾市での米軍ヘリ墜落事故の発生に敏感に反応して、発生直後から関係施設への抗議行動を行うなど、反戦運動や反基地運動等の大衆運動に積極的に取り組んだ。
 警視庁は、平成3月、東京都江東区にある同派の「深川アジト」を摘発した。このアジトは、労働部門を担当する指導部の非公然アジトであったとみられている。


注1:正式名称を日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派という。

 [2] 中核派の動向
 中核派(注2)は、16年中、15年末に再建した「マルクス主義青年労働者同盟」の拡大を最重要課題に掲げ、5月の沖縄闘争、8月の広島反戦・反核闘争で、初めて「青年労働者交流集会」と称する全国規模の集会を現地で開催するなど、青年労働者の取り込みを図った。
 また、「11.7全国労働者総決起集会」では、15年に続いて国際連帯を強く訴え、米国等の労働組合関係者を招請するなど、過去最高の約2,350人を集めた。さらに、大衆運動については、同派が主導する「百万人署名運動」を中心とした反戦運動を重点に取り組むとともに、超党派団体や労働組合、大衆団体主催の大規模集会へ参加するなど、大衆運動への介入を強めた。

 
中核派系団体主催のデモ行進(平成16年11月、東京)
中核派系団体主催のデモ行進(平成16年11月、東京)


 2:正式名称を革命的共産主義者同盟全国委員会という。

 [3] 革労協の動向
 革労協(注3)は、11年に主流派と反主流派に分裂してから、両派が互いの組織の解体、一掃を主張して激しい対立が続いている。17年6月までに、内ゲバ事件が13件発生し、8人(主流派5人、反主流派3人)が殺害されたほか、16年6月に発生した内ゲバ容疑事件では2人が殺害された。


 3:正式名称を革命的労働者協会という。

事例1
 16年6月、東京都で革労協反主流派の活動家3人が数人の男に襲撃され、2人が殺害される内ゲバ容疑事件が発生した。17年6月現在、捜査中である。
 13年5月に、千葉県で主流派の幹部が殺害された内ゲバ事件以来、同派の内ゲバ事件は認知されておらず、本件に関して主流派による犯行声明はなされていないが、反主流派は、機関紙で、主流派を「可及的速やかに、日本階級闘争から消去する」などと報復をほのめかす宣言を行っている。

事例2
 16年2月、東京都新宿区の防衛庁庁舎に向けて、同年11月、埼玉県と東京都にまたがる陸上自衛隊朝霞駐屯地に向けて、それぞれ金属弾が発射されたが、革労協反主流派は、これらのゲリラ事件の犯行を認める声明を出した。17年6月現在、捜査中である。

 
陸上自衛隊朝霞駐屯地に向けた飛翔弾発射事件の発射装置(平成16年11月、埼玉)
陸上自衛隊朝霞駐屯地に向けた飛翔弾発射事件の発射装置(平成16年11月、埼玉)

 [4] 成田闘争
 16年4月に民営化された成田国際空港株式会社は、株式上場を予定している19年までに平行滑走路の完成にめどを付けたいとして、同滑走路の誘導路が「へ」の字型に屈曲している原因である「天神峰現闘本部」の建物収去等を求めて千葉地方裁判所に提訴するなど、その完成に向けた諸施策を積極的に進めた。
 これに対して、三里塚芝山連合空港反対同盟北原グループやこれを支援する極左暴力集団は、「農地強奪攻撃を絶対に許さない」などと訴え、現地で大規模な集会やデモを行うとともに、16年12月に活動を再開した千葉県収用委員会の動きに対して反発を強めた。

 
(2) 諸対策の推進
 警察では、極左暴力集団のかかわる事件の捜査を徹底するとともに、アジト摘発のため、アパート、マンション等に対する諸対策を積極的に推進した。その結果、平成16年中、非公然活動家10人を含む52人の極左活動家を検挙し、革マル派の非公然アジト1か所を摘発した。

 9 極左暴力集団の動向と対策

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